2025年04月25日
ラオス軍ベレー色の謎
※2025年4月26日更新

▲ラオス戦争期の一般的な陸軍将兵(1959年頃)。赤ベレーに陸軍(共通)ベレー章を着用する
これって何気に不可解な制度でして、他のインドシナ諸国、つまりベトナムやカンボジアでは陸軍共通のベレー色は黒やオリーブ色といった地味な色であり、赤は空挺部隊ないしコマンド部隊といったエリート部隊のみ着用が許される特別な色でした。
これは第一次インドシナ戦争期、フランス植民地軍空挺コマンド部隊が赤色(アマランサス色)のベレーを使っており、それが植民地軍の下で編成されたインドシナ人空挺部隊にも引き継がれたからでした。
(さらに元をたどれば、植民地軍空挺コマンドのベレー色は第二次大戦中に発足した自由フランス軍SAS、そしてフランスSASを育成したイギリス陸軍空挺部隊のベレー色が起源です)
しかしラオスに限っては、赤ベレーが空挺部隊だけでなく陸軍全体で採用されています。不思議ですよね。
僕はまだこの謎を説明する資料に出会えていないのですが、ちょっと推測している事はあります。
実は1950年代に撮影されたと思われるラオス国軍の写真に、こういうのがあります。

キャロット(サイドキャップ)が赤いんですよね。
赤色のキャロットと言えばフランス軍のスパッヒ(北アフリカ人騎兵部隊)が有名ですが、この写真はラオス人で間違いないっぽので、スパッヒとは関係無さそうです。
となると、ひょっとしてこの赤キャロットはラオス国軍独自の物だったりしないかな。ラオスって国旗が赤いせいか、徽章関係も赤色ベースが多いし。

▲アメリカから供与されたM1ライフルを持つラオス国軍陸軍の中尉(1951年)
モノクロ写真なので断言はできませんが、赤っぽい気がします。(少なくとも植民地軍の紺色ではない)
そして第一次インドシナ戦争終結後、ラオス陸軍略帽がキャロットからベレーに切り替わる際に、キャロットの赤色が引き継がれたんじゃないか・・・
と、考えてみましたが、当時のラオス国軍については写真はおろか文献すらかなり少ないので、確実な事は何も分かりません。
ちなみにラオス国軍は1960年に右派(王党・反共派)の王国軍(FAR)と、中立派(容共派)の中立派軍(FAN)に分裂し、かつての友軍同士で戦闘に突入します。
しかしどちらも自らを「正統なラオス王国政府軍」と名乗っていたので、双方とも分裂前のラオス国軍の制度を継承しており、軍装の面ではFARとFANはほとんど変わりません。(ただしFANはソ連から支援を受けてソ連製火器を装備し始める)
したがって陸軍ベレーもFARとFAN双方で同じものが使われ続けました。
(ラオス戦争期の右派・中立派については過去記事『ラオス戦争の右派・中立派勢力①1954-1965』参照)
なお、陸軍は赤ベレーで統一されていたと書きましたが、僕が現時点で把握している唯一の例外が士官学校です。
士官候補生はまだ正式な軍人ではないせいか、FAR陸軍士官学校(Ecole military preparation)では紺色のベレーが着用されていました。ただしベレー色は違いましたが、それに付くベレー章は陸軍共通のものです。

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