2014年02月17日
ECWCSのトラウマ
もう10年も前の話ですが、当時高校生だった僕は、部活動でワンダーフォーゲル部(実質登山部)に所属していました。

入った理由は、なんか山登りが軍隊っぽくてカッコ良かったからw
そんな動機なので登山用の装備もそっち系で、健全なスポーツ活動の中、一人異臭を放っていました・・・

普通は入部すると新入生全員で池袋の登山用品店に行き、ゴアテックス製の防水ヤッケ・パンツを買うのですが、
僕は「部活で必要」と半分親を騙して金をもらい、米軍ECWCS(1stモデル・新品)を買って使っていました。(後に、この行いの報いが降りかかる)
ただし、他の主要装備は登山用にせざるを得ませんでした。
まずザックは、軍用の物では小さすぎました。うちの部活では、容量100ℓクラスの最大級のザックが必要だったので。
(メインのザックをベースに置いて行く(空身)時はMOLLEパトロールリュック(レプ)も使ったけど)
防水用のザックカバーは、遭難に備えてピンク色にしました。ヤッケが迷彩なので、少しでも目立つ色を付けとかないと、
いざって時レスキューに見つけてもらえません。(そもそも敵なんていないのに迷彩着てるのが間違いw)
登山靴(通称ザングツ)も、ぶ厚い皮製のものです。今はナイロン製のトレッキングシューズでも防水性が高いものがあり、先進国の軍隊でも使われていますが、
うちの部は冬山登山もするので、雪の中でも使えるゴツいザングツがやっぱり最強でした。
このように、登山には登山用品が最適であって、軍用だからって高性能とは言えない物も多いです。
その最たる例が、写真のECWCSでした・・・
正直、こんな使えないものだとは思わなかった。
仮にも世界最先端の歩兵装備を誇るアメリカ軍の制式装備ですよ?
雑誌やバイク乗りの人のレビューではなぜか評価が高いですが、3年間山で実用した僕の感想は、『最悪』でした。
まず、防水性がソッコー無くなりました。
合羽なのに、雨水が付いた瞬間、スーっと生地に吸い込まれていきます。なんで吸収するんだよ、サラサーティーかよ。
この時点で、このヤッケは雨に当たれば当たるほど水を吸い込んで重くなる、蒸気を発散するどころか雨水がどんどん染みてくる不快極まるものでした。
さらに冬山での使用は、不快を通り越して危険を伴う物でした。
普通ヤッケは撥水加工してあるので、雪が付いてもすぐ落ちますが、僕のECWCS様は吸水性抜群なので、体に当たった雪が全てヤッケに張り付きます。
そして気付けば全身真っ白。意図せず冬季迷彩の出来上がりです。
もちろんヤッケに付いた雪は、僕の体温で徐々に解けていきます。そして雨に塗れたようにビショビショになり、その水分が氷点下の気温で凍りつくんです。
布は明らかに硬くなり、歩くたびにパキパキっと凍ってる音がするんです。
1年の冬、初めて登った冬山でこの状態になった僕は、「さすがにこれはヤバい」と感じ、仲間に助けを求めましたが、代えのヤッケなんて無いので、我慢するしかありません。
部の仲間はもちろん、軍用品の使用に寛大だった顧問の先生も、「バカじゃねぇの」って目をしてます。はい、僕がバカでした。
もうこんなヤッケ着るだけ危険なので早く買い替えたかったのですが、僕にはそのお金が無かったので、これ以降、山行の前には必ずECWCSに市販の防水スプレーを大量に塗布するようにしました。
こうすることで、ようやく雨や雪をしのげるようになりました。重くかさばるのは変わりませんが、少なくとも防水性は100均の合羽レベルに向上しました。
恐らくこの記事を読んだ人の多くが、「そこまで酷くはないだろ」と思うかもしれませんが、僕は実際そう感じました。
他のECWCSを使った事が無いので、1stモデルはみんなそうなのか、僕の買った個体だけたまたま不良品だっただけなのかは分かりませんが。
少なくとも今後、登山の主要装備に軍用品を実用しようという考えは完全に無くなりました。
もしこれ読んでる人の中に、高校や大学で山岳系部活動やろうって人がいたら、悪い事は言いません。みんなと同じ登山用を使いましょう。
軍用品なんてザバゲで着ればいいんです。僕は運良く生きてますが、運が悪いとマジで死んだり多額の捜索費用がかかるスポーツなので、無用なリスクは可能な限り避けるのが、仲間や先生、家族の為です。
この記事へのコメント
防水スプレーは簡易防水なのでニクワックスなどの撥水液等と併用して使うのがゴアテックスパーカーの常識です。
表面から水分が浸透してしまうのは布目に撥水剤が浸透して防水することが出来てない状態だからです。
防水スプレーは手入れが簡単ですが擦れや生地の屈曲で布目の防水効果が1回程度で落ち易いです。
道具の手入れは製品に合わせて万全に・自分のスキルに合った道具選びと登山計画は山の絶対条件だと思います。
表面から水分が浸透してしまうのは布目に撥水剤が浸透して防水することが出来てない状態だからです。
防水スプレーは手入れが簡単ですが擦れや生地の屈曲で布目の防水効果が1回程度で落ち易いです。
道具の手入れは製品に合わせて万全に・自分のスキルに合った道具選びと登山計画は山の絶対条件だと思います。
Posted by ななし at 2014年02月18日 00:57
>ななしさん
ゴアテックスはメンテナンスしながら使うものだったのですね。
周りが使っている登山用のゴアテックスは何もしなくても性能劣化しなかったので、てっきりそれが普通なんだと思っていました。
若かったとは言え、そうした知識がないまま山を登っていたのは、我ながら危険な行為だったと思います。
ゴアテックスはメンテナンスしながら使うものだったのですね。
周りが使っている登山用のゴアテックスは何もしなくても性能劣化しなかったので、てっきりそれが普通なんだと思っていました。
若かったとは言え、そうした知識がないまま山を登っていたのは、我ながら危険な行為だったと思います。
Posted by タイガ
at 2014年02月18日 20:51

