2015年01月07日
Gen1~Gen3期のM16ライフル
以前も書きましたが、コルトAR-15を語る上でお馴染みの"Model 〇〇〇"というコルト社における軍用モデルナンバーは、あくまでメーカー側の品番であり、米軍におけるモデル分類とはあまり対応していません。
(ただし、Model 606, 653, 723, 725など制式採用以外で米軍が購入・テストした物は、モデルナンバーがそのまま米軍での取り扱い名になっていますが)
また、同じモデルナンバーや米軍制式名でも、生産時期によって銃の仕様がかなり異なるため、特にGen1(第1世代)~Gen3のM16ライフル(コルトModel 01からModel 604)あたりはかなりややこしいです。
Model 603にいたっては、実戦配備されたもので5種類、テストモデルを含めると8種類もありますし。
なので今回は、各モデルの固有名とて軍制式名+採用年を使って、Model 01からModel 604の各仕様を見直していきたいと思います。
なお日本では米国のAR-15研究者が用いる"世代(Gen)"という概念については意外と認知度が低いので、以下にコルト製AR-15軍用モデルの大まかな世代分けを記しておきます。
Gen1: 1959年開発のアーマライトAR-15およびコルトによる最初期の改良型
Gen2: 1964年採用のM16 / XM16E1およびその派生。ロアレシーバーにダストカバーを浮かすリブあり
Gen3: 1967年採用のM16 / M16A1およびその派生。ボルトキャリアーにカーボン対策、マガジンキャッチボタン周りにガード追加
Gen4: 1983年採用のM16A2およびその派生。5.56mmNATO弾対応、リアサイト他多数改良
Gen5: 1994年採用のM4カービン以降のモデル。M1903ピカティニーレイル・フラットトップレシーバー仕様
なお、この記事では上記の各世代数に加えて、僕の独断でその世代内での仕様レベルにも登場順に数字をふっています。
仕様レベルはモデルナンバーが異なっても各モデル共通で並行して発展していく、世代(Gen)をより細分化した概念です。※僕が発案した分類法なので、他人に言っても通じません(笑)
例) Gen3-2 : 第3世代の中で2番目に制作された仕様レベルという意味。Model 603でも604でも、仕様レベルは並行して発展していきます。
Gen | レベル | 概要 | 非フォアードアシスト | フォアードアシスト |
1 | 1 | アーマライトAR-15をコルトで生産 | アーマライトAR-15 (Mod 601, 1959) | |
2 | 樹脂部品変更 | アーマライトAR-15コルトモデル (Mod 601, 1959) | ||
3 | 弾薬の仕様・バレルツイスト変更 | コルトAR-15 (Mod 602, 1963) | ||
4 | フォアードアシスト追加検討 | コルトAR-15 (Mod 602, 1963) | ||
2 | 1 | ダストカバー下リブ追加 | M16 (Mod 604, 1964) | XM16E1 (Mod 603, 1964) |
2 | 円筒ハンドガード仕様案 | XM16E1 (Mod 603, 1964) | ||
3 | 改良(Gen3)案 | (Mod 603, 1967?) | ||
3 | 1 | ボルトキャリアー、レシーバー他改良 | M16 (Mod 604, 1967) | M16A1 (Mod 603, 1967) |
2 | ストックを工具収納ドア付きに変更 | M16 (Mod 604, 1971) | M16A1 (Mod 603, 1971) | |
3 | 円筒ハンドガード仕様案 | M16 (Mod 604, 1983?) | M16A1 (Mod 603, 1983?) | |
3 NAVY | 1 | 海軍チャイナレイク・ラボがSEAL向けに海水対策 | Mk4 Mod0 (Mod 603, 1970) | |
2 | 海軍SEAL向け改良型 | Mk4 Mod1 (Mod 603, 1981?) |
Gen4以降については過去記事『M16ライフルの系譜』参照
<Gen1~Gen3期のM16ライフル>
Model 601 (Model 01)
アーマライトAR-15 (1959年)
Gen1-1: アーマライトAR-15 (Model 01)をコルトが生産したもの。スプリングフィールド造兵廠にてテスト開始
アーマライトAR-15コルトモデル (1959年)
Gen1-2 コルト仕様: 1960年にアメリカ空軍が導入。またプロジェクト・アージルにより約1000丁をベトナム共和国軍へ供与
Model 602 (Model 02)
コルトAR-15 (1963年)
Gen1-3 コルト仕様改良型: 使用弾薬にも改良を重ね米空軍で制式化。ベトナム派遣特殊部隊が実地テスト
コルトAR-15 (1963年)
Gen1-4 コルト仕様陸具向け改良型: 米陸軍の要求によりフォアードアシストノブを搭載。部分的にGen2化。陸軍では引き続きテストを実施
Model 603
XM16E1 (1964年)
Gen2-1 陸軍モデル: アメリカ陸軍が仮採用。ベトナム派遣アメリカ陸軍・海兵隊および同盟国軍に配備
XM16E1(1964年)
Gen2-2 陸軍モデル・円筒ハンドガード仕様: テストのみ
M16A1(1967年?)
Gen2-3 陸軍モデル改良(Gen3)案: テストのみ
M16A1 (1967年)
Gen3-1 陸軍モデル: アメリカ陸軍・海兵隊に制式採用。ベトナム戦争で最も多用されたモデル
Mk4 Mod0 (1970年)
Gen3-1 海軍モデル: 海軍チャイナレイク・ラボがSEAL向けに改良
M16A1 (1971年)
Gen3-2 改良型陸軍モデル: ストックを工具収納ドア付きに変更。ベトナム戦争後に普及
Mk4 Mod1 (1981年?)
