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2014年07月24日

キャンバスブーツ

※2021年11月23日更新

キャンバスブーツのコントラクトナンバーと生産国について、認識間違いが複数あったので改めて最新のまとめを『キャンバスブーツのコントラクト/調達局コード』に掲載しました。併せてこちらをご覧ください。

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先日うちに来たキャンバスブーツさん。
片足のみ、しかも4W(約21.5cm)というサイズなので、純粋に資料として買いました。(履けるサイズでも壊れるので履かないけど)
第2次インドシナ戦争で使われたキャンバスブーツとしては、最もオーソドックスな仕様の物だと思います。

キャンバスブーツ

キャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツ

コントラクトNo:DA 92-125 FEC-3638
カラー:ブラック
アイレット:7穴
サイズ:4XW (ソールには4WXと表記)

このキャンバスブーツは、ベトナム戦争において、南ベトナム軍またはCIDGが使用した靴として有名だと思います。
デザインは、見ての通り第1次インドシナ戦争期にフランス連合軍が使用した"ブッシュ靴(Chaussures de brousse)"を原型としています。
生産メーカー名の『ベータブーツ』や『パラディウム』と聞けば、馴染み深いと思います。

キャンバスブーツ キャンバスブーツ キャンバスブーツ キャンバスブーツ
▲第1次インドシナ~アルジェリア戦争期の仏軍ブッシュ靴
仏軍では生地の色はほとんどオリーブ色のみ。細部の形状はメーカーにより様々で、アイレットも5穴~7穴と幅がある

ジュネーヴ協定後も、独立した旧・仏領インドシナ諸国は(もともとフランス連合軍なので)この仏軍ブッシュ靴を引き続き使用していました。
後にアメリカが南ベトナム・ラオスへの軍事援助を本格化すると、アメリカ軍は支援物資としてこの仏軍ブッシュ靴のコピー品を第三国で生産し、同盟軍への大量供与を開始します。
こうして生まれたキャンバスブーツは後に、ARVNリュックやCISO発注品と同様にラオスやクメールなど周辺の親米国政府軍にもアメリカ軍からじゃんじゃん供給されていったので、これらの装備品はベトナム限定ではなく、もっと広範囲に東南アジア(インドシナ諸国)向けの反共軍事支援の一つだったと言えると思います。
この事からも、ブーツそのものには(おそらく単にメーカー側の設備の都合で)いくつかバリエーションがありますが、それらに南ベトナム政府軍向け・CIDG向けという区分は存在しなかったと考えます。

※北ベトナム軍もフランス軍の装備を接収してそのまま使っていたため、親米国と同様に仏軍ブッシュ靴のコピー品を使っていました。


日本の安全靴・作業靴メーカーが作った物もあるので、戦後日本国内でこの靴が大量に売られていたという話はよく耳にします。大抵は東南アジア向けのサイズなので、小さすぎて一般的な日本人男性の履けるサイズではなかったようですが。
ただし、そのメーカーを特定できるようなスタンプ等は、ほとんどの靴に入ってないようです。メーカー側が、戦争に使う物に自社名を入れたくなかったのか。またはアメリカ側が日本の立場を考慮し、あからさまに日本製だと分かるようなスタンプなどは入れないよう指示したのか。(コントラクトナンバーが入ってる時点で秘密裏に作られた物ではありませんが)
アメリカ国防総省が公に日本企業に発注した物品なので、もしかしたら国立公文書館とかに当時の書類が残ってるかもしれないですね。

さて、本題のブーツのコントラクトナンバーを見ていきましょう。
まず、最初に挙げた僕のは『DA-92-125-FEC-3638』。後述する125系の物です。
がしかし、僕が持ってるはこの1足のみなんです。(こないだ初めて買ったw)
なので比較検証のため、以下アメリカのミリタリーマニアフォーラム『Wehrmacht-Awards.com Militaria Forums』内のスレッド『Boots in the ARVN - Vietnamese footwear』に投稿された、各コレクターの方が所有するブーツの画像を引用・リンクさせてもらいます。


DA-92-557系

DA-92-557-FEC-36057 (オリーブ, 7穴, 3W)


