2022年02月12日
通信隊のパッチ
ベトナム戦争期のベトナム陸軍通信隊について調べていると、通信隊のパッチには様々な種類がある事が分かります。
そこでこの分野で高名な英国のコレクター兼研究者Richard Woods氏に意見を伺ったところ、さすが、氏はこのパッチの件に関してすでに大部分を把握しておられました。
なのでこの記事はWoods氏から寄せられた情報を基にしています。
まず、ベトナム陸軍通信隊の組織は1964年を境に改編されており、1964年以前は「通信コマンド(Signal Command)」と「通信局(Signal Service)」の二つの組織が別々に存在していました。

黄/黒・剣のデザインが通信コマンドで、固定局および戦術通信を担当。
白/緑・松明のデザインは通信局で、通信機器及び機材の管理を担当する兵站部隊の一部。

▲1964年以前の通信コマンドパッチ使用例(割とレアな写真)
しかし、この通信コマンドと通信局は似通った性格を持ちながらも別々の組織として存在していたため、しばしば管轄をめぐって争いがあったため、そうした混乱を収めるために通信コマンドと通信局は1964年に一つに統合されたそうです。

そしてそれを裏付けるかのように、1964年以降の新しいパッチのデザインは、通信コマンドの図柄(電子に剣)を踏襲しながらも、色合いは通信局の緑色を基本とした、二つの組織のパッチを融合したデザインになっています。
また1964年以降の通信隊のパッチは、その形状と番号で部隊の種類と規模を表しています。
【形状】
盾型:作戦通信部隊 (Khai Thác Truyền Tin)*
五角形:支援通信部隊 (Yểm Trợ Truyền Tin)
※Khai Thácは直訳すると「開拓」になるが、ここでは「作戦」と意訳しています。
【番号】
2桁:群 (Liên Đoàn)
3桁:大隊 (Tiểu Đoàn)
なので例えば、盾型で番号64は「第64作戦通信群」、五角形で番号631は「第631支援通信大隊」となります。
ちなみに軍事郵便局は通信隊内の組織なので、パッチの色・形状は支援通信部隊に倣っています。

▲軍事郵便局パッチ
戦闘部隊に関しては資料が豊富なため、過去記事『ベトナム共和国軍陸軍部隊一覧』に載せたようにほぼ全ての部隊を把握できていますが、通信隊をはじめ支援部隊の全体像はまだまだ未解明な部分が多いので、今後の課題としたいと思います。
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