2016年10月15日
NKT雷虎について
NKTおじさんの戦友で元雷虎隊員のダニエルおじさんから聞いた話をご紹介します。

ダニエル・フォーこと、フォー・コック・ユン氏。米国で開催されたNKTベテランの集会にて。
ベトナム戦争時代、ユン氏はベトナム共和国軍の特殊作戦機関"NKT(技術局)"内のコマンド部隊"雷虎(Lôi Hổ)"に所属していました。

ユン氏が1960年代末に所属していたNKT連絡部"雷虎" CCNの偵察チーム(RT)ダコタ。1968年9月18日
上段右から2番目がユン氏。バンダナを巻いた2名の白人がチームを指揮するアメリカ軍SOG-35 CCNの隊員。
NKTと雷虎の歴史についてはこちらも参照
タイガ:
雷虎の隊員はLLĐBからNKTに編入されたのですか?また他の部隊から移ってきた人も居ましたか?
フォー・コック・ユン:雷虎がSOGの指揮下にあった1966年から1970年頃にかけては、LLĐB出身もいるし、空挺師団出身も確か居たよ。その後、1970年末にLLĐBが解散すると、プロジェクト・デルタのチームがNKTに編入されたんだ。(筆者注: その為NKT内に連絡部に加えて作戦部"黒龍"が編成されNKTは規模を拡大した)また雷虎の中でもSCU(Special Commando Unit)として知られる、ヌン族、モンタニヤード、クメール族、ベトナム人で構成されたSOG指揮下の民族別チームも、1970年から1971年にかけてベトナミゼーションの一環として雷虎に再統合されたよ。ただし全てのSCUが移った訳ではなく、一部は故郷に帰って陸軍一般部隊に加わったようだ。共にSOGチームとして戦ってきた勇敢な男たち(SCU)が加わったことで、雷虎チームはより精強になったよ。しかしSOGから特殊作戦の全権を引き継いだNKTは、これまで以上に危険な任務に挑む事になったんだ。
この写真を見てくれ。左の男は雷虎に編入されたSCU隊員で、ユニフォームに雷虎の部隊章とAIRBORNEタブを着けている。多分彼はCCCかCCS所属のジャライ族とかのモンタニヤードか、クメール族だ。第3軍団のQuảng LợiかLộc Ninhでの写真だったと思う。
タイガ:
SOGは日本のミリタリーファンの間でも有名ですが、残念ながら実際にチームを構成していた雷虎やSCU、そしてNKTの存在についてはまだまだ知られていません。
ちなみに、あなたの写真(上のRTダコタの写真)を私のブログに載せていいですか?
フォー・コック・ユン:
私のチームの写真は、すでに誰かに右側の文字の部分を切り取られてインターネットで転載されているようだね。フェイスブックでこの写真をプロフィール画像にしているベトナム人の若者を見るよ。ハハハでも私は気にしていないよ。些細な事さ。しかし、(インターネットで)この写真がSEALとして紹介されているのを見付けた時は困ったよ。似たようなものに見えるかもしれないけど、違うんだよ。SEALは顔を緑に塗るし、ライフジャケットと1・2日間の作戦用のデイパックしか身に付けない。SOGは顔を黒に塗り、ロープを携帯し、5日間の作戦用にバックパックを背負うんだよ。
私たちを指導したMACV-SOG(SOG-35)の隊員たちは軍服の左胸ポケットに雷虎の部隊章を付けていたよ。奥のNKT連絡部所属者はSOGとの調整役だった。
その後、1970年から1973年にかけてベトナミゼーションが進行し、SOGがベトナムから撤退する過程で、雷虎CCNは第1強襲戦闘団(Chiến Đoàn 1 Xung Kích)へと改編された。CCC、CCSも同様に第2、第3強襲戦闘団として再編されたよ。同時に、SOG-35もSMAG (Special Mission Advisory Group)へと改称され、引き続きNKT連絡部と共に作戦の指揮を執っていたよ。
タイガ:
"雷虎"は、連絡部本部勤務者も含むのですか?それとも前線のコマンド部隊のみを指すのですか?
フォー・コック・ユン:
雷虎の公式な組織名が連絡部(Sở Liên Lạc)だよ。しかし敬意をこめて、いまだに雷虎の名で呼ばれているのさ。ちなみにこれはNKT訓練センターのSOGアドバイザーチームが写っている写真だよ。
タイガ:
この服のレプリカ持ってますわ。
フォー・コック・ユン:私はこれと似た服を着ていたけど、袖と脚にコンパスやタバコを入れる小さいポケットが付いていたよ。CISOや沖縄メイドと呼ばれるやつさ。
タイガ:
これですか?
フォー・コック・ユン:そう!まさにその服を着ていた。また、作戦時は時々、スプレーで迷彩を描く代わりに、この服を黒く染めたものを着ていたよ。
▲作戦中のユン氏(右)
▲同じくユン氏。1970年以前、クアンチ省DMZ/ニッケル・スチールOA付近にて黒染めのCISOファティーグを着て、顔をまっ黒に塗っている。
日本・沖縄のCISOから送られてくるMACV-SOG向けの装備は、まず最初にダナンのCCNに届くんだよ。だからCCNは他のC&C部隊の装備を真似する必要はなかった。我々CCNはC&C兄弟のお兄さんだったんだ。へへへ