DA-92-557-FEC-36626 (オリーブ, 7穴, 4W)


DA-92-557-FEC-37113 (オリーブ, 7穴?, 6W)


DA-92-557-FEC-37315 (ブラック, 7穴, 6W)



DA-92-557-FEC-96626 (オリーブ, 7穴, 5W)


DA-92-557-FEC-96627 (オリーブ, 7穴, 5W)


DA-92-125系

DA-92-125-FEC-2895 (ブラック, 7穴, 4W)


DA 92-125 FEC-3638 (ブラック, 7穴, 4W)
↑うちのブーツと同じコントラクトナンバーで、仕様もスタンプに至るまで全く一緒です。(サイズ違い)


DAJB03系

DA-92に次いで散見されるのが"DAJB03-xx-C-xxx"というコントラクトナンバー。
外観は大差ありませんが、アイレットが7穴だけでなく、8穴のタイプもあるのが特徴といえば特徴でしょうか。

DAJB03 68-C-451 (ブラック, 8穴, 7W)


DAJB03-67-C-0291 (ブラック, 7穴, 7W)


いつもお世話になってる似非ミリタリー日誌様も、以下の2足のDAJB03系をお持ちです。
DAJB03-68-C-150 (ブラック, 8穴, 10W)
DAJB03-67-C-0294 (ブラック, 7穴?, 4XW)



KO/3259系?

こちらは他のキャンバスブーツと明らかに構造が異なり、サイドにジャングルブーツのような補強が付いてるタイプ。
『Wehrmacht-Awards.com Militaria Forums』では、このブーツは南ベトナム製で、1974年契約と紹介されていました。

KO/3259 2-8-74 (オリーブ, 7穴, サイズ5)
"PHAM THI KINH"というベトナム語らしき文字がスタンプされています。(意味は分かりませんでした。メーカー名?)


KO/3259-2-8-74 (オリーブ, 7穴, サイズ5)
※もしかしたら上のと同じ個体かも。


こちらはスタンプ無しらしいですが、形状は同じ物(オリーブ, 7穴)


Q州の一匹狼様がブログで紹介していらしたのも、このタイプなのですね。(今までこういうものが存在する事を知りませんでした)

ちょっとサンプルが少ないので何とも言えないですが、もし仮にこのデザインのブーツは全て南ベトナム製で、戦争末期の1974年頃にのみ作られた物であれば、戦後流通している数がかなり少ないのも変ではないですよね。

以上、第2次インドシナ戦争期の米軍援助キャンバスブーツについてでした。




【番外編】

以下は第二次インドシナ戦争で使用されたモデルではない(と思う)ので軍装品としての資料とは言えないのですが、ちょっと面白い物なのでコレクションとして持っているものです。


キャンバスブーツ
キャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツ
フィリピンの化学製品会社が作った物で、ソールにあるBANTEXのブランドロゴは現在と同じです。
日本の作業着屋で売られていた物が、巡り巡って僕のところに来ました。製造年は不明ですが、そこそこ古そうです。
外観は、見ての通り、丈が異様に長い。カッコイイ~w
足の内側のくるぶしっぽい部分(内果と言うらしい)に保護用のゴムは付いていないですが、ラバーは上のキャンバスブーツと全く同じ構造です。
なんか、このメーカーも戦争中米軍からブーツ生産を受注していて、その型をそのまま使って作業靴として売っていた気がしてなりません。


中国製

キャンバスブーツ
キャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツ
タグから見て、ここ20年くらいの比較的新しい物で、日本国内向けに生産されたものです。リサイクルショップで買いました。
いかにも中国の軍用ズックっぽい緑色の生地なので、パッと見北ベトナム軍キャンバスブーツのような印象を受けますが、北ベトナム軍ブーツ見られる土踏まず部分のラバーや両サイドの斜め補強はありません。
シハヌーク政権時代のクメール王国は中国とも仲が良かったので、中国に仏軍ブッシュ靴のコピー品を作らせると、こんな感じになりそう。

