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2022年02月06日

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団

その1からだいぶ時間が空いてしまいましたが、第一次インドシナ戦争中の1949年にCEFEO(極東フランス遠征軍団)の傘下で発足し、戦争末期にはフランス連合軍の総兵力の約半数を担ったベトナム国軍陸軍についての解説の続きです。


ベトナム師団(Sư Đoàn Việt Nam)

CEFEO内での呼称は『ベトナム師団(Division Vietnamienne)』。
1954年までに計8個のベトナム師団が編成され、ベトナム国の4つの軍管区に配置された。

第1軍管区(南越):第1、6ベトナム師団
第2軍管区(中越):第2ベトナム師団
第3軍管区(北越):第3、5、7ベトナム師団
第4軍管区(高原):第4、8ベトナム師団

ベトナム師団内の部隊は大隊を基本単位とし、旅団や連隊は無く、各大隊が師団の直下に置かれた。
各師団内の部隊については前記事『第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その1』参照
なお、ベトナム師団に部隊章は制定されていない。


歩兵大隊 (Tiểu đoàn Bộ Binh)

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲第1歩兵大隊 [年代不詳]

CEFEOでの呼称は『ベトナム大隊(BVN: Bataillon Vietnamiens)』。
歩兵大隊は陸軍の主力である歩兵部隊で、各ベトナム師団は9~10個の歩兵大隊を主に構成された。
歩兵大隊の発足はベトナム国軍の創設と同義であり、1949年末、当時のベトナム国副首相兼国防大臣グエン・バン・スアン(Nguyễn Văn Xuân)中将の主導により、初の国軍部隊として4つの歩兵大隊(第1~4歩兵大隊)が編成された。
その後もベトナム国軍は規模を拡大し、1951年までに24個大隊、1954年の終戦までに約70個の歩兵大隊が編成された。(編成途中で終戦を迎えた大隊も含む)
各歩兵大隊は大隊本部、指揮中隊、そして4個の作戦中隊で構成され、人員定数は将校23名、下士官110名、兵卒696名の計829名であった。
また指揮中隊の定数は将校1名、下士官30名、兵卒116名、計147名。作戦中隊は将校4名、下士官20名、兵卒145名、計169名とされた。
作戦中隊は曹長クラスを小隊長とする指揮小隊1個、将校を小隊長とする重火器小隊1個、将校または曹長を小隊長とする作戦小隊3個で構成された。
各歩兵大隊の基本的な装備は以下の通り。
・火器
拳銃30丁、MAT49短機関銃433丁、MAS36小銃624丁、擲弾発射機36丁、FM24/29機関銃41丁、M1919機関銃8丁、60mm迫撃砲8門、81mm迫撃砲4門、無反動砲4門、バズーカ12門
・車両
ジープ10輌、ダッジ10輌、GMCトラック13輌、GMC救護トラック1輌、リアフック付きLOT7(?)1輌

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲歩兵大隊の兵士 [1950年代前半]


山岳大隊 (Tiểu đoàn sơn cước)

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲国長バオダイとCEFEO司令官ド=ラトル将軍から表彰を受ける山岳大隊の将兵 [1951年バンメトート]

CEFEOでの呼称は『モンタニャール大隊(BM: Bataillon Montagnard)』。
山岳大隊はベトナム中部高原に住む山岳民族(南インドシナ・モンタニャール)で構成された歩兵大隊で、中部高原を管轄するベトナム陸軍第4師団内にのみ設置された。
最終的に9個の山岳大隊が編成され、第4師団はこの山岳大隊を主に構成された。

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲馬を連れて行軍する山岳大隊兵士 [1952年]
自動車が走行できる道路が少ない山岳地帯では馬やロバ、ゾウが物資輸送の主な手段であった。

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲1954年当時の歩兵大隊(BVN)および山岳大隊(BM)一覧


空挺大隊 (Tiểu Đoàn Nhẩy Dù)

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲第3空挺大隊 [1954年ニャチャン]

CEFEOでの呼称は『ベトナム空挺大隊(BPVN: Bataillon de Parachutistes Vietnamiens)』。
ベトナム陸軍が保有する空挺部隊。1951年の第1空挺大隊発足を皮切りに、1954年までに計5個大隊が創設され、おおむね各ベトナム師団に1個空挺大隊が置かれた。
ベトナム国軍のスローガン『保国安民(Bảo quốc An Dân)』の略『保安(Bảo An)』から転じて、ベトナム空挺大隊はフランス軍から『バオアン(Bawouan)』の異名で呼ばれた。


偵察車支隊(Chi Đoàn Thám Thính Xa)

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
偵察車支隊将兵 [雑誌『インドシナ』1952年4月号より]

CEFEOでの呼称は『ベトナム偵察戦隊(ERVN: Escadron de reconnaissance Vietnamiens)』。
偵察車支隊はベトナム国軍の機甲偵察部隊で、おおむね各ベトナム師団に1個の偵察車支隊が置かれた。
最終的に計10個支隊が編成され、そのうち6個は1951年から1954年の間にベトナム国軍によって新設され、4個支隊はフランス植民地軍から国軍に編入された部隊であった。

第1ベトナム師団:第1偵察車支隊
第2ベトナム師団:第2偵察車支隊
第3ベトナム師団:第3偵察車支隊
第4ベトナム師団:第4偵察車支隊
第5ベトナム師団:第5偵察車支隊
第6ベトナム師団:第6偵察車支隊
第7ベトナム師団:第7偵察車支隊
未確認:第8、10、11偵察車支隊

主な装備はフランスから供与されたアメリカ製のM8装甲車であったが、1954年にはフランス軍からM24チャーフィー軽戦車が供与され、偵察車支隊内にベトナム陸軍初の戦車部隊が設立された。

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団
▲フランス人将校から表彰を受けるベトナム陸軍M24戦車部隊 [1954年]


出典



おまけ

けっこう前から、第一次インドシナ戦争期にフランス連合軍で広く使われたMle1937/1946防御用手榴弾、通称DF37/46の自作を試みているのですが、まだ形になりません。
当初は3Dプリンターで作ろうと思っていたので3Dデータはとっくに出来上がっているのですが、手榴弾って意外と大きいので、見積とったらすごい値段になってしまいました。それではちょっと割に合わないので、そのまま注文はできません。

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団

なので形状がシンプルな弾体部分だけでも手作業で作ろうと思い、パテや樹脂粘土なので粘土細工をしてみたのですが、ぜんぜん上手くいきませんでした。なんかいびつな形のジャガイモが出来ただけです。ろくろがないと無理ですわ。

第一次インドシナ戦争期のベトナム陸軍 その2: ベトナム師団

そこで手作業は諦め、木工所に依頼して木材で作る方法も考えたのですが、やはり一つ一つ手作りなだけあって、見積価格は3Dプリンターとほぼ同じ。コストダウンにはなりません。
なので今はDIY用のレンタル作業場を借りて、そこの木工旋盤か3Dプリンターを使う方法を考え中です。
このDF37製作は思ったより大変な道のりになったので、そのうち改めて記事にしたいと思います。




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