2024年11月27日
VMX/初代タイガーストライプ発売!!!
※2024年12月01日更新
分かりやすく言うと、ベトナム海兵隊が1957年に開発した、一番最初のタイガーストライプです。
その後現代まで70年近く続くタイガーストライプ迷彩の歴史はこの服から始まりました。
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この服自体はベトナム戦争が始まる以前の50年代末のベトナム海兵隊でしか使っていない服なのでレプリカなんて望めないと思っていましたが、出ちゃいましたよ。まさかこんな日が来ようとは!
【関連記事】
海兵隊ザーコップ迷彩について:https://ichiban.militaryblog.jp/e1084861.html
ベトナム海兵隊の歴代戦闘服:https://ichiban.militaryblog.jp/e1136674.html
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この服が使われた当時、まだ海兵隊全体を示す部隊章は制定されていなかったので、左袖には『第1上陸大隊(Tiểu Đoàn 1 Đổ Bộ)』部隊章のレプリカを縫い付けています。
(過去生地『ベトナム海兵隊のインシグニアについて その1』参照)
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第1上陸大隊の部隊章は中央に「赤い星」がデザインされていますが、これは海兵隊の前身の一部となったフランス植民地軍コマンドス・ノルト・ベトナム(北ベトナムコマンド)の部隊章から継承されたもので、その後1960年にアメリカ海兵隊のEGA(鷲・地球・錨)の意匠を取り入れた新徽章がベトナム海兵隊章として制定された後も、赤い星は海兵隊のシンボルとして受け継がれていきます。
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2024年06月22日
シーウェーブ塗り終わり
前記事
2020年に購入したIllusion militaria製ベトナム海兵隊ザーコップ迷彩4th(VMD/シーウェーブ)レプリカの色が気に入らなかったので、2022年1月から全ての黒い模様を油性ペンで塗るという地獄の塗り絵大会を始めた訳ですが、それがようやく完了しました。
前回同様一人で完成させる根性が無かったので、今回も引き続き友人に手伝ってもらいました。
なお今回はカラオケボックスの中で作業し、一人が塗ってる間、もう一人が歌を唄う写経&念仏スタイルを取り入れました。
二人で同時に塗るより作業スピードは落ちますが、ひたすら黙って作業するより、はるかに気が楽でした。
そうして購入から4年の時を経てようやく満足できる状態になった服がこちら。
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手前味噌ですが、この世に存在するレプリカの中で最もリアルな見た目だと自負しております。
塗るのと塗らないのとでは、このくらい色が違います↓
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メーカーは自社製品の間違いを認めることが出来ず、こういう青いシーウェーブも有ったと必死にアピールしていますが・・・。
そりゃあ、めちゃめちゃ探せば、そういうイレギュラーもあるのかも知れませんが、基本は無いです。
シーウェーブの黒は、青味の無い純粋な黒。色落ちしても青くならず、グレー系に薄くなるだけ。
ところで、この2年間ダイエット生活をしているお陰で、体重は最大時より11kg減、BMIは24.2にまで下がりました。(ついでに健康診断も全部A判定になった)
実はダイエットを始める前は、ウエストが太くてこのシーウェーブのパンツを履けるか怪しかったのですが、今なら余裕です。
やはり軍装趣味最大の敵は体脂肪。歳とって代謝が下がったせいで、運動しても思ったように体重は落ちません。
最も痩せていた状態に戻る事はもう一生無いのかも知れません。
それでも運動しなければ太る一方なので、なんとか年齢に抗っていきたいと思います。
2024年05月30日
エラーパッチ
※2024年6月1日更新
※2024年6月8日更新
ベトナム戦争期のベトナム共和国軍の部隊パッチの多くはシルク織り(所謂BEVO織り)製であり、機械で自動的に大量生産された物でした。
そしてこれらの中には稀に、貨幣のエラーコイン・エラー紙幣のように、エラー品のパッチが混入していたことが国内外のコレクターの方々が公開している情報から確認できます。
今回はそうしたエラーパッチの例を紹介いたします。(画像は全て引用です)
画像は左が正常、右がエラー品です。
①陸軍レンジャー部隊(Dennis Kim氏コレクション)
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見ての通り、完全に黒い糸が無くなっています。糸を機械にセットし忘れたか、織り出し中に糸が途切れてしまったようです。顔面蒼白でちょっと怖いです。
②海兵隊2ndタイプ(阮空挺氏コレクション)
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こちらは黄色い糸がありません。
このパッチは実際に軍服に縫い付けられ着用されている例が確認されています。
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▲1972年フエ
③陸軍第81空挺コマンド群(出典不詳)
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このパッチは糸の入れ忘れではなく、黒と赤の糸を逆に機械にセットしてしまったようです。
このエラーパッチの画像はずいぶん昔からネット上で広まっており、一部のマニアがこれを実在する正式なデザインだと勘違いして紹介している例も見た事があります。
国家が細心の注意を払って作る貨幣ですらエラー品が出回るのですから、戦時中の軍隊のパッチでこのようなミスが発生する事自体は驚くに値しないでしょう。
ただし、元々エラー品だけあって現存するエラーパッチは極めて少ないので、これはこれで貴重な資料の一つと言えるかもしれません。
2024年04月23日
ベトナム戦争末期の海兵隊
日曜日に友人とプチ撮影会を行ってきました。
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3年近く前に作ったっきり着る機会の無かったハンティングウェア改造のTCU型ザーコップ(5th/レイトウォーラージ・パターン)をようやく着ることが出来ました。
【製作記】
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上着を作った時点ではパンツを持っていなかったので、それも自作するしかないと思っていましたが、その後幸運にもギリギリ履けるサイズの実物(カーゴ型)パンツが手に入りました。生地はリップストップです。
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キャップもリップストップ生地のものです。
最近作られた物でない事は確かなのですが、古い時代のレプリカは出来が良いので真贋はよく分かりません。
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2024年04月01日
4か月ぶりの撮影会
春の陽気に誘われて、今年一発目の撮影会を行ってきました。
念願だったこの年代の海兵の軍装をようやく再現できました。
