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2014年01月06日

ベトナム戦争期のAR-15


※2015年1月7日追記
『Gen1~Gen3期のM16ライフル』にこの生地の補足・訂正をのせました。



1955年に原型のアーマライトAR-10が登場して以来、AR-15の血統は60年近く経った現在でも世界最先端のライフルとして広く認められているという事実は、もはや説明する必要も無いでしょう。
しかしAR-15って銃は人気があるだけに、かえって不正確な情報が溢れていて、どれが真実か見極めるのは難しいかもしれません。
中でも僕が残念に感じているのが、1963年11月にアメリカ陸軍の新型小銃試験モデルとして誕生した"XM16E1"です。

ベトナム戦争期のAR-15

▲アメリカ陸軍教育フィルム TF 9-3663 (1966年作成)

このXM16E1は、改良型のM16A1に更新されるまでアメリカ軍とその同盟国ベトナム派遣部隊の主力小銃としてベトナム戦争において大量に使用され、ベトナム戦争といえばこのモデルを思い浮かべる方も多いと思います。
しかし実際には、XM16E1については『M16の初期型』という表現で語られる程度で、その実態についてはミリタリー好きの中でもあまり知られていない気がしてます。
今まで数々のトイガンメーカーが"M16ベトナム"と名付けたモデルを発売してきましたが、XM16E1を再現している製品は一つもありません。

唯一、Classic Army製の"M15A1 VIETNAM"だけはXM16E1とほぼ同じ形状(でもスリングスイベルだけは固定タイプ)ですが、その名の通り、なんと"アーマライトM15A1"のロゴがデカデカと刻印されています…。なんで…??

ベトナム戦争期のAR-15
M15A1なんて現在の新法人の方のアーマライト社が90年代に出したシビリアンモデルですよ。(カタログ落ちして久しいので、本当にM15A1がこの形だったかは未確認)
せめて刻印無しだったら買うのに、意味不明な小細工のせいで台無し…。残念でなりません。
刻印を入れ直す気合いのある方はどうぞ…

G&P製の"M16VN"はちゃんと実銃で存在するモデル(ただしスリングスイベルはやっぱり固定タイプ)ですし、刻印も正確ですが、これはアメリカ空軍制式型の"M16"なので、空軍以外での使用例はかなり稀です。
アメリカ空軍が好きな方には最適です(90年代まで使ってますw)が、残念ながら陸軍・海兵隊はこのM16を採用していません。

ベトナム戦争期のAR-15
▲実銃のM16 ※詳細は『Gen1~Gen3期のM16ライフル』参照

これはアメリカ四軍共通のテクニカルマニュアルにおいて、M16専用のフォアードアシスト無しアッパーレシーバー(FSN1005-017-9550)の供給・メンテナンスコードが空軍にしか存在しないことから確かです。
陸軍での使用例も極わずかにありますが、あくまでフォアードアシストノブを持つXM16E1と比較するため試験的に購入された物と思われます。

ベトナム戦争期のAR-15
▲TM 9-1005-249-14 (アメリカ陸軍省1966年8月1日制定) 81頁(9-11)


"ベトナムタイプ"と称される場合よく見るのが、ロアレシーバーがマガジンキャッチ周りのガード付きタイプ(※)で、フラッシュサプレッサーが三又タイプ(FSN 1005-056-2248)というパターン。※ロアレシーバーはシリアルナンバーの入る銃本体という扱いなので、スペア用のFSN品番はありません。
いかにも"M16A1の初期タイプ"というイメージで、海外サイトでも同様の銃が平然とXM16E1として紹介されている場合があります。
しかしこの銃は、アメリカ軍制式モデルではありません。

ベトナム戦争期のAR-15
▲海外サイトで"XM16E1と紹介されている銃"

【2015年6月19日訂正】
【2015年11月13日訂正】
まず、XM16E1にガード付きロアレシーバーが使われた可能性というのは100%ありえません。
ロアレシーバーは単なる構成部品ではなくシリアルナンバーが入る銃本体という扱いであり、本体がM16A1用のガード付きロアレシーバーである以上、XM16E1にはなり得ません。