キャンバスブーツ
▲これは70年代のクメール共和国時代の写真ですが、よく似た靴が使われています。


中国製

キャンバスブーツ
キャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツキャンバスブーツ
現代も販売されている、仏軍ブッシュ靴というかパラディウム社のスニーカーのコピー商品。僕が持ってるのはちょっと古いモデルで、現行モデルはかかと部分にMAG☆FORCEとダッサいロゴが入ってしまうようです。
てゆーかこれ、ありえない間違えしてるんですけど。横の丸いゴム板が、足の内側ではなく外側に付いてるんですけど・・・。コンバースじゃないんだよ・・・
今通販でこの靴の画像見ると、ゴムはちゃんと内側に付いている。前はみんな逆に付いてたのか?それとも僕のだけ不良品なのか?
とにかく、これ買った当時の僕は知識が無くて、これが変な事に気付かなかった。無念。




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この記事へのコメント
お疲れ様です。
自分も、ブーツナンバー調べてみます。

この黒いブーツですが、自分は福岡久留米の「月星」製と聞きました。
PIRレーションやDPSC物と同じく、日本製の物は多いですね。

パラディウムは普段着に使ってます。
Posted by Q州の一匹狼Q州の一匹狼 at 2014年07月24日 23:21
相変わらず詳しく調べてますね!
インドシナコスしたいので参考になりました。
Posted by OscarOscar at 2014年07月27日 17:02
>Q州の一匹狼さん
あの記事を拝見してから急にキャンバスブーツに興味が沸いてきて、今回初めて自分なりに調べてみました。お陰さまで勉強になりました!
何かスタンプが入っていれば貴重な情報源になりますので、教えて頂けると大変助かります。

具体的なメーカー名は初めて知りました。月星は当時から大手のゴム靴メーカーだったようなので間違いなさそうですね。
コントラクトナンバーの下5桁を紐解く資料が見つかればもっと製造メーカーが出てきそうなので、地道に探していこうと思います。

日本はこのような軍事支援物資と同時に、USAID発注の民間向け援助品も大量に受注していたようですね。
加えて数十万人のベトナム派遣米軍の兵站を支える重要な中継・生産基地であり、その恩恵として日本企業が南ベトナム市場に進出するなど、ベトナム戦争で日本が果たした役割を考えると、実質的にはほとんど参戦国だったように思えます。
Posted by タイガタイガ at 2014年07月29日 19:08
>Oscarさん
昔は現代製パラディウムのブーツで代用するしかないと思っていましたが、安めのレプリカが出てくれたお陰でインドシナ戦も多少やりやすくなりましたね。
Posted by タイガタイガ at 2014年07月29日 19:13
昔は『忍者ブーツ』って呼んでいたんたんだよ~
実際に納入された箱見たことないけど、黒い一般的なタイプは、足袋で有名な
『福助』で作ってたって言われていて、
箱に『ninja tabi』って書いてあるらいしいんだよ。
DAJBは中期のファティーグが有名だけど、レアアイテムとしては、セカンドパターンタイガーの厚手生地の物は実はDAJ B だよ!
いつもいろんな事熱心に調べていて凄いね~
楽しく読ませて貰ってます!
Posted by komon at 2014年08月03日 09:23
>komonさん
コメントありがとうございます!
地下足袋がニンジャシューズと呼ばれたとは聞きますが、こっちは『ninja tabi』で商品名にまでなってたんですねw
元の仏軍キャンバスブーツはオリーブ色なのに、ベトナム期にいつの間にか黒が主流になったのって、もしかしたら日本のメーカーが足袋用の生地で作っていたからじゃないか?と思えてきました。

この記事を書いた後に、DAJBナンバーは日本国内で物品調達を行う米軍調達部署の部門コードとの情報を頂きました。
よく厚手のタイガーは日本製と耳にしますが、実際にDAJBとが入ってるのがあるんですね!
そう考えると、南べ・ラオス・クメール向け援助物資って、本当に日本製ばかりですね。

ご覧いただけて光栄です!
実物コレクション系の知識は付け焼刃なもので、あとで間違いに気づく事も多いので、なにか変な所があれば遠慮なくご指摘下さい。
Posted by タイガタイガ at 2014年08月05日 01:35
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