今回の全体テーマは1965年頃のベトナム共和国軍地方軍です。
みんなで撮った後は、私個人のコスプレ。
個人装備を使いまわして、1962~65年頃のベトナム海兵隊です。
迷彩服は先日記事にしたVMSもどきです。
この服が有れば、1965年の『南ベトナム海兵大隊戦記』はもちろん、1963年11月クーデターごっこだって出来ちゃいます。
撮影が終わって気付いたのですが、一日中日光を浴びていたせいで、みんな日焼けしちゃいました。
つい1週間前まで寒さに凍えて暖房を使っていたのに、こんなに急に暑くなるとは。
気温の変化に身体が付いていけないのか、撮影のあと二日連続で頭痛がしています。
2024年03月06日
ベトナム海兵隊の歴代戦闘服
※2024年3月18日更新
※2024年11月28日更新
過去記事『ベトナム空挺の歴代戦闘服』の海兵隊版を作りました。
なお服のカットの名称については過去記事『ザーコップ:ベトナム海兵タイガーの分類』参照
1954年~1960年代初頭:仏軍TTA47系
1954年にベトナム海軍麾下の陸戦コマンド部隊として第1海軍歩兵大隊(後の海兵隊)が発足してからしばらくは、フランス連合期にフランスから供与されたTTA47系戦闘服が海兵隊で着用されました。
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▲実物のTTA47/52軽量型上衣
1957~1963年頃:ザーコップ(1st/VMX)
1957年頃、海兵隊の制式迷彩として、ベトナム初の国産迷彩であるザーコップ(タイガーストライプ)が開発されます。服のカットは仏軍「TTA47/52型」が主でしたが、1958年頃には2ポケット「肩当て型」も登場しています。
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1958~1965年頃:カーキ(オリーブグリーン)
陸軍と共通のカーキ(オリーブグリーン)作戦服です。裁断は「肩当て型」と、肩当てを排した「簡略型」があり、海兵隊では1960年代前半まで着用されました。
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1962~1968年頃:ザーコップ(2nd/VMS)
1962年頃に登場したザーコップの新色バージョン(パターンは1stとほぼ同じ)です。「肩当て型」、「エポレット型」に加えて、1964年には「迷彩服型」も登場します。
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1964~1969年頃:ホアズン(初期ERDL/インビジブルリーフ)
1948年に米軍ERDLで開発された迷彩パターンは、当の米軍で採用される事はなかったものの、その生地は1964年以降アメリカからベトナムへと輸出され、ベトナム軍空挺、レンジャー、海兵隊などのエリート部隊共通の迷彩服となりました。なお空挺、レンジャー部隊では「空挺型」が主でしたが、海兵隊では「迷彩服型」も散見されます。
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1966年~?:ザーコップ(3rd/VMS亜種)
1966年には2nd/VMSのパターンを一部変更したザーコップ迷彩服が登場します。
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※当時の写真では2ndと3rdは見分けづらいのですが、徽章の年代的に恐らく3rdと思われる写真
1967~1975年:ザーコップ(4th/VMD)
1967年にそれまでのVMS系ザーコップからパターンを大きく変更した4th/VMDが登場します。裁断は主に「迷彩服型」です。
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1967~1970年頃:ホアズン(66年型ERDL/グリーンリーフ)
米軍は長年放置してきたERDL迷彩を1966年に改良し、自軍の熱帯戦闘服(TCU)に採用するとともに、1967年にはベトナム軍に供与する迷彩生地もそれまでのインビジブルリーフから、この新型(66年型)/グリーンリーフに切り替えます。裁断は主に「迷彩服型」です。
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▲東京ファントム製レプリカ
1968~1975年:ホアズン(ベトナム国産ERDL/パステルリーフ)
ベトナム軍は1968年に米国製のERDL迷彩を国産化し、以後グリーンリーフはこの国産迷彩服/パステルリーフに更新されていきます。裁断は当初は「迷彩服型」で、1973年頃から「4ポケット」や「TCU型」も加わります。
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1973~1975年:ザーコップ(5th/レイトウォーラージ)
1973年頃にはタイで生産された民生タイガーストライプの一種である「レイトウォーパターン」がベトナムに逆輸入され、ベトナム海兵隊の制式迷彩(5th)として広まりました。裁断は「迷彩服型」、「4ポケット」、「TCU型」のいずれも見られます。
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2024年02月24日
VMSっぽい服
※2024年2月25日更新
2024年2月23日に投稿した同名の記事の中で、かなり大きな勘違いを載せてしまっていたので、あらためて書き直します。
最近ベトナムのĐLCHが、ベトナム海兵隊ザーコップ迷彩の中でも1962年頃に登場した「2nd/VMSパターン」と称する服を発売したので、試しに買ってみました。
なお通常ラインナップでは「迷彩服型」で販売されていますが、今回僕は特注で「肩当て型」を作ってもらいました。
(海兵隊ザーコップの分類と裁断については過去記事『ザーコップ:ベトナム海兵タイガーの分類』参照)
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ぱっと見悪くないと思います。
パターンを実物の2nd/VMSと比べてみるとこんな感じ。
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パターンを印象付ける黒い模様の部分は7割くらい再現できている気がします。でも他の色の部分は完全に架空のデザインです。
ま、ĐLCHの製品はとにかく値段が安い事が取り柄で、レプリカとしての再現度は期待できないと分かった上で買ったので、そんなに不満はありません。
「VMSの代用品」としては十分なので、コスプレ撮影用に使いたいと思います。
これまでベトナム海兵隊ザーコップのレプリカと言うと「4th/VMD」ばかりで、その他のパターンはなかなか商品化されてきませんでした。
そんな中、数年前に韓国の業者が恐らく史上初のVMSのレプリカを発売しましたが、あちらはパターンはちゃんとしているのに色を大失敗していたため、僕は買いませんでした。
そして今回のĐLCH製も、色はともかくパターンの再現が中途半端。
例の韓国の業者が同じパターンで色だけ修正して再販してくれたら最高なのですが・・・。なんか自信満々で、自分の間違いを認める気はなさそうなんだよな・・・。
なお今回、僕はこの服を1962~1965年頃の設定で着るつもりなので、今のところインシグニアは一切付けないつもりです。
海兵隊の各インシグニアの導入年は、次のようになっています。
・右胸の大隊色ネームテープ:1963年
・右胸の胸章:1966年
・右袖の大隊章:1967年?