実例が存在しました。こちらの記事に訂正内容を記しました。訂正、そして深まる謎』

先に挙げた1966年8月1日制定の"TM 9-1005-249-14"にも、このガード付きロアレシーバー等、M16A1から登場する部品の記載はありません。
しかし半年後の1967年2月には、各種新規部品が使われたM16A1が制式化され、生産ラインはこちらに移行します。
いわゆる"過渡期"ってやつなんでしょうが、それを言ってしまうとボルトキャリアーから内部のピンに至るまで無数の組み合わせが存在する事になります。
軍用銃の部品は内部のピン一本に至るまで契約、仕様書で規格管理されるものであり、メーカーから軍に納入された時点でXM16E1と
M16A1という別の銃の部品が入り交ざっている可能性は限りなく低いと考えています。
納入された後、武器科部隊によって修理されるうちに新旧の部品が入り混じってしまう可能性は否定できません(実際空軍ではそういう事例が数多く確認できる)が、僕はそんなあいまいな状態のものを制式モデルと呼ぶ気はありません。
では逆に、M16A1に三又サプレッサーが搭載された可能性はどうか?
僕はこれも薄い(あっても極少数)先に述べたように軍に納入される銃のパーツは厳密に規格管理されており、また生産ラインも切り替わっているため、無いと考えます。
またM16A1には、1967年の時点で閉鎖型(バードゲージタイプ)のフラッシュサプレッサーが搭載されていた事を示唆する資料もあります。

ベトナム戦争期のAR-15
▲USARV Pam 750-30(USARV 1967年11月6日制定) 21頁
M16A1には閉鎖型(FSN 1005-933-8089)が搭載されている事が明記されています。

なお、このコミック調の冊子は、なかなか銃のメンテナンスを行わない現場の意識を変えるべく急遽作成された物として有名ですが、広く知られているのはDA(陸軍省)が作成した1969年改定版(赤い印刷)の方ですね。
上記の緑色の印刷のはUSARV(在ベトナムアメリカ陸軍)が1967年に作成したオリジナル版で、内容もいくつか変わっています。
これらは正式な軍のマニュアルではなく、兵士に手渡されるパンフレットです。本来のマニュアルには、最初からメンテナンスの重要性が記載されています。
にも関わらずそれらが徹底されなかったという事は、よく言われる末端兵士のAR-15への誤解・過信以上に、彼らを指導する現場の管理職(将校・下士官)の怠慢が原因だと思いますよ。

ベトナム戦争期のAR-15
〔左〕USARV Pam 750-30(在ベトナムアメリカ陸軍1967年11月6日制定)
〔右〕DA Pam 750-30(アメリカ陸軍省1968年6月28日制定, 1969年7月1日改訂版)


XM16E1、M16A1という銃は合わせて数百万丁生産されているので、メーカーが生産ラインに在庫パーツ混ぜて処分したり、オードナンス(武器科部隊)が修理した際に新旧の部品を混ぜてしまった可能性は無数にあります。
しかしそれらは、有ったとしてもあくまで偶発的・イレギュラーな状態であり、軍が規定した本来の仕様で無い事は確かです。
それを"初期型"だの"過渡期"だのもっともらしい言葉で誤魔化すから、いつになってもちゃんとしたXM16E1が発売されないんですよ。プンプン!
以上、買ってもいないトイガンに文句垂れただけの、しょーもない小話でした。

逆に、CAR-15シリーズおよびコマンドSMG(XM177等)といった生産数が少ないモデルは、その時々の制式ライフルの部品が流用されるため、同じモデルナンバーでも生産された年代によって部品が異っていいんです。
つまり最初期のCAR-15はM16(Mod 602)がベースだったためそのレシーバーが使われ、その後XM16E1が加わり、最終的にM16(Mod 604)/M16A1がベースへと移り変わっていきます。
言わばずっと過渡期。その為、「このモデルはこの部品!」と断言する事はむしろ不可能です。(やるとしたらコルトが保管しているであろう生産記録の中からシリアルナンバーで追跡するしかない)
という訳で、バリエーション多すぎるんで、ここでの説明は省きます。


ちなみにM16A1には、資料で確認できる明確な仕様の変化があります。
それは、バットストックです。M16A1のバットストックと言うと、メンテナンスキットが入るドア付きのタイプ(FSN 1005-01-135-4973)が一般的ですが、実は最初からこのストックだった訳ではありません。
僕が確認している、ドア付きストックが載っている一番古いマニュアルは1977年の物なんです。
実際にはもっと早く切り替わっていたと思いますが、少なくとも1969年以前の資料には、このドア付きストックは記載されていません。
つまり、M16A1は1967年に採用されてから最低2年以上、XM16E1と同じゴム底ストックが搭載されていたのです。

ベトナム戦争期のAR-15ベトナム戦争期のAR-15
〔左〕TM 9-1005-249-12 (アメリカ陸軍省1968年8月2日制定) 30頁
〔右〕DA Pam 750-30(アメリカ陸軍省1968年6月28日制定, 1969年7月1日改訂版) 21頁
どちらもM16A1のメンテナスを解説していますが、ドア付きストックおよびストック収納用アクセサリーケース(FSN 1005-00-403-5804)の記述は無く、従来のゴム底ストック(FSN 1005-017-9549)のまま載っています。