これはダナン市ノンヌックにあったCCN FOB4の偵察チームの写真だけど、この中共式AKマガジンポーチをよく見てくれ。一つのポケットにマガジンが2本入るよう厚くなっていて、スナップボタンで留めれるようになっているんだよ。あと、チームリーダーだけは新品のXM177を持ってるけど、あとのメンバーはみんな収縮式バットストックをM16の固定式に変えてある。これらの装備は全部日本・沖縄のCISOから送られてきた物さ。
当時、一部の人はCCNの"North"を"North Vietnam"の事だと思い、我々が北ベトナム領内に駐屯していると勘違いしたんだ。実際は南ベトナムの北部、DMZの南側およびラオス中部国境の辺りだよ。"ニッケル・スチール・オペレーション・エリア (Nickel steel OA)"ってやつさ。なので我々CCNのチームは1971年に開始されたラオス侵攻作戦"ラムソン719"に先駆けて、1970年12月から1971年1月までラオス領内に先行して潜入していたよ。CCCはベトナム、ラオス、カンボジア三角国境あたりだね。
これは君の写真だね?
タイガ:
はい、そうです。本物の雷虎隊員に見られるのは恥ずかしいですが。へへ
フォー・コック・ユン:私があの部隊を愛しているように、君もあの部隊を愛してるという事さ。恥ずかしがる事はないよ。
私が知っている範囲で君に言える事は以上だよ。はっきりとした答えを探すには時間と手間がかかるよ。その人が経験した活動や条件によって見解は異なるからね。ハハ何が言いたいかというと、私は一介の兵士に過ぎないという事さ。私はただ訓練された事をやっていただけだよ。ただ一つ言えるのは、私たちの活動は、君たちの活動(リエナクト)よりもずっと陰惨だったという事さ。
タイガ:
ありがとうございます。大変勉強になりました。
【あとがき】
以前ちょっと書きましたが、このダニエルおじさんの妹さんが東京都内でベトナム料理レストランを経営しているので、以前食べに行ってご挨拶させていただきました。
その妹さんが先日、誕生日を迎えたので、彼女のフェイスブックには日本で知り合った友人やお客さんたち(主に中年の主婦)から沢山のおめでとうコメントが寄せられていましたが、その中に混じってダニエルおじさんやNKTおじさん等NKTベテランたちのコメントが並んでいました。
日本の主婦と、20世紀を代表する特殊部隊の兵士たちが同じ場所で話している光景はなかなかシュールで、つい笑ってしまいました。
しかし少し見方を変えると、彼ら特殊部隊員もまた家族を思いやるごく普通の人間であり、戦争さえなければ人を殺すという経験をする事も、故郷を捨ててアメリカに亡命する事もなかったはずです。
私はマニアとして彼ら軍人に対しカッコいいという憧れを抱いてしまいますが、同時に人間としては、人生から取り返しのつかない大きなものを失ってしまった人たちなのだと、時々思い起こされます。
この記事へのコメント
ブログを有り難く、貴殿の御活躍をイベント等で拝見させて戴いております。
当方も南べに興味がありますが、まだまだ極めるのには道険しですね。
なんちゃってNKTをやってみたいと思いますが、タイガーはNGですよね。
これからも色々教えて下さいm(__)m
当方も南べに興味がありますが、まだまだ極めるのには道険しですね。
なんちゃってNKTをやってみたいと思いますが、タイガーはNGですよね。
これからも色々教えて下さいm(__)m
Posted by へっぽこ南無太郎 at 2016年10月21日 12:51
へっぽこ南無太郎さん
初めまして。ご意見ありがとうございます!
決してNKTでタイガーNGという事はないと思います。
ただし、どの服を着る/支給されていたかは同じNKTでも、チームによって偏りがあるようで、僕の認識では以下のパターンが多い気がしています。
グリーン系(南ベトナム軍戦闘服・米軍TCU・グリーン色CISO戦闘服等)、およびそれらの黒染め:
ベトナム人・CIDGともに着用
米軍ERDL(グリーンリーフ):
ベトナム人・CIDGともに着用
南ベトナム軍リーフ系戦闘服:
ベトナム人
APA/CISO系(タイガーやカーキ色CISO戦闘服など):
CIDG兵
戦闘服は支給品以外にも、兵士個人が自費購入する場合もあるので、これに当てはまらないパターンもあるかと思いますが、大筋ではこんな感じだったと思います。
以上、お役に立てれば幸いです^ ^
初めまして。ご意見ありがとうございます!
決してNKTでタイガーNGという事はないと思います。
ただし、どの服を着る/支給されていたかは同じNKTでも、チームによって偏りがあるようで、僕の認識では以下のパターンが多い気がしています。
グリーン系(南ベトナム軍戦闘服・米軍TCU・グリーン色CISO戦闘服等)、およびそれらの黒染め:
ベトナム人・CIDGともに着用
米軍ERDL(グリーンリーフ):
ベトナム人・CIDGともに着用
南ベトナム軍リーフ系戦闘服:
ベトナム人
APA/CISO系(タイガーやカーキ色CISO戦闘服など):
CIDG兵
戦闘服は支給品以外にも、兵士個人が自費購入する場合もあるので、これに当てはまらないパターンもあるかと思いますが、大筋ではこんな感じだったと思います。
以上、お役に立てれば幸いです^ ^
Posted by タイガ
at 2016年10月21日 21:16

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