海兵隊部隊章については、1960年に採用されたものの、実際に普及し始めるのは1965年頃です。
同様にネームテープも1963年にはすでに着用例があるものの、1960年代中盤までは着用が徹底されていませんでした。
なので1965年までは、作戦服に何のインシグニアも着用していない将兵が大勢見られます。
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1965年の『南ベトナム海兵大隊戦記』で有名な第2海兵大隊第2中隊長グエン・バン・ハイ大尉も、インシグニアを着用していません。
また過去記事『レプリカ海兵ベレー』で書いたように、この年代に合わせた海兵隊兵卒ベレー(1956年~1966年頃)はすでに準備済みです。
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振り返ってみれば、東大で南ベトナム海兵大隊戦記を鑑賞してから12年。ようやく、その年代の海兵の軍装が揃いました。
春になったらさっそく撮影会で着たいと思います。
2023年10月02日
シーウェーブ写経会
過去記事『シーウェーブ写経』で書いたように、香港Illusion militaria製のベトナム海兵隊ザーコップ迷彩4thタイプ(通称VMD/シーウェーブ)レプリカの黒い模様の部分をサインペンで塗りつぶす作業を2022年1月に始めた訳ですが、始めてみるとマジで精神力を要する途方もない作業だという事が分かりました。
そして作業の途中で僕の心はぼっきり折れてしまい、しばらく手を付ける事すらできなくなり、作業開始から1年8ヶ月経ってもまだ半分も進んでいないという状態でした。
しかし、このままでは一生完成しないので、先日一念発起して友人に助けを求めました。(一人で完成させることは諦めました)
そして日曜、朝10:30に友人宅に行き、二人で分担して塗り進む事となりました。
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途中休憩を取りつつ、計7時間ほどひたすらこの作業を行いました。
しかし二人がかりで7時間やっても、結局この日の夜までに進んだのは全体の3/4程度まででした。まだパンツが片足分残っています。
当初は、この日のうちに上下全てを完成させるつもりでいたのですが、見通しが甘かったです。シーウェーブはそんなに優しくありません。
しかしそれでも、一人で黙って作業するよりかは、はるかに精神的に楽でしたし、彼の協力無しにここまで進む事は不可能でした。マジ感謝です。
そして18:30頃、作業を終えて夕飯を食べに出発。
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協力してくれた友人を労い、ちょっと良い個室海鮮レストランでご飯を食べてもらいました。
さらにその後、スーパー銭湯でひとっ風呂浴びて解散。
服自体は完成しなかったけど、久しぶりに達成感を覚える、濃密な一日を過ごすことが出来ました。
2022年10月29日
タイガーストライプの始まり Part 4
過去記事『タイガーストライプの始まり Part 3』にて、1958年撮影とされるベトナム海兵隊の写真にザーコップ(タイガーストライプ)迷彩服が写っていると紹介しました。また、その記事を書いた時点では、その写真が僕がザーコップの使用例を確認した一番古い時代の物でした。
しかし先日、1957年の国慶日(10月26日)パレードの映像を見ていたら、普通にザーコップを着ている海兵隊が写っていました。
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動画からのキャプチャなので不鮮明ですが、服は最初に生産されたザーコップ迷彩服として知られる、VMX/エクスペリメンタルパターンの仏軍TTA47型(より正確には、上着は軽量型TTA47/52)で間違いないと思います。この服は1957年製造スタンプが確認されているので、1957年の映像に写っている事とは矛盾しません。(過去記事『ザーコップ:ベトナム海兵タイガーの分類』参照)
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また、左袖に付いているパッチは当時の海兵隊で唯一の歩兵部隊である第1上陸大隊(Tiểu Đoàn 1 Đổ Bộ)のものです。
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この記事シリーズのPart1である『タイガーストライプの始まり』に挙げた、「1960年以降、海兵隊の戦闘服は『虎の皮(da cọp)』として知られる緑地に黒色の波の迷彩となった。」というチャン・バン・ヒェン中佐による記述から、僕はザーコップ迷彩の制式採用は1960年であり、それ以前は試験的な配備だと当ブログで書いてきました。
しかし今回の1957年の映像を含め、1950年代中に多数のザーコップの着用例が見られることから、実際には試験か制式かなんて関係無く、シンプルに1957年採用と考えた方が良い気がしてきました。
この記事を書くにあたってPart1を書いた日付を見直したら、2013年。「タイガーストライプの始まり」というテーマを掲げてから、9年もかけてようやく本当の始まりらしき部分にたどり着きました。
いや、 ジョンソンのタイガー本には最初から1957年製の写真が載っているのだから、素直にそういうものだと思ったらよかったのですが、僕は興味のある事は自分で調べないと気が済まない性格なので、納得するまでにこんなに長い年月がかかってしまいました。
2022年01月22日
シーウェーブ写経
一昨年買った香港Illusion militaria製レプリカのベトナム海兵隊ザーコップ迷彩(通称VMD/シーウェーブ)。
このレプリカ、パターンは良くできているのですが、購入当初から気になっていたように、迷彩の黒い模様の色がやたら青いのが、やっぱり気に入りません。
