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2015年08月01日

安保関連法案

 遅ればせながら、安倍政権が強行しようとしている『他国の紛争への軍事介入』を目指す法案に反対する署名に一筆加えさせて頂きました。本当はデモにも参加したかったんですが、機会が無かったので、以下に本法案に対する私の考えを述べます。

 まず日本への直接的な脅威なら、現行の法律と日米安保で対処出来ています。今でこそ中国や北朝鮮への警戒が求められていますが、それ以前に日本は冷戦下の50余年、ソ連による侵攻を警戒して長年法整備と自衛隊の増強を行ってきました。その中で、もし時代にそぐわない法律上の不備が出てきたのなら、その部分を改正すればいいだけの話。それなら国民の理解だって得られたでしょう。誰も自国を防衛する事に反対している訳ではありません。

 しかし自民党・公明党はそれをせず、あくまで『外国軍への自衛隊の戦力提供』に拘っています。戦力の提供とは、つまり自衛官の命、そして日本国民と国家の命運を外国に提供する事に他なりません。

 自衛隊は、法律上の位置づけはともかく実質的には軍隊です。その任務は、災害派遣等でいくら良いイメージを得ようとも、本質的には軍事力によって敵軍を排除する事を本分としています。これは同時に、戦時においては外国軍が自衛官を殺害する事が国際法上認められていることを意味します。武器を持って戦えば、こちら側も殺されて当然という構図になるのです。さらに相手が国家ではなくテロリストの場合、攻撃対象は自衛隊だけなく日本国民全体という事になります。

 まして、それが外国に赴いて戦った場合、現地の人々にどう思われるか。こちら側がどんなに「これは自衛の為に仕方なくやってるんです」と言っても無駄ですよ。外国軍隊が国内に攻め込んできた時点で、それは侵略者としか受け取られないんです。一発でも引き金を引いてしまえば、その時点で相手が不法なゲリラだろうが何だろうが関係なく、敵対勢力には『侵略者による我が国民への殺戮』として宣伝材料にされてしまいます。ベトナム戦争におけるアメリカ軍、韓国軍しかり。日中戦争における日本軍しかり。それが事実かどうかに関係なく、一度ついてしまった汚名は何十年経っても消せないという事を、我々はよく知っているはずです。

 2003年に始まった自衛隊イラク派遣も、アメリカ軍に家族を殺されたイラク人から見れば、日本もアメリカの同盟軍という事に変わりはないでしょう。それでも、たまたま当時ゲリラ側の規模がまだ小さく、自衛隊に攻撃を行わなかったため一人の死傷者も出さずに済みました。もしかしたらイラク人側も、日本は人道支援のみでイラクを占領統治する意図はない事を分かってくれていたから、幸いにも攻撃対象にならずに済んだのかもしれません。

 しかし今後は、日本は『自衛』を名目に同盟軍と共同で戦争を遂行する事が可能になります。いわゆる集団的自衛権ってやつですが、そもそも自衛という言葉自体、いくらでも拡大解釈が可能なもので、一体どこまでが必要最小限なのか、一切決まっていません。

 参考までに、アメリカ、韓国、オーストラリア、タイ王国がベトナム戦争に参戦した名目は、集団的自衛権の行使です。冷戦下では、戦争をしてでも同盟国を支援し共産圏の勢力拡大を防ぐという事は、必要最小限の自衛行為と考えられていました。幸いにも日本には憲法9条があったためベトナムに自衛隊を派兵せずに済みましたが、それでもアメリカの同盟国として物資・サービス面でアメリカの戦争遂行を強力に支援していました。

 また、310万人の日本国民の命を奪ったあの忌々しい太平洋戦争も、戦時中はあくまで自衛の為の戦争と宣伝されていましたよね。こんな小さな島国が、アリューシャンからシドニー、ハワイからインドという気の遠くなるような広大な地域を欧米から奪取して大東亜共栄圏(=日本による経済支配圏)を構築しようなどという無謀な政策が、自衛の為のやむを得ぬ措置と真面目に考えられていたのが、つい70年前の事です。そしてその結果、日本軍の侵攻によって数百万人のアジア同胞が死に追いやられたという事実は、我が国の歴史に拭いがたい汚点として永遠に残ってしまいました。

