2014年03月15日
アメリカ陸軍の狙撃銃
今回は60~80年代のアメリカ陸軍の狙撃銃の歴史をまとめてみました。
画像は主に米軍のマニュアルに載ってたものです。
.22口径 M12ライフル/レミントン モデル40X
「レミントン・モデル700をアメリカ海兵隊が採用したのが"M40"である」という簡単(不十分)な解釈がされる事が多いレミントンの軍用狙撃銃。実際には1959年にレミントンがモデル700をベースに競技用ターゲットライフルとして開発した(民生品の)銃が"モデル40X"シリーズで、そのモデル40Xの7.62mmNATO弾仕様を海兵隊が1966年に制式化した時の名称がM40ライフルとなります。(モデル40という民間の製品名をそのまま軍制式型番とした)※情報源が不確かだったので訂正
さて、そのモデル40Xですが、1959年に登場した時点でまずアメリカ陸軍・空軍に採用されました。採用されたのは口径.22LR仕様の"モデル40X-S1(ナショナルマッチ)"で、この銃には(ウィンチェスター・モデル52と共に)"M12ライフル"という制式名が付けられました。さらに後年には改良型の"モデル40X-H1(マッチグレード)"が採用されます。(ただし40X-H1にはM12ライフルという名称は付いていません) これらのライフルの口径は殺傷力の低い.22LR仕様のみで、射撃訓練および軍の射撃競技強化選手などが使用する競技専用銃でした。意外なことに、陸軍では軍用狙撃銃として必須の.30口径のレミントン製ライフルは長らく採用されませんでした。
レミントン・モデル40X-S1(ナショナルマッチ) / M12ライフル

レミントン・モデル40X-H1(マッチグレード)

この他にも陸軍・空軍では以下の22口径ライフルが採用されていました。
ウィンチェスター・モデル52/M12ライフル

ウィンチェスター・モデル52D

モスバーグ・モデル144US

レミントン・モデル513-T

.30口径 ウィンチェスター モデル70
1936年にスポーツライフルとして開発されて以来、1960年代前半までアメリカ陸軍・海兵隊で最も信頼されていた狙撃銃が、.30-06弾仕様のウィンチェスター・モデル70(スペシャルマッチグレード)でした。
ウィンチェスター・モデル70(スペシャルマッチグレード) .30-06仕様※1963年以前のタイプ。タンジェントサイト搭載

1964年、ウィンチェスター社は競合するレミントン・モデル700シリーズに対抗して、モデル70に大規模なリニューアルを施しました。この新型モデル70はボルトフェイス、エジェクター、ボルト本体などがレミントン・モデル700シリーズを意識したデザインとなっており、装填不良などの問題も改善されました。しかし装填時の操作感が変わった事、そして大幅なコスト削減が行われた事で銃器評論家や現場の兵士からは酷評される結果となりました。これに対し、モデル70を使用していた海兵隊は1966年にレミントン・モデル40XがベースのM40ライフルを採用し、ウィンチェスター・モデル70から乗り換えていきました。
しかし陸軍では廃止される事は無く、1969年に新型狙撃銃のXM21が採用されるまで、正式な狙撃銃はモデル70(マッチグレード)のみでした。さらに従来の.30-06仕様に加え、より強力な.300H&Hマグナム仕様も新たに制式化され、ベトナム戦争で陸軍の狙撃兵に使用されました。
ウィンチェスター・モデル70(マッチグレード) .30-06仕様※1964年以降のタイプ。タンジェントサイト非搭載

ウィンチェスター・モデル70(マッチグレード) .300H&Hマグナム仕様

7.62mm XM21 / M21 SWS
1962年以降、スプリングフィールド・アーモリーを初めとするM14ライフルの生産メーカーは、民間向けにバレルやボルト、レシーバーに高級鋼材を使用し、セレクターをセミオートのみとしたM14のスポーツライフル仕様、"ナショナルマッチM14ライフル"を生産していました。当時ウィンチェスター・モデル70を使用していたアメリカ陸軍は、海兵隊に遅れながらも新たな狙撃銃の採用を検討しており、そこで注目されたのがこのナショナルマッチM14でした。
陸軍は新型セミオート狙撃銃としてこのナショナルマッチM14およびART(オート・レンジング・テレスコープ)、そして通常のミリタリーボールよりも長射程・高制度な"ナショナルマッチグレード"M118 7.62mmX51弾を組み合わせた狙撃システムを"XM21 SWS(スナイパー・ウェポン・システム)"として1969年に制式化しました。(銃本体はあくまで"ナショナルマッチM14"という制式名)
ARTはART IとART IIの二種類が設定され、いずれもレザーウッド製で3-9倍可変倍率でした。また、XM21の銃(ナショナルマッチM14)のストックは、1975年からグラスファイバー製に変更され、システムの名称もも"M21 SWS"へと改称されました。
ナショナルマッチM14(M14NM)ライフル