ベトナム戦争期のAR-15
▲ゴム底ストック仕様のM16A1。60年代末ではこれが正式な仕様のM16A1だったと考えられます。

なので、僕がナム戦ごっこで使っている電動ガンは、このタイプのM16A1を再現しました。

ベトナム戦争期のAR-15
と言ってもマルイM16A1VNバージョンをベースに、UENS☆DAY製アルミレシーバーとKM製フラッシュハイダーを組んだだけです。(ちょっと汚しすぎたかも・・・)
ストックはマルイのままなのでスリングスイベルはやっぱり固定式。いつか可動式に改造したいです。
また、具体的にいつストックが切り替わったのかは未確認なので、今後の課題としたいです。

最後に、Colt AR-15の各ミリタリーモデルにはMod 601から始まるモデルナンバーが振ってあることは知っての通りですが、実はこのモデルナンバーはけっこう厄介なのです。
上記のM16A1やCAR-15/コマンドのように、同一モデルナンバーでありながら明らかに仕様の異なる銃は多数あります。
僕が特に気になるのが、今回のテーマXM16E1のモデルナンバー。
国内外のサイトの多くで、XM16E1はMod 603であると書かれています。しかし、その根拠は何でしょう?
「皆がそう言っているから」「英語でそう書いてあったから」では根拠になりません。外人のマニアだってピンキリだし。


でもなんで、あんなに大量に生産されたXM16E1のモデルナンバーがいまだにあやふやなのかと言うと、実は米軍にとって、メーカー側のモデルナンバーなんて全くどうでもいい事だったからです。
AR-15に関する米軍のマニュアルを20冊以上確認しましたが、モデルナンバーが記載された資料はただの1冊もありません。
軍にとって重要なのはメンテナンス用のパーツ管理品番(FSNなど)であり、コルトの商品カタログになどこれっぽっちも興味が無いのです。このマニア泣かせの合理性、さすがアメリカさん。
だから最近は、「実は米軍採用モデルを研究する上で、コルトのモデルナンバーの事を考える意味はあまり無いんじゃね?どうせ同じ番号でも仕様違うんだし」と開き直っています(笑)


マニュアルと言えば、僕が持ってない中で一番欲しいのが、アメリカ空軍のテクニカルマニュアル"TO 11W3-5-5-1"。

ベトナム戦争期のAR-15
表紙の画像だけ拾いました(笑)

恐らくこれが、空軍が1962年に"Colt AR-15 Mod 601"を採用した際に作成したアメリカ軍で最初のAR-15用マニュアルです。
米軍のマニュアルは過去のものに追記する形で更新されるので、これが現在のM16A4/M4用の"TM 9-1005-319-10"(2010年6月30日制定。僕が知る限りこれが最新版)まで続くテクニカルマニュアルの原点と言えるでしょう。
アメリカ人よ、頼む!スキャンして内容を俺に見せてくれ!!



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Posted by 森泉大河 at 23:36│Comments(6)銃器【アメリカ】1954-1975
この記事へのコメント
こんにちは
 いつも素晴らしい内容で参考になります。
 これからも更新、楽しみにしています。
Posted by Q州の一匹狼Q州の一匹狼 at 2014年01月07日 01:54
>Q州の一匹狼さん
コメントありがとうございます!
こちらこそ、SOG GEARのブログで毎回勉強させて頂いてます。
特にXM177E2やアクセサリー類の記事は、ナム&AR好きとして鼻血ものでした!
今後ともよろしくお願いします^ ^
Posted by タイガタイガ at 2014年01月07日 16:59
どうも〜今晩はマザーです、いゃあ実に深いですね、同じヴェトナム好きとしては興味深い記事でした。

これからも記事の方楽しみにしております、それではまた…
Posted by Animal MotherAnimal Mother at 2014年01月07日 21:25
タイガ様

こんにちは、いつもブログ拝見しております。
今度自分のブログでM16A1の改造記を書こうかと思っておりますが、宜しければ今回のエントリーを引用させて頂いて宜しいでしょうか?
不躾なお願いで恐縮ですが、宜しくお願い致します。

http://slaphead.blog.fc2.com/
Posted by 物欲 at 2014年05月06日 18:44
>物欲さん
もちろん大歓迎です!こんな記事でも何かのお役に立てれば光栄です。
ただし、内容のいくつかに僕の勘違いがあったので、その箇所は現在訂正してあります。
また、これも確かな資料がまだ入手出来ていないので記事には載せていないのですが、M16A1のストックがドア付きに切り替わったのは1971年と、アメリカのマニアの間では言われているようです。
それでは、改造記楽しみにしています!
Posted by タイガタイガ at 2014年05月07日 03:20
タイガ様

許可を頂き、本当にありがとうございます!
恥ずかしくない内容になるよう、頑張ります!
Posted by 物欲 at 2014年05月08日 16:42
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