2019年09月01日
キム大尉からの頼まれごと
以前、『草書との戦い』で、漢字から英語への翻訳依頼にお応えしたハワイ在住のキムさんから、また翻訳を頼まれました。
今度は草書じゃないので楽勝だと思ったら、意外な落とし穴があったので、これはこれで、また苦労がありました。
と、その前に、このキムさんはウェストポイント卒の元アメリカ陸軍大尉で、ベトナム戦争中はMACVに所属し、ベトナム軍レンジャー部隊付きのアドバイザーを務めていました。また戦後は著名な徽章コレクター・研究者として、ミリタリー趣味の世界でも活躍されています。
またキムさんは出自がコリアン・アメリカン(大戦前にご両親が、当時日本領だった朝鮮からハワイに移民したようです)なので、朝鮮語・ハングルもある程度理解する事が出来ます。
そして今、キムさんは趣味・研究対象として、朝鮮戦争中の韓国遊撃軍について調べていおり、その中で韓国で出版された資料を入手したのですが、この本はおそらく朝鮮戦争を経験したベテラン向けに編纂された本なので、1970年代以前に使われていた漢字交じりの韓国語(今ではほとんど漢字は廃止されている)で書かれていました。
ハングルが読めるキムさんも、さすがにアメリカで漢字を学習する機会は無かったので、今回も僕に翻訳依頼が回ってきました。
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とりあえずこのページをお願いされました。
そして途中面倒くさくなってしばらく放置しながらも、なんとか今日、全ての漢字を英訳し終わりました。
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この時代の韓国語にはまだ、日本統治時代に使用されていた日本語の影響が残っていたからか、僕でも簡単に理解できる単語がけっこうありました。(日本語の影響と言うより、単に中国からの同じ輸入語だっただけかもしれないけど)
ただし、朝鮮は元々、古代から漢字を使っていた国(ハングルは李氏朝鮮時代になって創作された新しい文字)なので、日本語的解釈では意味を理解できない漢字も時々あり、中国語の辞書を調べたら意味が分かったという例も幾つかありました。
でも、一番面倒くさかったのは「地名」です。上で述べたように今の韓国ではほとんど漢字が使用されていないため、漢字表記の地名をインターネットで検索しても、全てがヒットするわけではありません。
最終的に、なんとかほとんどの地名を英訳(ローマ字表記)する事が出来ましたが、「大唾鴨島」と「椒島」のローマ字表記は分からず終いでした。たぶん、ほとんど外国と関わる事の無い小さな島なのでしょう。
キムさんは、コリアン・アメリカンの米軍将校という事で、ベトナム戦争時代から韓国軍人と交流があるので、今でも時々韓国を訪れて、朝鮮戦争に従軍した韓国軍ベテランから直接当時の事を聞き取りしているそうです。研究者としては最高のポジションですね。
ただキムさん、余生をより楽しむため、最近息子さんと一緒にハワイで金の採掘を始めたところ、採掘中に崖から落ちて大怪我して入院する羽目になってました。いくら元エリート軍人だからって、もう無理はせんといてください!彼が今書いているベトナム陸軍レンジャー史の本が出版されるまで、生きていてもらわなければ困ります(笑)