カテゴリ
News! (94)
銃器 (60)
映画 (21)
音楽 (17)
言論 (31)
民生 (4)
阮朝 (4)
人物 (34)
式典 (3)
BB/歩兵 (30)
ND/空挺 (49)
KB/騎兵 (8)
PB/砲兵 (1)
TT/通信 (3)
QV/輸送 (2)
HQ/海軍 (9)
KQ/空軍 (11)
QY/衛生 (2)
QC/軍警 (6)
軍犬隊 (1)
FULRO (12)
デガ (27)
モン族 (22)
ヌン族 (9)
本土軍 (2)
コマンド (11)
SDECE (3)
1914-1918 (5)
1918-1939 (10)
1939-1945 (24)
1945-1954 (90)
1954-1975 (486)
1975-1989 (20)

2022年02月12日

通信隊のパッチ

ベトナム戦争期のベトナム陸軍通信隊について調べていると、通信隊のパッチには様々な種類がある事が分かります。
そこでこの分野で高名な英国のコレクター兼研究者Richard Woods氏に意見を伺ったところ、さすが、氏はこのパッチの件に関してすでに大部分を把握しておられました。
なのでこの記事はWoods氏から寄せられた情報を基にしています。

まず、ベトナム陸軍通信隊の組織は1964年を境に改編されており、1964年以前は「通信コマンド(Signal Command)」と「通信局(Signal Service)」の二つの組織が別々に存在していました。

黄/黒・剣のデザインが通信コマンドで、固定局および戦術通信を担当。
白/緑・松明のデザインは通信局で、通信機器及び機材の管理を担当する兵站部隊の一部。 

▲1964年以前の通信コマンドパッチ使用例(割とレアな写真)

しかし、この通信コマンドと通信局は似通った性格を持ちながらも別々の組織として存在していたため、しばしば管轄をめぐって争いがあったため、そうした混乱を収めるために通信コマンドと通信局は1964年に一つに統合されたそうです。

そしてそれを裏付けるかのように、1964年以降の新しいパッチのデザインは、通信コマンドの図柄(電子に剣)を踏襲しながらも、色合いは通信局の緑色を基本とした、二つの組織のパッチを融合したデザインになっています。

また1964年以降の通信隊のパッチは、その形状と番号で部隊の種類と規模を表しています。

【形状】
盾型:作戦通信部隊 (Khai Thác Truyền Tin)*
五角形:支援通信部隊 (Yểm Trợ Truyền Tin)

Khai Thácは直訳すると「開拓」になるが、ここでは「作戦」と意訳しています。

【番号】
2桁:群 (Liên Đoàn)
3桁:大隊 (Tiểu Đoàn)

なので例えば、型で番号64は「第64作戦通信群」、五角形で番号631は「第631支援通信大隊」となります。

ちなみに軍事郵便局は通信隊内の組織なので、パッチの色・形状は支援通信部隊に倣っています。

▲軍事郵便局パッチ


戦闘部隊に関しては資料が豊富なため、過去記事『ベトナム共和国軍陸軍部隊一覧』に載せたようにほぼ全ての部隊を把握できていますが、通信隊をはじめ支援部隊の全体像はまだまだ未解明な部分が多いので、今後の課題としたいと思います。
  


Posted by 森泉大河 at 23:27Comments(0)1954-1975TT/通信組織・編成

2018年08月28日

ベトナム語とフォネティックコード

 今回はベトナム共和国軍のフォネティックコードについてまとめましたが、ベトナム語の文字・単語は日本語はもちろん英語とも大きく異なる独特の仕組みで成り立っているので、フォネティックコードに触れる前にまず、ベトナム語の仕組みについて簡単に説明します。


ベトナム語の文字

 まず19世紀末以降、ベトナム語を表記する文字としてはクォックグー(ローマ字)が使われています。なので日常的にローマ字を使う我々日本人にとってベトナム語のアルファベット自体は見慣れた物なのですが、ベトナム語で使われるアルファベットは英語と同じではありません。英語比べた場合、ベトナム語のアルファベットには次のような違いがあります。
・F、J、W、Zは使用しない。
・英語では使用されないĂ、Â、Đ、Ê、Ô、Ơ、Ưというアルファベットがある。これらはアルファベット声調記号を追加したものではなく、独立した一つのアルファベットである。
つまり英語のアルファベットはA~Zの26個ですが、ベトナム語の場合は以下の29個のアルファベットで構成されています。
 


