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2015年10月17日

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車


1960年代、ベトナム共和国陸軍の輸送隊では数種類の装甲列車・装甲軌道車が使用されていました。中でも特に目を引くのがこの車輌。

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車
写真: 1967年サイゴン (manh hai氏のflickr Toa xe lửa bọc thép - Railroad Armored Carsより)

しかしこの車輌、当時使われている写真はよく目にするものの、その型式や詳細については長いこと把握できていませんでした。
たぶんフランス製だろうと踏んでフランス軍の装甲列車を調べたんですが、いっこうにヒットしません。
「もしかしてベトナム製?」とか思い始めた矢先、昨日ようやく正体をつかむことができました。


イギリスのトロリー車両メーカーDenis Wickham&Co.が制作した軍用装甲軌道車"Armoured Wickham Trolley (AWT)"だそうです。
ウィッカム装甲軌道車と装甲列車

なんだイギリス製だったのか~!てゆーか、まさか2014年現在、ヤンゴンで現役で走ってるとは!
なお、他の国ではとうに博物館の展示品になってます。

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車 
タイ国有鉄道本社(タイ警察仕様)
バンコク(フワランポーン)駅のすぐ近くにあったのか・・・。知ってたら見に行ったのに。惜しいことしたなぁ


ウィッカム装甲軌道車と装甲列車
マレーシア警察博物館

マレーシアでは1948年よりウィッカム装甲軌道車を使用していたそうです。
なので年代的には第一次インドシナ戦争でフランス軍に使用された可能性はありますが、いまだにそういう情報は未見です。

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車 
▲僕が確認している中で、ウィッカムがベトナムで使われている一番古い写真は1964年のフエです。

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車
▲そして5年後の1969年には、こんな錆だらけの状態でサイゴンの操車場に置かれています。

なお、ウィッカムは1両から3両編成くらいで鉄道網の警備を行う軌道パトロール車両であり、輸送列車の編成に組み込まれたいわゆる装甲列車とは別のカテゴリーの車両のようです。
ベトナム共和国軍で使われたウィッカム以外の装甲列車はこちら

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車
装甲有蓋車 型式不明 (1967年サイゴン CriticalPast動画より)

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車
装甲有蓋車 型式不明 (1969年サイゴン)


フランス外人部隊 装甲列車隊『ラ・ラファール』

また時代を遡って第一次インドシナ戦争期を見ると、装甲列車はフランス外人部隊 第2外人歩兵連隊によって運用されていました。
外人部隊の装甲列車隊『ラ・ラファール(la Rafale)』は1948年11月に組織され、以下の車両を保有しインドシナ半島鉄道網の警備任務を担っていました

〔車両〕
装甲機関車 2
装甲輸送車 6
装甲戦闘車 8
指揮車 1
野戦診療車 1
調理食堂車 1
枕木運搬車 2 ※列車先頭に連結され、線路が破壊された場合に修理しながら進む

〔武装〕
二連装リーベル機関銃 8
ボフォース40mm砲塔 1
赤外線暗視20mm高射砲 1
81mm迫撃砲 2
60mm迫撃砲 2
敵弾発射機


ウィッカム装甲軌道車と装甲列車

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車 

ウィッカム装甲軌道車と装甲列車

La"Rafale" en indochine 投稿者 denisjacques

これらの車両はジュネーブ協定後、他のフランス製兵器と同様にベトナム共和国軍に引き継がれたはずなのですが、実際に使われていたという情報はまだ確認できていません。



余談ですが、冒頭で挙げたベトナム共和国時代の写真蒐集家であるmanh hai氏のコレクションはマジ最強で、flickrにアップされた当時の写真は55,000枚以上。
しかもその多くが世に出回っていない記録写真で、なおかつ高画質というものすごい情報量のものばかり。
この人のお陰で、あの時代に対する理解はかなり進みました。ベトナム戦争に関心を持つ全ての人に、氏のアルバムを是非見て頂きたいです。




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この記事へのコメント
初めまして。いつも興味深く拝見させていただいています。
この車両を海外のサイトで初めて知り、詳しい日本語のサイトがないものかと半年ほど探しておりました。当方は非常に鉄道好きのため、非常に喜んでおります。
軍事とは離れますが、フエの写真の奥に写っている茶色の気動車がいかにもヨーロッパという雰囲気ですね。
これからも応援しております。
Posted by m.M at 2016年08月18日 22:17
m.Mさん

初めまして。コメント頂きありがとうございます。喜んでいただけて光栄です!
ベトナムに限らず鉄道と軍事は昔から密接な関係にあるそうですが、マニアの趣向的にはそれぞれ別々の分野になっているせいか、海外の軍用列車に関する情報って日本ではなかなか見ないですよね。私自身、鉄道に関する知識はまるで無かったので、ヤンゴンの記事を書かれたブログ筆者さんに感謝です。
私も、軍事以外の部分でも、東南アジアの欧州チックな街並みや鉄道のある風景にとても惹かれます。それらはかつて大国の植民地であった名残であり、支配された人々にとっては暗い過去である一方で、植民地時代に整備されたインフラが有ったおかげで独立後の人々の生活が支えられているという皮肉が見え隠れしていて、興味が付きません。
Posted by タイガタイガ at 2016年08月20日 01:08
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