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このように実物のシーウェーブは色落ちしても黒の部分は黒いまま薄くなり、青みはほとんど無いもいのが多いのです。
そんなに安いレプリカではないので、どうにか手を加えてちゃんとした色にしたいのですが、逆に黒以外の色は悪くないので全体を染めるわけにはいきません。
そこで残された最後の手段が、迷彩マニア界の奥義、と言うか業深き茨の道『マジック手書き』。
これしかないのは分かっていながらも、苦行になるのは目に見えていたので、決心するのにかなりの時間を要しました。
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まず失敗した場合を考え、最悪切り取ることが可能な袖から塗り始めました。
思った以上に下地を隠してちゃんと濃い黒色になってるし、適当に塗りつぶしても塗りムラ(濃淡)が出ないので、この用途にばっちりでした。
こうして細芯で輪郭をなぞり、太芯で中を塗りつぶす作業をひたすら繰り返します。
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1日作業して左袖まで完了。上着だけでなくパンツもあるので、気の遠くなるような作業です。
なんだか子供のころにやった漢字練習帳のような、あるいは写経で精神統一しているような気分です。(やった事ないけど)
しかし、これも覚悟の上で始めた事。もう後には引けないので、ペンを追加で3本注文しました。2・3日でできるような作業ではないので、気長にやっていきたいと思います。
とは言え、呑気に押し入れにしまってしまうと、そのまま何年も放置しかねないので、この服は部屋の見える位置に置き、まだ作業が残っている事を自分に意識させたいと思います。
おまけ
先日ネットでベトナム戦争期の写真を検索していたら、見覚えのある写真が出てきました。
丸で囲った写真は2008年頃に撮った、まだ僕が茶髪ロン毛だった頃のコスプレ写真です。
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これまでもSNS上で、僕や友人たちのコスプレ写真が無断転載され、本物の戦時中の写真として拡散される事は度々あったけど、今度はアメリカのローカルTV局かよ。しかもベテランから投稿されたベトナム戦争の記憶をまとめる特設サイトで・・・。
一緒に載ってる他の写真もGoogle画像検索で出てきた写真を無断で使ってるだけっぽいし。仮にもマスメディアなんだから、ソースや権利くらい確認しなさいよ・・・。
僕は自分のコスプレ/リエナクト写真はリエナクトであると明示したうえで公開しているので、それを他人が勝手に転載し、本物と勘違いされようが、それは嘘と本物を見分けられないそいつらが間抜けなだけなので知ったこっちゃないというスタンスなのですが、さすがに今回は(いい加減なサイト制作者はともかく)ベテランが関わったまじめな企画のサイトなので、運営者に「その写真は私が日本でコスプレしてる写真ですよ。」とメールを送りました。
5日経っても返事はなく、サイトもそのままですが・・・。
僕は趣味としてできる限りリアルなコスプレ/リエナクト写真を作る事を追及していますが、そんなお遊びと実際の歴史研究・保存は全く別物。他人の写真を(大半はSNSでのイイネ欲しさに)ソースを隠匿、本物と詐称して転載する自称歴史好きの三下どもには呆れ果てています。
2022年01月02日
レプリカ海兵ベレー
※2022年1月8日更新
※2024年2月24日更新
先月アメリカのショップに注文していた3ピースベレーとベトナム海兵隊ベレー章のレプリカが年末に届いたのですが、それぞれ気に入らない部分があるので手直ししました。
まずはベレー章。1956年~1966年頃まで使われた、兵および下級下士官(二等兵~一等下士)用です。
(ベレー章の変遷については過去記事『ベトナム海兵隊のインシグニアについて:ベレー』参照)
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しかしこのレプリカ、八角形なのはまだ許せるにしても、刺繍の中心がずれていやがる。
モール刺繍部分が良くできているだけに勿体ないです。
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なので一旦バラして中の八角形の芯を外し、中心が合うように新しい円形の芯を入れて接着しました。
次にベレー本体ですが、こちらは1950年代から1960年代前半に多く用いられた3ピース構造で、全体的な雰囲気はとても良いのですが、なぜかサイズを絞るリボンが付いていません。
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仕方ないので針金を曲げて作った紐通しで、スエットバンドの中にリボンを通しました。
こうして海兵ベレーが完成。
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当時の着用例
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おまけ:最近見つけたスタイリッシュ海兵
①いろいろと変
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▲年代不詳なものの、階級章は1967年以降のタイプ
本来左袖に付ける海兵隊の部隊章(SSI)をベレーに付けてる中佐。しかもベレーは通常とは逆の左立て(英米式)。
さらに本来右胸ポケットに付けるはずの海兵隊胸章(1966年タイプ)も左胸という規定ガン無視状態。
さすが中佐ともなると叱る人が居ないのでやりたい放題といったところでしょうか。
②イキるとはこういう事
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▲年代不詳なものの、徽章・ネームテープから1971年頃と推定
情報過多なので箇条書きにします。
・ベレー章は非公式な小型の金属製バッジ
・ベレー章の下に下士(伍長)の布製階級章。襟用か?