 この中のA、Ă、Â、E、Ê、I、O、Ô、Ơ、U、Ư、Y12個が母音です。これらの母音にはさらに、それぞれ第1声から第6声までの6つの声調があり、声調記号(第1声は声調記号無し)と組み合わされて以下の表ように表記されます。なお子音に声調は無く、声調記号も付きません。
 この声調は外国人がベトナム語を学習する上で一番ネックとなる部分で、私自身もまだまだ使いこなせていませんが、声調というシステム自体は日本語にも英語にも存在しています。例えば日本語の「はし」は、声調の違いによって「橋」と「箸」の二つに分かれます。しかし日本語の場合は声調が多くても2~3個であり、なおかつ漢字を使う事によって一目で意味の違いが分かるため、声調記号は使われていません。一方ベトナム語の場合は声調が6個もあり、漢字も廃止してしまったため、声調記号を付加する事によって同綴異義語になる事を防いでいます。


 以上がベトナム語で用いられる文字となります。続いて単語の構成ですが、これは基本的には日本語と似たような作りで、頭子音+母音+末子音となっています。大きな違いとしては母音に上記の声調記号が付く事ですが、これは一見複雑に見えて、実は非常に理にかなったシステムだったりします。
 同じくローマ字を使う英語の場合、英語には声調記号が無いので、発音の異なる同綴異義語は、単に文字を見ただけではその発音・意味を見分ける事は出来ません。例えば「desert」という単語は声調の違いによって「見捨てる」と「砂漠」という意味に分かれますが、声調記号が無いので前後の文脈からその意味を推測するしかありません。言うなれば日本語を漢字を使わずひらがなのみで書いているような状態です。
 一方ベトナム語は一部に同音異義語があるものの、声調記号があるため、例え知らない単語であっても文字を見ればその発音が完全に理解できます。元々クォックグーは、フランス人宣教師たちがベトナム語を研究し、自分たちの文字(ローマ字)をベトナム語の発音に当てはめる事によって考案されたものなので、実は外国人にとっても非常に分かり易い文字なのです。
 一方、クォックグー採用以前にベトナム語の表記に使用されていた漢字やチュノムは、高い水準の教育を施されたエリート層しか理解できず、庶民の識字率が上がらない原因になっていました。そこに登場したクォックグーは、フランスによるベトナム植民地化によって強制的に使用が広まった面がある一方で、同時に庶民の識字率向上に大きく貢献し、20世紀中盤にはベトナム人自身が漢字を捨てクォックグーをベトナム語の正式な文字として受け入れるようになりました。 

ベトナム語の単語の作り。私のベトナム語学習ノートから


ベトナム共和国軍のフォネティックコード

 ここからが本題。フォネティックコード(通話表)とは、主に無線交信の際に聞き間違いを防ぐため、各文字に設定された読み方の規則の事です。無線に関わりがない人でも、A:アルファー、B:ブラボーといった英語を基準にした欧文通話表/NATOフォネティックコードは聞き覚えがあると思います。実際、現在では多くの国が欧文通話表/NATOフォネティックコードを採用しており、国際的な無線通信の基本通話表となっています。しかし国際的なやり取りを目的としないドメスティックな通信の場合は、国ごと、言語ごとに様々なフォネティックコードが存在しており、現在でも用いられています。
 1975年まで存在したベトナム共和国軍も独自のフォネティックコードを運用しており、その一部はオスプレイのArmy of the Republic of Vietnam 1955–75, Gordon L. Rottmanにも掲載されていましたが、この本を含め、英語で書かれた文献のほとんどはベトナム語独自のアルファベット(Ă、Â、Đ、Ê、Ô、Ơ、Ư)や声調記号を省略して英語のアルファベットで書いてしまっているので、その発音を読み取ることは出来ませんでした。
 ところが先日、ベトナム共和国軍研究家のCharlie Brown氏がベトナム語で書かれたフォネティックコードに関する詳細な情報を公開した事で、ついにその発音を把握する事が出来ました。またベトナム軍のフォネティックコードは、NATOのように単にアルファベットにコードを付加するだけでなく、ベトナム語ならではの工夫が施されていた事も初めて知りました。以下がそのまとめになります。

[1971年までのフォネティックコード]

A (アー) Anh Dũng (アンズン / アンユン)
B (ベー) Bắc Bình (バックビン)
C (セー) Cải Cách (カイカック)
D (ゼー) Duy Tân (ズイタン / ユイタン)
Đ (デー) Đống Đa (ドンダ)
E (エー) E Dè (エーゼー / エーイェー)
F Foxtrot (フォックストロット)
G (ジェー) Gay Go (ゲイゴー)
H (ハーッ) Hồng Hà (ホンハー)
I (イー) Im Lặng (イムラン)
J Juliett (ジュリエット)
K (カー) Kinh Kỳ (キンキー)
L (エンロー) Lê Lai (レーライ)
M (エンモー) Mạnh Mẽ (マインメェ)
N (エンノー) Non Nước (ノンヌック)
O (オー) Oanh Liệt (オンリェット)
P (ペー) Phú Quốc (フークック)
Q (クー) Quang Trung (クアンチュウン)
R (エール) Rạch Giá (ゼックザー)
S (エシー) Sơn Tây (ソンタイ)
T (テー) Tư Tưởng (トゥートゥウン)
U (ウー) Ủng Hộ (ウンホオ)
V (ウェー) Vẻ Vang (ヴェヴァン)
W Whiskey (ウィスキー)
X (イシー) Xung Phong (スンフォン)
Y (イグレック) Yên Bái (インバイ)
Z Zulu (ズールー)