 日本軍を恨んでいるのは国策で日本を非難している中国・韓国だけではありませんよ。日本人から親日国だと思われているタイやミャンマー、ベトナムも、彼らが好いてくれているのは『戦後』の日本であって、戦時中の日本軍への恨みは今だに根深いものがあります。実際僕もタイ人やベトナム人の友人から、日本軍の蛮行について耳の痛いことを聞かされます。日本で保守を自称する方々は、このような自身にとって気持ちの良くない『反日』には耳を貸さず、それどころかインドネシア一国の例のみを見て『日本はアジアを欧米植民地支配から解放した』などという妄想に浸っている方が多いようですが、今でもタイやミャンマーの日本軍墓地に現地の人々が落書きや破壊行為をしている現状を見れば、日本があの人たちに何をしてしまったのかが見て取れます。

 また日本国民にとっても、数百万人の若者が徴兵され上官に殴られ続け、見知らぬジャングルの奥地に送られ、救うはずのアジア同胞を死体の山に変えてしまい、最後は弾薬も食料も無く飢え死に。かつ本土防衛すら満足に出来ず米軍の無差別爆撃により数十万人の女子供が生きたまま焼夷弾や原爆で焼き殺される。そして最後は無条件降伏し、国の全てを敵国の采配にまかせる占領下に。これが70年前に日本政府が行った政策の結果です。

 この過去の我が国の愚行の根底には、国民個人の幸福よりも全体の秩序(という名目の権力者の権益)を優先する、権威主義がありました。お上の言う事は黙って聞けというものです。この日本の愚かな慣習は、不幸中の幸いで日本を占領統治したアメリカが自国の民主主義を新生日本国憲法に反映してくれたお陰で、制度上は国民主権の国家へ成長することが出来ました。

 にも拘らず、安倍政権は戦後70年経った今日、再び国民の命を掛け金にした危うい軍事ゲームに参加しようとしています。自衛官の命も国民の命も、自身の理想(妄想)の為には『やむを得ない犠牲』なのでしょう。こういう輩は国が滅んだら責任とって腹を切るつもりなんでしょうが、こいつが腹を切ったところで死んだ人間は何も報われません。失った国の名誉も何も帰ってきません。最初から最後まで単なる独りよがりの自己満足です。

 そんな連中に、自分の生まれ育ったたった一つの祖国をオモチャにされてたまるか。例え今国会で法律が成立してしまったとしても、私は生きている限りこの法律の廃止へむけて各方面の方々に協力していきたいと考えています。




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この記事へのコメント
> 現行の法律と日米安保で対処出来ています

この部分について、具体的にお聞かせいただけないでしょうか? 
それと法案に関しては、米政府内で法案成立に同意を示しているだろうという意見がありますが、
そのあたりについてはいかがでしょうか、与党のことについては記事内で言及されていましたが、
日本政府は米国側に何という反応を示すのが妥当だとお考えでしょうか? 

> 実際僕もタイ人やベトナム人の友人から、日本軍の蛮行について耳の痛いことを聞かされます

この部分について、具体的にお聞かせいただけないでしょうか、
それからそれらの話が、デマや誤解、誇張にもとづいていない話かどうか検証できるか検討したいと思っていますので。
Posted by 黒子 at 2015年09月14日 19:32
>黒子さん
こちらの記事に詳しく記述させて頂きましたのでご確認下さい。
http://ichiban.militaryblog.jp/e694970.html
Posted by タイガタイガ at 2015年09月16日 23:28
今でもタイやミャンマーの日本軍墓地に現地の人々が落書きや破壊行為をしている現状を見れば、日本があの人たちに何をしてしまったのかが見て取れます。