・ネームテープはベトナム語をフォネティックコード表記したもの(SƠN→SOWN)
・名前の後ろに大隊中隊番号の「3」(非公式だが稀に使用例あり)
・迷彩服はテーラーで大幅に改造された2ボタンポケット+ジッパーポケット
もうこれ以上のオシャレ海兵は見つからないと思います。
もしこれが現代の軍装コスプレだったら、僕は「こんなやり過ぎの改造軍服ありえない」と非難するでしょう。
それくらい、一枚の中にいろんな要素が濃縮されている写真でした。
2021年12月08日
ザーコップ:ベトナム海兵タイガーの分類
※2021年12月11日更新
※2021年12月18日更新
※2024年2月24日更新
ホアン・トゥウン 「海兵隊顕彰歌 (Bản Hùng Ca Thủy Quân Lục Chiến)」
ベトナム海兵隊の制式迷彩であるザーコップ(Da Cọp)は、その派生であるタイガーストライプ迷彩に多くのファンがいることから、タイガーストライプの一種としてマニアによって研究・分類が行われてきました。
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【特殊な例:TAP47】
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もちろんこのブログでも過去に何度かザーコップについて取り上げてきましたが、それらはザーコップという迷彩が最初に導入された時期についての考察であり、以後十数年の間に起ったパターン・カットの変遷についてはまだ取り上げていませんでした。と言うか、僕自身分かっていない部分が多くありました。
そこで詳しい先輩コレクターに教えを乞いながら、ザーコップについて自分なりにまとめを作ってきました。そしてある程度で発表できるボリュームにまとまったので、ここに記します。
なお、これらはあくまで、現時点で僕が持っている情報のまとめであり、内容は今後更新される可能性があります。
また、ご指摘や追加情報がありましたら、コメントからお知らせいただけると幸いです。
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I. パターンの分類
現在、ザーコップ迷彩の分類の仕方は人によってバラバラなので注意が必要です。
パターンの分類(計4種)
・VMS
・VMS亜種
・VMD
・レイトウォーラージ/タイランド
パターン+色で細分化した場合(計5種)
・1st: VMX/エクスペリメンタル
・2nd: ベトナムクラシック
・3rd: トランジション
・4th: シーウェーブ
・5th: レイトウォーラージ/タイランド
※色は同系列の中でも生地の生産ロットや個体の色落ち具合によって様々なので、あくまで目安。
※レイトウォーラージには「タイランド」という通称もあるが、実際には生地は韓国製、縫製はベトナムであったと考えられている。
先日僕が民間のハンティングウェアから改造したのがレイトウォーラージです。
II. カットの分類
服のカット(裁断)についても、タイガーストライプのマニアたちがVNMCタイプ1~タイプ3と分類したり、ジョンソン式分類コードがあったり、さらに日本限定で『M59』という呼び方もあったりします。
しかしこれらのカットは実際には3タイプ以上あり、また早い段階で陸軍と共通となっているので、僕はそれらの分類法は使わないようにしています。
特にM59は資料の乏しかった時代に名付けられたもので、現在では2ポケット肩当て(エポレットなし)型の上衣は1958年製が確認されています。さらに肩当てとエポレット両方を備えるカットが登場するのはボンヒュエット(ブラッドケーキ)なら1961年頃、ザーコップは1964年頃なので、M59という呼称は間違いだったことが確定しています。
そこで僕が使っているカットの分類・呼称は以下の通りです。
【上衣】
・軽量型TTA47/52: フランス軍のMle. 1947/1952 TTA "modèle allégé" (略して軽量型TTA47/52)戦闘服上衣のカット。1957年に開発された初代サーコップ迷彩はこのカットで生産された。
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・2ポケット肩当て型: 1958年にザーコップ用として登場したカット。エポレットなし。60年代初頭からは全軍共通のカーキ作戦服にも用いられる。
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・2ポケット迷彩服型: 1964年頃に登場した、肩当て型にエポレットを追加したモデル。ザーコップ以外にもERDL系などベトナム軍迷彩服の基本カットとなる。ただしカーキ作戦服には用いられない。
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・4ポケット型: 1973年頃に登場した全軍共通の最終モデル。
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・TCU型: 1973年頃に登場した、米軍TCUを模したカット。こちらも4ポケット型と同じく全軍共通。TCU型には複数のバリエーションが存在するが、海兵隊では特に隠しボタンタイプが多い。
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【下衣】
・TTA47: 上衣と同じくフランス軍TTA47戦闘服のカット
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・ベイカー型: 1958年にザーコップ用として登場したカット。アメリカ軍のユーティリティユニフォームを模したベイカーポケット付き。60年代初頭からは全軍共通のカーキ作戦服や迷彩服にも用いられる。膝当てやウエスト調整ストラップは省略されている場合あり。
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・ベイカー・カーゴ型:1960年代中盤に登場した、ベイカー型にカーゴポケットを追加したタイプ。ただし使われたのは主に陸軍のカーキやERDL系であり、海兵隊での使用例は少ない。
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・カーゴ型: 1973年頃に登場した全軍共通の最終モデル。ベイカーポケットを廃止し、カーゴポケットのみとなる。カーゴポケットの形状はバリエーションあり。
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【特殊な例:TAP47】
TAP47降下服(カーキ及びリザード迷彩)はもともと、第一次インドシナ戦争中にフランス軍およびその傘下のベトナム国軍空挺部隊で用いられた戦闘服でしたが、1960年代に入るとベトナム軍では、TAP47は実用する戦闘服ではなく、フランス時代から続く空挺部隊伝統のアイコンと見做され、晴れ着・礼装として重用されるようになります。
こうして実戦で着用されなくなった事で、いつしかTAP47は「エリート部隊の礼装」と見做されるようになり、ついには歴史的にはTAP47と関係がない海兵隊も、礼装としてザーコップ迷彩版TAP47を新たに製作するに至ります。
(※第369海兵旅団長グエン・テー・ルウン大佐の着用例もありました。ただしこちらは個人で仕立てたものと思われます。)
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▲仏軍TAP47/53のカット
ただしTAP47には複数のバリエーションがあり、TAP47型ザーコップがどのタイプだったかは判別できていない。
ベトナム軍で用いられたTAP47のバリエーションについては過去記事『いろんなTAP47』参照
2021年10月28日
外注ネームテープ縫い付け
刺繍屋さんに生地持ち込みで注文していたネームテープが届きました。
実は手元には4年前にまとめて作った分がまだ残っているので、今回自分用に作成したのは4枚だけです。
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これらをネームテープ待ちだった服に縫い付け。
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その1 ベトナム海兵隊最終型ザーコップ迷彩服(TCU型)第5海兵大隊仕様
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民生ハンティングウェアから改造した服です。服の制作記はこちら
これで上着は完成しましたが、まだパンツは何も手を付けていません・・・
その2 ベトナム軍カーキ作戦服(2ポケット型)トゥドゥック歩兵学校予備士官候補生仕様
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こちらは服本体は米軍のユーティリティーユニフォームで代用し、ボタンのみクラッシファイド製に交換してあります。
部隊章、襟章は自家製です。
残るRTミシガン用のテープですが・・・
単にテープを付け替えるだけでなく、ベースの服をEA製ではなくドラゴン製にしたくなってきたので、徽章を全て移植する事になると思います。
また服本体もいじりたい箇所があるので、作ったらあらためて記事にします。
2021年08月15日
TUC型ザーコップ上着完成