Gen3-2 改良型海軍モデル
M16A1(1983年?)
Gen3-3 改良型陸軍モデル・円筒ハンドガード仕様: 計画のみ
Model 604
M16 (1964年)
Gen2-1 空軍モデル: 軍事援助としてベトナム軍にも少数が配備
M16 (1967年)
Gen3-1 空軍モデル: アメリカ空軍にのみ配備
M16 (1971年)
Gen3-2 改良型空軍モデル: ストックを工具収納ドア付きに変更。ベトナム戦争後に普及
M16(1983年?)
Gen3-3 改良型空軍モデル・円筒ハンドガード仕様: 新規生産は無いが、一部でハンドガード単体で配備
<ベトナム戦争期のM16ライフルとトイガン>
以上のようにModel 01からModel 604だけでもけっこうな数がある訳ですが、実際にベトナム戦争において陸軍・海兵隊に大々的に配備されたモデルというのは、実はたった二つしかありません。
それは
XM16E1(1964年型)と、
M16A1(1967年型)です。
しかし、世の中には『ベトナムバージョン』と名付けられたM16系のトイガンがいくつも出回っているのにも関らず、
ベトナム戦争で数百万丁も使用されたこの二つの銃は、まだ一度もトイガン化された事がありません。
※2020年、ついにXM16E1をほぼ完ぺきに再現したガスガンが台湾DNA社から発売されました!!(値段的に僕はちょっと手が出ないけど)
以下、そのままではベトナム戦ごっこに不適切な各社のM16をどうすれば使えるようにできるか検討しました。
(他人の間違いを指摘するようで僕も心苦しいですが、同時にAR-15マニア兼ナム戦マニアとして、正しい情報が普及する事を願って、あえて書かせてもらいます)
・クラシックアーミー M15A1VN
刻印とスリングスイベル基部以外は、かなりXM16E1(1964年型)に近いモデル。買うならこれをお勧めします。
・東京マルイ M16A1
M16A1(1971年型)なので、ストックをVNバージョンのゴム底タイプに変えるとM16A1(1967年型)とほぼ同じになる。
・東京マルイ M16A1 VN
架空のモデル。でもフラッシュハイダーを閉鎖型(バードゲージ)に変える事でM16A1(1967年型)とほぼ同じになる。
・G&P M16VN
なぜか空軍のM16(1964年型)が再現されている。陸軍でも使用例が100%無い訳ではないが、基本的には空軍しか使わない銃。フォアードアシスト付きのアッパーレシーバに変えればXM16E1(1964年型)とほぼ同じになる。
・Bomber M16VN GBB
これも空軍のM16(1964年型)
・TOP M16 EBB
1964年型ではなく、その原型の1963年型のコルトAR-15 / XM16E1に相当するモデル。試作段階の銃であり、実戦部隊へ配備された可能性は限りなく低いと思う。ロアレシーバーにダストカバーを浮かすリブを追加すればXM16E1(1964年型)に近付く。
・WE M16VN GBB
架空のモデル。ハイダーを閉鎖型に、ストックをゴム底タイプに交換すればM16A1(1967年型)に近付く。
・その他
MGCのモデルガンM16のゴム底ストックは、トイガンで唯一構造が正確なので、僕はストックだけでも欲しいです。
どうしても三叉(チューリップ型)フラッシュハイダーが使いたい場合は、マルイ製ならロアレシーバーからマガジンキャッチ周りのリブを削り取という荒行をがんばったり、
G&P製のM16A1用アッパーと、M16VN用ロアーレシーバーを組み合わせれば、XM16E1(1964年型)のレシーバーに近づける事は出来ます。
ただ、M16A1(1967年型)は1968年2月のテト攻勢あたりから現場への配備が開始されてるので、それ以降の年代設定であればM16A1で何の問題も無いと思います。
と言うか実際ベトナム戦争で使われた数はM16A1の方が圧倒的に多いし。
▲M16A1(1967年型)を支給されたベトナム共和国軍兵士。テト攻勢直後の1968年2月
【2015年5月3日訂正】
M16A1(1971年型)ならいろんなメーカーから出てますが、この銃がベトナム戦争で使われた証拠はまだ未確認です。
もしかしたら75年にサイゴンのアメリカ大使館を警備している海兵隊なら1971年型を持っているかも?って程度。
1974年および1975年の画像で、M16A1(1971年型)がベトナム共和国軍に使用されている事が確認できました。したがって、ベトナム戦争最末期であれば、各メーカーが出しているドア付きストックのM16A1も使用可能です。
また各トイガンメーカーのM16に対する誤った認識から、ナム戦ファンの間でも
『ベトナム戦争→M16初期型→フォアードアシスト無し』という誤解が20年以上蔓延していますね。
あえて言いますが、フォアードアシスト無しのAR-15は基本的に、空軍と極初期の特殊部隊でしか使われていません。
一部に例外はありますが、あくまで極少数のイレギュラーな場合のみです。
今回の補足・訂正は以上になります。
どうせまた間違えや新発見が見つかるので、その都度記事にしていきたいです。
ちなみにウィキペディアのM16の項には、僕が高校生の時にホームページに書いた内容が無断でコピペされて、いまだに載ったままですけど...
あれも今見ると間違いだらけなんです。そりゃそうでしょ、17の小僧じゃ英語を翻訳するのに精一杯で、内容の検証なんてまだまだ先の話でしたよ。
それを10年経った今も天下のウィキペディア様が掲載してるんだから、いかにも無責任な情報が独り歩きする現代のネット社会を象徴してますね。
オレ知ーらね!(笑)
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