0 (ホン)
1 (モッ)
2 (ハーイ)
3 (バー)
4 (ボン)
5 (ナム)
6 (サウ)
7 (バイ)
8 (ターム)
9 (チン)

※括弧内のカタカナは便宜的にふったもので、実際のベトナム語の発音を日本語の50音で正確に表記する事はできない。
F, J, W, Zはベトナム語では使われないためベトナム語読みは存在しないが、軍ではNATOフォネティックアルファベットが充てられている。
Dは北部の発音では日本語の「ザ行」に近い音だが、南部の発音では「ヤ行」の発音をする。

 上記が1971年まで長年に渡って使用された基本的なフォネティックコードとなります。アルファベットは英語/NATOフォネティックコードと同じA~Zを基本としており、本来ベトナム語では使用されないF, J, W, Zも、NATOフォネティックコードを当てはめてる事で使用されています。一方、ベトナム語独自のアルファベット(Ă、Â、Đ、Ê、Ô、Ơ、Ư)はほとんどが省略されており、Đのみが採用されています。また声調記号は存在しませんでした。
 とことが、似たような単語が多く、正確に発音しないと会話にならないベトナム語の特性上、やはりベ無線通信にはベトナム語独自のアルファベットと声調記号が必要だったようで、これらは1971年初頭に新たに制定され、既存のフォネティックコードに追加される事となります。
 ただし、新たに追加されたアルファベット(Ă、Â、Ê、Ô、Ơ、Ư)は、これまでのアルファベットのように頭文字が同じ単語を新たに設定するのではなく、複数個の既存のアルファベットを組み合わす事で表現する方式となりました。これは、Ă、Â、Ê、Ô、Ơ、Ưが全て母音であるため、その母音を頭文字とする単語が少ない、また存在しなかったためだと思われます
 また5つの声調記号にはL、S、X、R、Vという既存のアルファベットが新たに割り当てられ、単語の最後に追加されます。L、S、X、R、Vは通常のベトナム語では末子音に使用されない文字であり、一目でそれが声調記号を示すものだと分かるようになっています。

[1971年に追加されたコード]

ベトナム語 アルファベット フォネティック・アルファベット における表記
Ă (アー) AW
 (アー) AA
Ê (エー) EE
Ô (オー) OO
Ơ (オー) OW
Ư (ウー) UW
ƯƠ (ウオ) UOW
声調
第2声 (フエン) L
第3声 (サック) S
第4声 (ホイ) X
第5声 (ンガー) R
第6声 (ナン) V

これによって、少々複雑ではあるものの、ベトナム語の単語のスペルを声調記号まで正確に伝達できるようになりました。以下、それぞれの単語をフォネティックコードに変換した例になります。
TUẤN TUAANS (トゥートゥウン・ウンホオ・アンユン・アンユン・ノンヌック・ソンタイ)
THỌ THOV (トゥートゥウン・ホンハー・オンリェット・ヴェヴァン)
PHƯỚC PHUOWCS (フークック・ホンハー・ウンホオ・オンリェット・ウィスキー・カイカック・ソンタイ)
PHƯỢNG PHUOWNGV (フークック・ホンハー・ウンホオ・オンリェット・ウィスキー・ノンヌック・ゲイゴー・ヴェヴァン)
BẮC BAWCS (バックビン・アンユン・ウィスキー・カイカックソンタイ)
VĨNH VINHR (ヴェヴァン・イムラン・ノンヌック・ホンハー・ゼックザー)

 一見、非常に複雑でまどろっこしい方式に見えますが、当時はこれ以外にスペルを音声で正確に伝達できる手段はなかったようです。ベトナムは単語だけでなく地名にも似たような名前が多いですから、作戦を円滑に進める共に友軍や民間人への誤射・誤爆を防ぐ上でも、単語を正確に伝達する事は軍にとって非常に重要な課題だったと思われます。

  


2014年03月24日

ベトナム共和国軍の部隊コードネーム

映画などを見ていて、兵隊さんたちが「こちらブラヴォー4!エコー1応答せよ!」とか言ってるのカッコ良いですよね。
僕もベトナム共和国軍(南ベトナム軍)リエナクターとして当然、無線交信をコードネーム(コールサイン)使ってやりたいのです。

  続きを読む


Posted by 森泉大河 at 01:54Comments(3)1954-1975TT/通信