前回に引き続き部品作成していきます。
TCU型ポケットのマチを作成。
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作ってみて分かったのですが、このTCU型ポケットって物凄い布を消費しますね。
普通のマチなし貼り付けポケットの2倍くらい生地を使いました。
さらにエポレット、ウエストアジャストタブも作成。
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今回ボタンホールは家庭用ミシンのボタンホール機能を使って作ったのですが、途中でミシンの調子が悪くなって汚くなってしまいました・・・
こうして揃った部品を上着本体に縫付け。
上側(胸)ポケット
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下側(腰)ポケット
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ポケットのボタンの留め方はベトナム軍が独自に簡略化したもので、原型となった米軍TCUとはかなり異なります。
今回はお洒落として、師団章と一体のペンポケットも追加。
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こうしてなんとか、上着を縫い終わりました。
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なお、インシグニアは第258海兵旅団第5海兵大隊『黒龍』という設定にしましたが、まだネームテープが準備できていないので、それが揃ったらこの服の本当の完成となります。
さて、お次はこれのおパンツを作らなきゃですが・・・
もともとジャケットとして縫ってあった本体にポケットなどの部品を付け加えるだけで済んだ上着とは違い、パンツはツナギをバラして、その下半分を通常のパンツ型に仕立て直すつもりなので、上着よりもはるかに手間がかかりそうです。
そのくせインシグニアを付ける訳でもないので、がんばって作っても見た目パッとしないというのがパンツの悲しい所。
2021年08月07日
TUC型ザーコップ
ベトナム海兵隊の第5世代ザーコップ迷彩、通称「レイトウォーラージ」パターン生地で出来た民製ハンティングスーツを素材に、海兵隊の作戦服に仕立て直す作業の進捗です。
今回はTCU型の服を作るので、過去に実物から採寸したデータを基に型紙を作っていきます。
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僕はコレクターではないので実物はほとんど持っていませんが、コレクターの友人の手伝いをしていると実物に触れる機会も多いので、その都度細部を採寸、ノートに記録してきました。
このTCU型を採寸したのは、もう5年も前の事ですが、ついに役に立つ日がやってきました。
こういうデータも、この趣味の上では立派な財産と言えるかもしれません。
ポケットの型紙と、生地素材の山
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ポケットやエポレットなど、ジャケット本体に取り付ける部品を作成
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できた部品を本体に仮置き
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おー!かなり完成形が見えてきました!
なおベトナム軍のTCU型作戦服の原型となった米軍TCUのポケットは、『外下がりフタ/内側マチ』ですが、ベトナム軍では反対に、『内下がりフタ/外側マチ』という仕様も多く見られます。
なので今回はベトナム式*TCUとして、『内下がりフタ/外側マチ』仕様で作っています。
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米軍TCUとベトナム軍TCU型作戦服のポケット比較
※ただし米軍と同じ『外下がりフタ/内側マチ』や、他にも『外下がりフタ/外側マチ』といったバリエーションも多く存在します。
2021年05月22日
最近やった作業
人民自衛団ビニールバッジ
仲間内に配布するため、ベトナム共和国軍の指揮下にあった反共民兵組織『人民自衛団(Nhân Dân Tự Vệ)』のビニールバッジの自作レプリカを量産しました。
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実物をスキャンし、印刷に適したデータに修正。プリンターで紙に印刷します。
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ホームセンターで買ってきたビニールシートではさみ、縁をローラー型ホットシーラーで溶着。
今回初めてホットシーラーという道具を使いましたが、これ簡単そうに見えて意外と難しかったです。
接着部分に当てる時間が短すぎるとちゃんと溶着せず、長すぎると表面がグチャグチャに溶けたり、切断していまいます。
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こうして出来上がったもの。左が実物、右が自作品。
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当時の使用例
人民自衛団の服装は基本的に民生品の黒シャツ/スラックス、または黒アオババ/クアン(所謂ブラックパジャマ)なので、それらの服にこのバッジを付けるだけで簡単に再現できます。
ドラゴン製ホアズン迷彩服
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先日買ったドラゴン製のホアズン(ERDL)迷彩服のボタンをクラッシファイド製ボタンに交換。
インシグニアの設定は、陸軍レンジャー部隊にしました。
赤いネームテープを付けたので第11,21,30,31,32,34レンジャー大隊のどれかという事になりますが、この服にはまだ軍団/レンジャー群を示す徽章は付けていないので、大隊も特定していません。(過去記事『レンジャー大隊識別色』参照)
レンジャー部隊は一つのまとまった部隊ではなく、各軍団の隷下に分散して配置される即応部隊でした。なので同じレンジャー部隊でも、サイゴンとフエでは、レンジャー大隊が所属する軍団/レンジャー群は異なります。
なので軍団パッチを付けるのは簡単ですが、付けてしまうとリエナクトの際にその服が着れる設定が限定されてしまうので、僕はこの服に関してはあえて軍団を特定しない事にしました。
海兵隊末期ザーコップ迷彩服作成開始
実物のベトナム海兵隊最終型ザーコップ(タイガーストライプ)迷彩服と同じ生地を使った民生ハンティングウェアが手に入ったので、これを素材にベトナム海兵隊迷彩服を自作しようと思います。
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ジャケットはそのままベースに。ツナギは上下をバラして、下をパンツに、上側を生地取りにします。
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目指すはベトナム戦争末期の1973~1975年頃に多く見られる、米軍TCU(ジャングルファティーグ)を模した裁断のタイプ。
大隊をどれにするかはまだ決めていません。
2021年04月15日
続・ベトナム海兵隊のベレー
先日の記事『ベトナム海兵隊のインシグニアについて:ベレー』でベレー章について書きましたが、その後新たな疑問と発見があったので、あらためて記事にします。
問題となったのはベトナム海兵隊が1956年~1966年頃にかけて使用した2代目ベレー章について。
2代目ベレー章には、交叉した錨の周りに月桂冠(ローリエ・リース)が有る物と無い物、2種類の意匠が存在した事が知らています。
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しかし、この二種類がそれぞれがどういった使い分けをされていたのかを明示する資料はまだ見つかっていないので、使用例が写っている当時の写真から推測するしかありませんでした。
<これまでの定説>
・月桂冠あり
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左:中尉および少尉 右:少佐
月桂冠つき徽章は、士官による着用例が多数ある。
・月桂冠なし
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月桂冠なし徽章の使用例では、階級章の着用が一例も見られず。
その為、直接的に階級は示されてはいないが、当時は兵卒が階級章を着用する事は稀であり、
逆に士官はほぼ必ず階級章を着用していたので、これらの写真は兵卒であると推測できる。
これらの例から、2代目ベレー章は『月桂冠つきが士官用、月桂冠なしが兵・下士官用である』と考えられてきましたが・・・
<疑問>
よくよく調べたら、この定説には当てはまらない新たな着用例が見つかりました。
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左:中士(軍曹/一等兵曹) 右:一等中士(一等軍曹/上級一等兵曹)
下士官、しかも階級としては下から4番目の中士までもが月桂冠つきを着用しています。
どういう事?やはり階級は関係無いのか???
