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2017年02月26日

続・タイガーストライプの始まり

※2017年3月1日更新
※2018年5月15日更新
※2022年10月29日更新

過去記事『タイガーストライプの始まり』の補足・訂正です。

 まず、ベトナム海兵隊迷彩『Da Cọp(虎皮)』、通称タイガーストライプの原型となったのは、フランス軍の空挺部隊用迷彩(通称リザード迷彩)と言われてきましたが、それを裏付ける分かりやすい写真がM-51Parkaに関する2,3の事柄様のこちらの記事『サイゴン1955 あるいはタイガーストライプの始まり?』で紹介されています。
 一口にリザード迷彩と言っても様々なパターンがありまして、中でもタイガーストライプの原型となったのは、第一次インドシナ戦争末期に登場した、マニア間呼称で言うところのC1パターンと考えられています。フランスはフランス連合各国の空挺部隊に、このC1リザードパターン迷彩で作られたTAP47/52降下服TTA47系戦闘服を供与しており、それらの迷彩服はインドシナ諸国がフランス連合から独立した後も、1960年代まで各国の空挺部隊に使用されていきます。
※TAPとかTTAとかややこしいですが、TAPはTroupes AéroPortées(空挺部隊)、TTAはTreillis Toutes Armes(全兵科)を意味しており、同じ"Modèle 47"でも服の形が全然違います。

続・タイガーストライプの始まり
▲"C1パターン"TTA47/52型チュニックおよびTTA47/53型パンツ
画像引用: Vonstuck Camouflage

また、この時代のリザード系迷彩はパターンだけでなく色のバラつきも大きく、同じC1パターンであっても、全体が緑っぽく、茶色の部分がかなり黒っぽい、まるで別物のような柄があったようです。これらはあくまでフランス製のリザード迷彩なのですが、ぱっと見タイガーにしか見えません。

続・タイガーストライプの始まり
C1パターン亜種のTTA47/50または53型パンツ。
資料提供: デスボランティア様

 ベトナム海兵隊の新型迷彩は、当時ベトナム陸軍空挺部隊が使用していたフランス軍C1パターンをベースに、こういった亜種の影響も受けながら開発されたのではないかと推察されます。その為、現在タイガーストライプと呼ばれている迷彩の最初のモデル(通称VMX)は、ベースとなったC1と同じく、フランス軍TTA47系戦闘服の裁断で作られました。

続・タイガーストライプの始まり
VMXパターンTTA47戦闘服

続・タイガーストライプの始まり
▲フランス軍C1パターンとベトナム海兵隊VMSパターンの比較

 僕は今まで知らなかったのですが、タイガーストライプ研究のバイブルTIGER PATTERNSによると、1957年8月には既に最初のVMXパターンTTA47戦闘服が完成していたとしており、実際に1957年製造を示すベトナム国防省のスタンプの写真が掲載されています。なので『タイガーストライプの始まり』と言った場合、それは1957年まで遡れたんですね。やっぱり値段高い本は、高いなりに良い情報が載ってるんだなぁ。
 しかし1957年に開発とは言え、その時点ではタイガーストライプはまだ試作段階の迷彩であり、その服が海兵隊に制式採用され、大量発注・生産・納入されて実際に現場での着用が始まるまでには、やはり年月がかかりました。僕が他の研究者の方に意見を求めたところでも、実際にタイガーストライプの着用が確認できる最も古い時期の写真は概ね1960年頃のようです。

続・タイガーストライプの始まり
▲VMXパターンTTA47戦闘服を着用したベトナム海兵隊員
※これらの服の袖についているパッチは1950年代後半の海兵隊のもので、1960年に制定された新型(現在は初期型と呼ばれている)海兵隊章より前のタイプです。しかしパッチが1960年に制定されたとしても、実際に行き渡るのはもっと後なので、写真からでは50年代末~60年代初頭としか言えない感じです。その為、タイガーが50年代に支給されていたと断定できる写真はまだ発見されていないようです。

※その後の調査の結果、ザーコップ(タイガーストライプ)は1957年に導入されたとわかりました。

 このように最初に部隊への支給が始まったタイガーストライプはTTA47型からでしたが、1960年代以降TTA47に代わってベトナム共和国軍の標準的な戦闘服となる貼り付け2ポケット裁断(通称ARVN型/M59)のタイプも、1958年製造スタンプが確認されているとデスボランティア様より情報を頂きました。なんと!貼り付け2ポケット裁断はこんな早い時期に存在していたんですね!(つまりM59という呼び方は無意味になりますね)

続・タイガーストライプの始まり
▲1958年製が確認されたベトナム海兵隊『貼り付け2ポケット型』
1960年代以降、この貼り付け2ポケット型は海兵隊のみならずベトナム共和国軍全体の標準作戦服となり、一般部隊向けのオリーブグリーン単色が陸海空軍で広く用いられます。さらにその後、エポレットを追加し各種迷彩生地で作られた迷彩服型や、主にオリーブグリーン単色で肩当を省略した簡略型もしくは肩当なしエポレット追加型が終戦まで全軍で広く用いられました。

