2015年11月11日
訂正、そして深まる謎

過去記事『ベトナム戦争期のAR-15』で、僕はXM16E1について以下のように書きました。
【2015年6月19日訂正版】“まず、XM16E1に(マガジンキャッチの)ガード付きロアレシーバーが使われた可能性というのは、100%ありえません。※ロアレシーバーは単なる構成部品ではなくシリアルナンバーが入る銃本体という扱いであり、本体がM16A1用のガード付きロアレシーバーである以上、XM16E1にはなり得ません。”
しかし、この認識を覆さざるを得ない資料というか現物が出てきました。
ロアレシーバーのマガジンキャッチガードは1967年に制式採用されたM16A1から付くはずのものなのに、掲載されているこの個体のロアレシーバーにははっきりと『XM16E1』と刻印されています。
(※フラッシュハイダーやストックは70年代以降のM16A1の物が付いているので、銃全体がオリジナル(メーカー出荷状態)という訳ではないと思います。)
過去記事でも書いたように、ロアレシーバーは単なる部品ではなく、シリアルナンバーが入る銃の本体部です。(そのため米軍において、ロアレシーバーには交換用の部品番号(FSN / NSN)が存在しません。)
なのでフラッシュハイダー等のあとでいくらでも交換できる部品とは違い、ロアレシーバーに関してだけは製造時の刻印が決定的な証拠になります。
無理矢理疑えば、コルトの工場で間違った名称が刻印された可能性が100%無いとも言い切れませんが、政府に納入する兵器でそんなミスが起こるとは考えづらいので、この線は多分無いでしょう。
なのでこのロアレシーバーは、まぎれもなくXM16E1として生産されたものと言えます。
シカゴレジメンタルスさんの商品HPにも、以下のように記載されていますね。
“本品のマガジン・ハウジング右前方にはM16A1になる際に改良されたリブが付いています。 通常のXM16E1にはこのリブが付いておらず、マガジン・キャッチのボタンが不注意に押されてマガジンが落脱することがありました。 XM16E1の刻印が同じマガジン・ハウジング(左側面)に打たれているので、このようなモデルも存在した証拠とも言える希少品です。 ”
こんなものが存在したなんて、本当にびっくらこきました。
僕は今まで、それなりにコルトや米軍の資料を集めてきたつもりだったので、自信を持って「100%ありえません。」と断言してしまいましたが・・・ありえちゃいました。ゴメンチャイ
まぁ現状で確認できているのはこの個体のみなので、これは多分生産ラインがM16A1に移行する1967年ごろに発生したレア中のレアケースなんだと思いますが・・・
そういう他の資料で裏取れない、でも実在するって、困るんだよなぁ。知ってしまった以上、無視する訳にもいかないし。
またひとつ、大きな謎が増えてしまったでござる。
この件に直接関係あるかどうかは分かりませんが、1967年にM16A1が制式化されたに際は、その仕様変更についていろいろ混乱があったようです。
分かり易い例が、あの有名なM16A1の現場配布用パンフレット(正式なマニュアルではない)の1967年オリジナル版に載っているイラスト

イラストなので全ての仕様を鵜呑みにする訳にはいきませんが、少なくとも1967年の時点では、M16A1には同様の円筒ハンドガードが搭載される事になってます。
この円筒ハンドガードはXM16E1の改良を目的として開発が進められ、1966年にはスプリングフィールド造兵廠にて試験が行われていました。
おそらくその時点で改良型XM16E1(M16A1)には円筒ハンドガードを使う方向で話が進んでいたので、上記のパンフレットもそれに沿ってイラストを起したのではないかと推測しています。

しかしテストの結果、この円筒ハンドガードは連続射撃時の耐熱性に難があると判断され、結局M16A1の仕様に組み入れられることはありませんでした。
(ただしショートバレルモデルの円筒ハンドガードはXM177 / XM177E1に採用された)
そしてパンフレットのイラストも、陸軍省発行の改訂版では修正されています。
(修正されたのはハンドガードだけ。ロアレシーバーはXM16E1の形状のまま載っている)

おまけ
過去にもチョロっと載せたけど、ロアレシーバーつながりで面白い画像

ベトナム戦争期にGMハイドラ・マチック・ディビジョンで生産されたM16A1のロアレシーバーが、刻印打ち直されて無理矢理M16A2に使われてるの図


1959年開発のアーマライトAR-15/コルトModel 01のロアレシーバーが、アメリカ空軍でいつまでも使いまわされてるの図
(空軍では部品ごちゃ混ぜは普通なので、本来M16ではないAR-15のロアレシーバーがベースだったとしても"M16"として扱われる)
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