<仮説>
そこで、この疑問を解決するヒントは無いかと海兵隊の徽章をもう一度見直していたところ、けっこう基本的な所に糸口が見つかりました。それは、海兵隊(および海軍)における『下士官の範囲および地位』です。
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図① ベトナム海兵隊の階級章(1955-1967年版)/作:Michael Do
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図② ベトナム海軍の階級章・軍帽(1963年版)/画像:NGUOI TIEN SU
図①のように、海兵隊の階級章は、二等兵から一等下士(伍長)までは袖に着用するV型ですが、中士以上は士官と同じ環付きになります。
また図②のように海軍の軍帽は中士以上が士官と同じ様式の下士官制帽になります。なお海兵隊の制帽は海軍と同一であるため、この区分はそのまま海兵隊にも適応されていると考えられます。
つまり、一般的には伍長/二等兵曹から一等曹長/上級上等兵曹までが下士官に分類される階級ですが、ベトナム海兵隊および海軍では、中士(軍曹/一等兵曹)からが下士官であり、諸外国では下士官に分類される下士(伍長/二等兵曹)および一等下士(一等伍長/上級二等兵曹)は兵卒(水夫)級だったのです。
また、どうも普段陸軍をメインに考えているせいで、軍隊の階級は大きく分けて『士官』と『兵・下士官』に二分されると思い込んでいましたが、海軍では下士官が担う役割がとても大きいため、二つに大別する場合は『士官・下士官』と『兵』と考えた方が良さそうです。
(よく考えたら『下士官』という言葉自体が下級の士官とい意味ですし)
という訳で、現状では2代目ベレー章の月桂冠の有無については、
・月桂冠なし:兵卒(一等下士以下)
・月桂冠あり:下士官および士官(中士以上)
という使い分けであったと解釈しています。
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2021年03月29日
ベトナム海兵隊のインシグニアについて:ベレー
2021年4月3日訂正
2021年4月15日訂正
過去記事『ベトナム海兵隊のインシグニアについて その1』および『続・海兵隊ネームテープ色』の続きです。
今回は海兵隊のベレーについて見ていきます。
ベレー章
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①丸枠付き交叉アンカー
概要:当時の海軍の紋章である交叉アンカーの意匠。1954年の海兵隊発足と共に導入。ごく初期にのみ確認できる。
使用時期:1954~1956年?
徽章の形式:モール刺繍のみ確認
②交叉アンカーのみ
概要:兵卒(一等下士以下)用。1956年の群(海兵群)への昇格と共に導入か?1966年のデザイン一新まで最も広く使われたベレー章。
使用時期:1956?~1966年
徽章の形式:モール刺繍のみ確認
③月桂冠付き交叉アンカー
概要:下士官および士官(中士以上)用。②と同時期に使用されている。詳細不明(少なくとも階級とは無関係)。※
使用時期:1956?~1966年
徽章の形式:モール刺繍のみ確認
※③の『交叉アンカー(リーフ付き)』の徽章は、当時の海軍・海兵隊の制帽用帽章とよく似た同じデザインなので、もしかしたら②は野戦用、③は正装用という使い分けがあったのかも知れませんが、まだ推測の域を出ません。
まだ史料による裏付けはありませんが、再度当時の写真を検証したところ、シンプルに②は兵下士官、③は将校用であった可能性が高くなりました。
再度検証した結果、現状では以下のように解釈しています。
④総統紋章
概要:ジエム政権末期の1963年に全軍で導入された総統紋章(竹林)がデザインされた帽章の海軍・海兵隊型。同年、ジエム政権崩壊に伴い廃止。※廃止後、ベレー章は再び②および③に戻る。
使用時期:1963年中のみ
徽章の形式:真鍮プレスのみ確認
⑤EGA
概要:海兵隊部隊章(アメリカ海兵隊のEGA=Eagle, Globe and Anchorの意匠が基)のデザインを帽章にも導入。
使用時期:1966~1975年
徽章の形式:真鍮プレス、金モール、糸手刺繍あり
⑥EGA(小型)
概要:小型のEGA型徽章。⑤と同意匠のリーフ付きタイプも存在。正式な帽章ではないと思われる。
使用時期:1966?~1975年
徽章の形式:真鍮プレスのみ確認
ベレー色
ベトナム海兵隊は元々、第一次インドシナ戦争で活躍したフランス海軍コマンド(Commandos Marine)および舟艇部隊等に所属するベトナム人兵士を、1954年にベトナム海軍の陸戦コマンド部隊として再編する事で発足しました。その為、ベトナム海兵隊のベレー色である緑色は、フランス海軍コマンドのベレー色を継承したものと言われています。
なおフランス海軍コマンド自体も、第二次大戦中にイギリス海兵コマンドの傘下で発足した事から、ベレー色および帽体を立てる向きはイギリス海兵隊の様式を踏襲しています。したがってベトナム海兵隊の緑ベレーの起源は、間接的にイギリス海兵隊にまで遡る事が出来ます。
(ただしフランス海軍コマンドでは帽体を立てる向きはイギリス式でしたが、ベトナム海兵隊では他の兵科と同じくフランス式に変更されています)
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左:イギリス海兵隊 中:フランス海軍コマンド 右:ベトナム海兵隊
しかし、こんなカラー写真が出てきてしまいました・・・
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1955年に撮影されたベトナム海兵隊将兵とアメリカ海兵隊アドバイザーだそうですが・・・
ベレー色が完全に『青』です。なんだこりゃ・・・?