 以前、ビエンホア国軍墓地に関して、「このように死者の眠る場所を冒とくし、あまつさえ全ての墓標を破壊し全て無かった事にしてしまうなどという行為は、どんな大義名分があろうと『悪行』以外の何者でもありません。」

と書かれていましたが、日本軍は悪党共だから、墓を破壊されて当然だが、南ベトナム兵は、悪の共産党に立ち向かったヒーローだから、墓荒らしは、許されないと言う事ですか?
 対戦末期にタイ政府が連合軍に内通したり、主権を取り戻す為に対日一斉蜂起を計画したり。英軍に加わった、ミャンマー人が撤退中に大発を撃破され河に投げ出された日本兵を、魚雷艇の上から槍で突き殺したり、逆に日本軍が、対英協力の報復にミャンマーで村人を皆殺しにしたりしたのも、事実ですが。一方で、タイやミャンマー人の、協力で大勢の日本兵や民間人が生きて日本に帰れたのも事実です。

 墓荒らしを現地人の日本軍への怒りの表明という民意扱いは、かえって現地人に失礼だと思います。今でも、日本軍連合軍双方の墓地を熱心に管理してく出さっている、現地人や、日本人もいますし、慰霊祭や遺骨発掘も、現地の人々の協力があってこそ成り立っています。
 これらの事例をもって、現地人が日本軍を恨んでいるなんて嘘だ、などと、戯言を言う気はありませんが!大多数の現地人は、墓荒らしや、死者への冒涜に怒り、恥ずべき事だと、捉えていると思います。
 
 
 
Posted by (;;) at 2020年11月17日 23:45
(;;)さん
記事を読んで下さりありがとうございます。そういった矛盾への指摘は歓迎です。
まず、海外の日本軍墓地についてですが、「見て取れます。」とは言いましたが、それを「墓を荒らされて当然」という意味に解釈されるとは意外でした。私も日本人ですので、そのような破壊行為を見聞きするのは大変不愉快です。また日本軍に限らず、全ての墓地が冒涜される事はあってはならないと考えています。
ただし同時に、日本軍が行った戦争犯罪や非道な徴用については、それらは我が国の名誉を汚すものとして大変恥じており、自国軍だからと言って弁護する気は全くありません。
心ある現地の人々が墓の管理等をして下ってることは本当にありがたい事ですが、例え現地人が過去を許しても忘れても、我々日本人自身は、自国が行った過ちを決して許してはならないと考えています。それが「見て取れます。」の真意です。

また私が日本軍墓地と南ベトナム軍墓地への破壊行為を同列に扱っていないのは、上記のように日本人として自国の歴史を厳しめに見ている面もありますが、何より決定的に異なるのは、それを行っているのが民間人か、その国の政府であるかという点です。
民間人が行う場合については、それが不法かつ不道徳なものであっても、少なくとも何らかの権力に強制された行為でないなので、その人自身の自発的な意思であると言えます。そしてその行為は決して許されるものではありませんが、私自身は加害者(とされる)側の国に生まれた人間ですので、被害者(だと思っている人々)を表立って非難することはしません。何を言っても感情論で非難の応酬になるだけなので。
一方、南ベトナム軍墓地への破壊は、暴力で政権を簒奪したベトナム共産党が、旧南ベトナム軍人およびその家族への報復と、歴史修正のために組織的に行った事であり、その意味は全く異なる物です。
もちろんベトナムの民間人の中にも、旧サイゴン政府に対する怨念は少なからずあります。なので、もしあの墓地への破壊が民間人によってのみ行われたものであるなら、サイゴン政府を恨む人々の心情も分からなくはないので、そこまで強く非難する事はしません。
しかし実際には、あれは現ベトナム政府が政治的な意図をもって破壊に及んだものであり、これは私が南ベトナム好きがどうかに関わらず、強く非難されるべき蛮行であると考えます。
Posted by 森泉大河森泉大河 at 2020年11月19日 19:22
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