2016年03月05日
コルトAR-15/M16の分類と刻印
銃器ファンの間では、AR-15という銃は別名M16と呼ばれ、AR-15が民間モデル、M16が軍用モデルと見なされる事が多いようです。
しかし、この認識は部分的には合っていますが、、それだけでは説明として不十分です。
今回は、AR-15およびM16という名称はそれぞれどのように使われていたかを、銃のコーションプレートたるロアレシーバーの刻印で確認してみます。
(画像はもちろん海外フォーラムからの転載。でも米国のマニアだって僕の作った図解を勝手に転載してるんだから、情報共有って事で許してちょんまげ)
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アーマライトAR-15
アーマライトの製品名。アーマライト製およびコルトによるライセンス生産=Model 601のみ。
米軍での採用を目指して開発され、民間には販売されていない。
▲アーマライトAR-15(画像左)、アーマライトAR-15 コルトモデル / Model 601(画像右)
コルトAR-15シリーズ
正式にアーマライトAR-15の製造権を取得した後のコルトの製品名。1963年採用のModel 602から、1970年代までの製品全て。
▲コルトAR-15 Model 602(画像左)、コルトAR-15 Model 603 / U.S.M16A1ライフル(画像右)
また軍用モデルが改名(下記参照)された後も、民間モデルは引き続き"コルトAR-15"シリーズとして販売される。
▲コルトAR-15 Model SP1 / R6000(画像左)、コルトAR-15A3 タクティカルカービン / AR6721 (画像右)
民間モデルのコルトAR-15シリーズは、軍用モデルの発展に合わせて以下のモデルチェンジが行われている。
コルトAR-15シリーズ: コルトAR-15 Model SP1以降の第2・第3世代モデル。コルトM16A1シリーズに倣ってコルトAR-15A1シリーズと呼ばれる事もあるが、製品名ではない。
コルトAR-15A2シリーズ: コルトM16A2シリーズに準拠する第4世代モデル。
コルトAR-15A3シリーズ: コルトM16A3シリーズに準拠する第5世代モデル。
コルトM16シリーズ
1970年代後半(?)以降のコルト製軍用モデルの製品名。
従来は軍用・民間共に"コルトAR-15"という製品名だったが、1970年代後半に入るとコルトは、知名度の高まった米軍制式名のM16という型番を逆輸入し、自社の軍用モデル製品名を"コルトM16"シリーズへと変更する。
(言い換えれば、それ以前のコルト製軍用モデルは全て"コルトAR-15"であって、1970年代まで"コルトM16"という製品は存在しなかった。)
また米軍では20インチバレルのライフル仕様のみがU.S.M16ライフルであるが、コルトM16シリーズはライフルに限らず、カービンやSMG仕様も"M16A2カービン"等の名称で販売された。
コルトAR-15 Model 604系のフォアードアシスト非搭載モデル→コルトM16シリーズ
コルトAR-15 Model 603系のフォアードアシスト搭載モデル→コルトM16A1シリーズ
U.S.M16A2ライフル以降の第4世代モデル→コルトM16A2シリーズ
U.S.M4カービン以降の第5世代モデル→コルトM16A3シリーズ
これに伴い、米軍納入・輸出向け共に全ての軍用モデルでコルトAR-15刻印が廃止された。
▲AR-15刻印無しのU.S.M16A1ライフル(画像左)、コルトM16A1シリーズ※カービン仕様も同じ刻印(画像右)
また米軍制式採用になっていないコルトM16シリーズも、一部の製品は部隊単位の予算で購入される場合があったため、メーカーの製品名がそのまま米軍での正式な取り扱い名称(制式名ではない)になっている。
RIFLE M16A2 HEAVY BARREL (NSN 1005-LL-MC9-0369 2050)
CARBINE 5.56MM M16A2 MOD 727 (NSN 1005-LL-MC9-2194 2094)
CARBINE 5.56MM M16A2 MOD 733 (NSN 1005-LL-MC9-2195 2094)
RIFLE 5.56MM M16A2 MATCH (NSN 1005-LL-MC9-2745 2050)
U.S.Rifle 5.56mm M16シリーズ
米軍制式名。現在までにM16、XM16E1, M16A1, M16A2, M16A3, M16A4の6つが採用された。
それぞれのモデルで複数の仕様や製造メーカーが存在したり、生産時期による設計変更あり。
▲歴代のU.S.M16シリーズ
軍正式名はメーカーの製品名と無関係であるため、"コルトAR-15"が使われた時代であっても、製造メーカーがコルト以外の場合は商標上の問題から、AR-15の刻印は無い。
▲H&R製U.S.M16A1ライフル(画像左)、GMハイドラマティックディヴィジョン製U.S.M16A1ライフル(画像右)
この他U.S.M16シリーズには以下の試作モデルが含まれる。
M16A1E1: M16PIP(性能向上計画)
M16A1E2: M16PIP(性能向上計画)最終段階, 後のM16A2
M16A2E1: M16A2フラットトップ・アッパーレシーバー搭載検討
M16A2E2: ACR(先進戦闘ライフル)計画コルト案"コルトACR"
M16A2E3: 海軍向けフルオート化検討, 後のM16A3
M16A2E4: M16A2フラットトップ・アッパーレシーバー搭載検討, 後のM16A4
まとめ
AR-15とは、
・アーマライトの製品名 (アーマライトAR-15およびアーマライトAR-15コルトモデル Model 601のみ)
・米軍での取り扱い名称 (アーマライトAR-15コルトモデル Model 601およびコルトAR-15 Model 602のみ)
・コルト軍用モデルの製品名 (コルトAR-15 Model 602~1970年代まで)
・コルト民間モデルの製品名 (コルトAR-15 Model SP1以降全て)
・各社のAR-15系銃器の総称
M16とは、
・コルトAR-15 Model 604の米軍制式名 (U.S. Rifle 5.56mm M16)
・AR-15系ライフルの米軍制式名 (U.S. Rifle 5.56mm M16, XM16E1, M16A1, M16A2, M16A3, M16A4)
・コルト軍用モデルの製品名 (1970年代以降)
おまけ
ちなみに、米軍制式名とコルトの製品名は全く関係ないと書きましたが、そのせいで特にややこしい事になってるのがM16A3です。
M16A3という名称には二つの意味があり、一つはU.S.M16A2のフルオート版として知られる、1990年代に米海軍によって開発された"U.S.M16A3ライフル"で、コルトM16A2シリーズに属していました。
そしてもう一つが、1994年に制式化されたM4カービンに始まる、軍用フラットトップレシーバー仕様の"コルトM16A3"シリーズを指します。
さらにその後、コルトM16A3シリーズのU.S.M16A4の配備が進んだ事で、米海軍は2008年に、U.S.M16A4のフルオート版に再び"U.S.M16A3ライフル"の制式名を付けてしまいました。(NSNは前モデルと別)
その為、1990年代には"コルトM16A2"シリーズだったU.S.M16A3が、現在では"コルトM16A3"シリーズになっています。
書いてて自分でも混乱します。どうせなら新型はU.S.M16A5とかにしてよ。紛らわしい。
▲コルトM16A2シリーズの旧U.S.M16A3ライフル (NSN 1005-01-367-5112)
▲コルトM16A3シリーズの現U.S.M16A3ライフル (NSN 1005-01-357-5112)
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