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2025年05月08日

ベトナム軍の狙撃兵と狙撃銃

同時期の米軍と異なり、ベトナム共和国軍におけるスナイパーは規模がかなり少数かつ情報が少ないのですが、今わかっている範囲で情報をまとめました。


【ベテランの証言】

・第81空挺コマンド群ベテラン
1973年当時、第81空挺コマンド群を構成する各強襲中隊には、中隊ごとに1名(1組?)のスナイパーが居た。
彼らはスコープ付きのM1ライフルもしくはM14ライフルを使っていたよ。
(ここで言うM1はM1C/D、M14はXM21の事と思われる)

・スナイパーを戦友に持つベトナム軍ベテラン
私の友人はベトナム軍からアメリカ陸軍LRRP/レンジャー部隊に出向しており、そこでアメリカ軍のスナイパー訓練コース『スナイパー・レベル1』を修了し、LRRP/レンジャー部隊でスナイパーを務めたよ。銃はXM21スナイパーライフルを使っていたそうだ。
その後、1973年にアメリカ軍が撤退すると、彼はベトナム軍に戻ってNKTコマンド雷虎に転属し、そこでもスナイパーを務めたそうだよ。

・第5歩兵師団ベテラン
私は第5歩兵師団第8連隊第1大隊に6年間所属していたけど、その間狙撃銃なんて一度も見た事はないよ。


【伝聞】

レ・バン・ゴン中佐指揮の下、敵に包囲されたキャンプ『トン・レ・チャン』を約500日間防衛し続けた第92国境レンジャー大隊では、キャンプ外周にスナイパーを配置し、夜間の防御及び攻撃の支援を行った。
(第92国境レンジャー大隊は、元々LLĐBの指揮下にあったCIDGトン・レ・チャンCSFをレンジャーに編入した部隊であり、兵士のほとんどは元CIDGの少数民族でした。CIDGは基本的に民兵に近い地方部隊であり、スナイパーのような高度な訓練を受ける機会が無かったため、第92国境レンジャー大隊でスナイパーを務めたのは部隊を率いる元LLĐBまたはレンジャー=正規のベトナム軍人かも知れません)



このように、エリート部隊や特殊部隊では一定数のスナイパーが存在したようです。
一方、軍の大多数を占める一般部隊ではスナイパーはほぼ皆無だった模様です。



【写真で確認できる狙撃銃】


MAS-49 (モデル1953スコープ付き)

正確にはベトナム軍ではなく、ベトナム軍空挺部隊の前身であるフランス軍植民地空挺コマンド内のベトナム人部隊(CIP)で、光学スコープ付きのMAS-49を使用するベトナム人スナイパーの存在が確認できます。
1951年にベトナム軍空挺部隊が発足すると、CIPは順次、人員・装備まるごとベトナム軍に編入されていったので、このMAS-49もベトナム軍に引き継がれたものと推察されます。
なおMAS-49自体はフランス軍の制式小銃であり、狙撃銃として開発された物ではありませんが、汎用光学スコープ モデル1953(APX L806)を搭載する事で狙撃用途にも用いられました。



M1903A4

1965年公開の『南ベトナム海兵大隊戦記』の中で、第2海兵大隊の兵士の一人がM1903A4狙撃銃を所持している事が確認できます。
(上のキャプチャー画像では不鮮明ですが、動画内では色んな角度から映っているのでM1903A4で間違いありません)



M1C/M1D


所属部隊は不明なものの、M1CもしくはM1D狙撃銃を所持している兵士の写真が残っています。
Wikipediaによるとベトナム戦争期、520丁のM1C/M1Dが米軍からベトナム軍に供与されたそうです。
しかし僕が写真で確認しているのはこの1枚のみです。



XM21

冒頭で述べたように、第81空挺コマンド群やNKTではXM21狙撃銃が使用されたという証言が複数あるのですが、残念ながらそれを裏付ける当時の写真はまだ確認できていません。



不明

この写真は1963年11月クーデターの際に撮影された海兵隊員です。
兵士本人はサブマシンガン用のマガジンポーチを身に着けているので、この銃は本人の物ではなく敵から捕獲した物かも知れませんが、サイゴンでのクーデターなので、その『敵』も同じく(ジェム総統および政府施設を警護していた)ベトナム軍または警察のはずです。

写真の銃は、トリガーガードの形状が特徴的、かつ不鮮明ですがマガジンフロアプレートらしき物も見えています。
恐らく軍用銃として知られているものではなく民間のスポーツライフルだと思われるので、フェイスブック内のハンティング/スポーツライフル愛好グループで意見を訊いてみました。
その結果、今のところマンリッヒャー・シェーナウアー モデル1950/1952 (オーストリア製)が一番似ている気がします。

(スコープおよびマウントはサードパーティー製の可能性もあるため、この際無視しています)

またその他にも、以下の候補が挙がりました。

・ブルーノ モデル21 (チェコ・スロバキア) 
・アンシュッツ モデル1422/1522 (西ドイツ) 
・レミントン モデル511 (アメリカ)

う~ん、確かにどれもトリガーガードの形状は似ているのですが、決定打に欠ける感じでした。
という訳で、この写真に写る銃の正体はいまだ謎のままです。