ART I

ART II

7.62mm XM21 SWS (ART II搭載ナショナルマッチM14)

7.62mm M21 SWS (ART II搭載ナショナルマッチM14)

7.62mm M24 SWS
22口径のモデル40Xシリーズは採用していたものの、狙撃銃としては一度もレミントン製ライフルを採用しなかったアメリカ陸軍ですが、1988年にようやく本格的な狙撃システムをレミントンから採用しました。それが"M24 SWS"です。M24 SWSはM24ライフルを中心に昼間光学照準器(スコープ)、バイポッド、7.62mmNATO M118スペシャルボール弾、格納ケース、メンテナスキットなど一連の運用システムで構成されました。スコープは昼間光学照準器(Day optic sight)と指定され、"リューポルド・ウルトラM3 10倍"が使用されます。
7.62mm M24 SWS

M21 SWSを構成するライフルの名称が民間と同じ"ナショナルマッチM14"のままだったのと異なり、M24 SWSは最初から各種アクセサリーを含めた一連の狙撃システムの一部として開発されたため、ライフルの名称もM24ライフルとなっています。このM24ライフルはレミントン・モデル700の派生型として知られていますが、上記のようにあくまでシステムの一部分として開発された銃なので、レミントン社のカタログでもM24は、ライフル単体で販売されるモデル700など他のモデルとは明確に区別されています。
7.62mm M24ライフルと昼間光学照準器

7.62mm XM25 / M25 SWS
M25 SWSは、M21 SWSと同様にナショナルマッチM14にストック、スコープ、バイポッドを組み合わせた狙撃システムで、アメリカ陸軍特殊部隊および海軍SEALの要望により開発されたものだそうです。システムの仕様は、ストックはマクミラン製M1Aグラスファイバー・ストック、スコープはボシュロム・タクティカル製10x40またはリューポルドMk4 10倍スコープ、バイポッドはハリス製とされています。
M25 SWSは陸軍特殊部隊および海軍SEALによって湾岸戦争で使用されたとされていますが、資料が少なく僕はまだ詳細が把握できていません。
7.62mm XM25 SWS

7.62mm M25 SWS

これより後の世代の銃に関してはウィキペディアに(真偽は別としてw)載っているので、そちらをご覧下さい。
この記事へのコメント
はじめまして
222口径の40Xで(純正?)レットフーィルドのマイクロサイト載せて
300m立射競技に出ています、安いわりには良く当たります(中古で11万)
400点満点の328点,1シリーズ82点平均
222口径の40Xで(純正?)レットフーィルドのマイクロサイト載せて
300m立射競技に出ています、安いわりには良く当たります(中古で11万)
400点満点の328点,1シリーズ82点平均
Posted by タケサン
at 2014年03月25日 00:45

>タケサンさん
はじめまして。ブログ拝見させて頂きました。
競技者の方にご意見頂けて光栄です!
僕の叔父もビッグボアのライフル射撃やってます。(確かブローニングのライフルで口径30-06だったと思います)
40Xって222口径のもあったのですね。しかもそんなお値段で手に入るとは!
米軍の40Xも全てマイクロサイト搭載なので、まさに軍のライフル射撃選手用だったようですね。
しかし今レミントン社のホームページ見ると、40Xシリーズは法執行機関向けの308Win.仕様しかラインナップに無く、スポーツライフルという扱いではなくなってしまったようです。
はじめまして。ブログ拝見させて頂きました。
競技者の方にご意見頂けて光栄です!
僕の叔父もビッグボアのライフル射撃やってます。(確かブローニングのライフルで口径30-06だったと思います)
40Xって222口径のもあったのですね。しかもそんなお値段で手に入るとは!
米軍の40Xも全てマイクロサイト搭載なので、まさに軍のライフル射撃選手用だったようですね。
しかし今レミントン社のホームページ見ると、40Xシリーズは法執行機関向けの308Win.仕様しかラインナップに無く、スポーツライフルという扱いではなくなってしまったようです。
Posted by タイガ
at 2014年03月25日 12:57

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