当時はフランス軍にも同様の青色ベレーが存在していましたが、そちらはフランス陸軍(本土)空挺部隊のものであり、ベトナム海兵隊とはほとんど関係ありません。
そこで、あくまで推測ですが、この青ベレーを説明するため以下のような仮説を立ててみました。
・当時緑ベレーはベトナム海兵隊の中でも、元フランス海軍コマンドを中心とした歩兵部隊(当時は第1海軍歩兵大隊)の物だった
・歩兵部隊を輸送する舟艇部隊(こちらもフランス海軍舟艇部隊から独立)は写真の青色ベレーだった
・後に舟艇部隊は海軍に移管されたため青ベレーは見られなくなった
う~ん、どうでしょう。
海兵隊に限らず、1950年代後半のベトナム軍に関する資料は全般的に少ないので、この時代の解明はなかなか進みません。
しかし、それはそれで新たな発見があった時の喜びも一入なので、引き続き情報収集に努めたいと思います。
2021年02月07日
続・海兵隊ネームテープ色
最近ベトナム海兵隊のインシグニアについてまとめた記事の続きを書いていたのですが、この機会に以前『改訂版 ベトナム海兵隊のネームテープ色』に載せた大隊ネームテープ色が本当に正しいのか改めて検証した方が良いなと思い、また写真とにらめっこを始めました。
その結果、まだ完全ではないものの、確度を高める事は出来たかなと思います。
また検証する中で、以前の記事に載せたネームテープ色一覧の中には、出典に書かれていた内容は正しかったのに、僕がその内容を読み間違い、一部に誤った情報を載せていた事が分かりました。お詫びして訂正いたします。
以下、今回の検証の結果です。
確定
当時のカラー映像とその部隊を検証し、色と部隊の組み合わせが確定(自信アリ)
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当時のカラー映像は未確認なものの、資料とそれを裏付けるベテランの使用例から、色と部隊の組み合わせが確定
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未確定
当時の映像およびベテランで使用例が確認できるものの、まだ他の資料での裏付けは得られていない。
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使用例未確認
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また、これら色付きネームテープは、全ての部隊で一斉に導入された訳ではないようです。
導入時期については、現在調査中ですので、またあらためて記事にしようと思います。
2020年12月12日
ベトナム海兵隊のインシグニアについて その1
先日の記事『新作シーウェーブ』で紹介したIllusion militaria製ザーコップ迷彩作戦服にパッチを縫い付けました。
設定は1967~1971年頃の海兵師団第2海兵大隊所属の兵卒です。
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ついでに、それぞれのインシグニアについておさらいしていきます。
インシグニア① 海兵隊部隊章
僕は以前このブログで、左袖の海兵隊部隊章のデザインが普通の縦型(通称 前期型)から角ばった盾形(後期型)に変わった時期は、海兵旅団が師団に昇格した「1967年」と書いたり、いややっぱり「1970年代初頭」だったと書いたり二転三転してきましたが、ついに「1971年11月」であるという確度の高い情報が得られたので、この場で訂正いたします。
つまり、いわゆる後期型の部隊章が使われているのは、実質的には1972年以降と考えて良いと思います。
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なお、通称 前期型の部隊章が制定されたのは、海兵隊が独立した兵種となった1960年と言われ、実際1960年代のごく初期に撮られた写真にもこのパッチが写っているので、このデザインの採用自体はおそらく1960年で正しいのだろうと思います。
しかし、実はこのパッチは採用後、しばらくの間普及しておらず、採用から5年も経った1965年頃にようやく使用例が「復活」し始め、翌1966年頃から海兵隊全体で使われるようになったように見受けられます。
なので1960~1965年の間は、部隊章が存在していたにもかかわらず、その使用例はほとんど見られません。
インシグニア② 海兵隊胸章
胸章は右胸ポケットに縫い付けられるパッチです。
これは何かの部隊章や資格章ではなく、全海兵隊員が佩用する共通のインシグニアで、言わばベトナム陸軍空挺師団の隊員が左胸に付ける『天使の翼章(Huy hiệu Cánh Thiên Thần)』と似たようなものです。
そして海兵隊には、以下の2種類の胸章が存在していました。
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胸章が採用された正確な時期は長らく把握できていなかったのですが、他の研究者の方々から情報を頂き、最初に胸章が制定されたのは、1966年頃である事が分かってきました。実際、1965年以前の写真に胸章の使用例は見られません。
また最初に採用されたスクロール付きの複雑なデザインのパッチは、1966年中のわずかな期間しか見られず、遅くとも翌1967年には、よく知られている丸形のデザインに変更されたようです。
つづく