※それまでフランス軍式の野戦服を使っていたベトナム軍が、アメリカ軍のユーティリティユニフォームに似たデザイン(特にパンツ)を採用した背景には、当時ゴ・ディン・ジエム政権がアメリカからの支援に依存を強めていった事と同時に、国内での生産が間に合わなかったため、これら迷彩服の生産の大部分を同じ親米国家の日本や韓国に委託していた事が影響していたのではないか、という考察をデスボランティア様からご指摘いただきました。

 しかし、当初タイガーストライプ迷彩服の生産は先に登場したTTA47型が優先されていたようで、手持ちの写真を見た限りでは、現場に支給されるタイガーがTTA47から2ポケットに切り替わるのは1961~62年頃のようです。

続・タイガーストライプの始まり
VMXもしくは1stパターンの2ポケット戦闘服を着用したベトナム海兵隊員[1962年]

 以上が、ベトナム共和国海兵隊がタイガーストライプを着用するまでの流れになります。それ以降は米軍がCIDGに支給するために海兵隊迷彩のコピー品をアジア各国で生産させたことで種類が多くなり過ぎて、ちょっと僕には付いていけません(汗)


おまけ

海兵隊つながりで、ちょっとレアな写真

続・タイガーストライプの始まり 
▲『初期型』と呼ばれる海兵隊胸章が使われてる写真。
僕はこの胸章をこの写真でしか見た事ありません。なので本当に初期型なのか怪しいと思ってます。もしかしたら一般的な丸い胸章と同時期に存在したバリエーションなのかも。
※このパッチは1966年~1967年の短い期間使用された物でした。『ベトナム海兵隊のインシグニアについて その1』参照
ちなみにこの女性は髪型からして軍の婦人隊員ではなく、おそらく兵士の彼女が彼氏の軍服を着て写真館で撮ったものだと思います。

続・タイガーストライプの始まり 
▲ジエム政権末期の1963年頃だけ使われていた海兵隊の帽章(ベレー章)
1963年11月1日のクーデターでジエム政権が崩壊すると、この1963年式帽章はすぐに廃止されて、改定前のタイプに戻ります。

続・タイガーストライプの始まり
▲海兵隊胸章を訳の分からない場所に付けてる人の図
たぶん、こうした理由は「カッコいいと思った」からなんだろうな・・・




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この記事へのコメント
タイガさん

お元気でしょうか?

私も此の事ついては前から気になっていました
特に3番目のベレー兵士のジャケット襟の形が仏軍からの影響でしょうか角度がカッコイイと思います。

昔の話ですが、古着屋でバイトしていた時海外の取引コンテナの中にこれと同じようなものが
複数ありました。当時は資料も無く『何で!タイガージャケットがないとやー』と思っておりました。それから時間がたちわかると後悔ばかりでした。(笑)

1980年代学生のころは市内Gパンショップには払下げ品の中には確かにタイガーもありました。今となっては此方も後悔ばかりです。(笑)

さて、此方のタイガー?リザードのレプリカが画像2番目のパンツがリアルマッコイリザードに似てますね!値段はいい値段ですが。(;^_^A
http://www.realmccoys.co.jp/blog/shop/2016/06/lizard-camouflage.html


PRUベレー章のデザインが野戦警察にも使われている件は大変参考になりました。
自分の中の考えもかわりました!

有難う御座いました。<(_ _)>

また長くなりました。何時も勉強になります。


御活躍をご期待申し上げます。

ではまた!
Posted by 寅と緑葉 at 2017年03月03日 16:57
寅と緑葉さん

昔は本当に実物タイガーがゴロゴロ転がってたそうですね。長くコレクターをやってる人からは、そういう古着屋の話をよく聞きますが、僕がこの趣味を始めたころにはとっくに枯渇して高級品になっていました。
どうも古着屋から生じた文化で、ジーンズと同じノリでビンテージ衣類としてタイガーを欲しがっている層もいるそうで、そっちのマニアの方が気前よくお金を出す人が多いので、輸入古着屋に入ったとしても高い値段付けるようになっちゃいましたね。もう僕には高嶺の花です。
まさにリアルマッコイは、そういうビンテージファッションを求める人の為のメーカーさんですね。リアルマッコイがなぜこんな色のリザードを作ったのか理解しかねますが、もしかしたら本当にこんな(染料ミスった)色のリザードが実在したのかも知れませんね。

ところでPRUマークの件ですが、あの後、地方軍や野戦警察以外の組織でも使われている例を見つけてしまいました。毎年兵科毎に作られていた軍公式テト年賀状の1970年版です。
https://bienxua.files.wordpress.com/2016/12/thiep-chuc-tet-xuan-canh-tuat-1970-cua-binh-chung-luc-luong-dac-biet.jpg
黄色い文字ではっきり"Binh Chủng: LLĐB"(特殊部隊科)と書いてあります。
僕が思うに、これはPRUの任務は通常の地方軍歩兵とは異なる、ゲリラ掃討を目的とした特殊作戦であった事から人員は陸軍の特殊部隊科に属しており、そのためPRUマークと共に特殊部隊科と書かれているのではないかと思っています。
つまり、PRUは地方軍の一部門であるのと同時に、陸軍LLĐBの地方分遣隊という側面も持っていたのかも知れません。

いつもコメントありがとうございます。読んで下さる方がいらっしゃると僕も励みになります!
Posted by タイガタイガ at 2017年03月05日 15:38
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