初めまして。
私も同じ理由で高校時代ワンダーフォーゲル部に所属していました。
縦走中に、レプリカの軍用ブーツのサイドジッパーが崩壊してエライ目にあったことがあります。
私も同じ理由で高校時代ワンダーフォーゲル部に所属していました。
縦走中に、レプリカの軍用ブーツのサイドジッパーが崩壊してエライ目にあったことがあります。
Posted by ta
at 2014年03月09日 23:35

>taさん
山でブーツ破損とは・・・Σ( ̄Д ̄;;
恐ろしいですねぇ。
実物新品なら十分な性能であっても、中古やレプリカだとどうだか分かったものじゃないですもんね。
山でブーツ破損とは・・・Σ( ̄Д ̄;;
恐ろしいですねぇ。
実物新品なら十分な性能であっても、中古やレプリカだとどうだか分かったものじゃないですもんね。
Posted by タイガ
at 2014年03月12日 23:39

はじめまして。
1st、2nd共に吸水性抜群ですよ(笑)
危うく富士登山で使うところでした。
ゴアテックスにとって変わらないのには、それなりの理由があるのですね。
1st、2nd共に吸水性抜群ですよ(笑)
危うく富士登山で使うところでした。
ゴアテックスにとって変わらないのには、それなりの理由があるのですね。
Posted by je5cka at 2014年04月21日 17:49
>je5ckaさん
2ndもでしたか・・・。
英語版ウィキペディアによると、1st/2ndで用いられた生地("waterproof-breathable" fabric)は現場の兵士の評価も低かったようです。
開発されたのが30年も前なので仕方ないのかも知れませんが、山の環境で使うにはリスクが高いですよね。
2ndもでしたか・・・。
英語版ウィキペディアによると、1st/2ndで用いられた生地("waterproof-breathable" fabric)は現場の兵士の評価も低かったようです。
開発されたのが30年も前なので仕方ないのかも知れませんが、山の環境で使うにはリスクが高いですよね。
Posted by タイガ
at 2014年04月21日 21:12

感心しました。
あなたは男の中の男です。僕もちょうどあなたくらいの年頃からのマニアです。30年ほど経ちますが、当時は、レプリカ品が多く、よく騙されました。
登山も少し嗜みますが、ほぼ山には着ていきません。
世界でもっとも潤沢な予算を投入して開発された米軍装備とは云え、やはり各所に問題を抱えているからです。
今のところ登山に使用できる被服はEPICを使用した一部テストトライアル品か、ワイルドシングスのSO1.0ジャケットくらいしかないと思います。
最新のGEN3のL5あたりでもADS取り扱いの量産型は素材がミリケンになり、とんでもなくダメな素材になりました。表面の撥水が5分ほどしか持ちません。
さて、GEN1ですが、ゴアメンブレンそのものはおそらく問題ないです。2レイヤーなので、貼り付けてある表面の生地が問題なのです。この生地は特に雪が張り付きやすいです。しかも、透湿性を阻害するようなダメな表面生地のため、結露が発生しやすく、被服の内と外からの危険が増します。しかも、日本に多い水分を多量に含んだ湿雪にはより厳しいですね。
それにメンテナンスも欠かせません。
毎回の洗濯とアイロンがけです。
これは登山専用品にも言えますが、海外製品のレインウェアはシビアな日本の環境では使い物にならない製品もいまだに多いですし、雨が少なく、乾いた雪の多い海外で設計されたレインウェアは日本で使用するのは適しません。
ちなみに2ndではこの表面生地は、だいぶ雪がつきにくく改善されているはずです。
3rdではより軽量なゴアパックライトになりましたが、このゴアパックライトそのものが厳しい環境では使い物になりません。
このファーストがバイク乗りに人気なのは、驚異的な防風性能です。歴代ECWACS中で最も高い耐風性能を発揮します。
と云うわけで、登山にミリタリーを持ち込むのは、命に関わらない場所と季節を考慮する必要があります。
僕は登山にはGEN3のL5ズボンを春から秋まで投入します。まぁ、低山専用の趣味ですね。
あなたは男の中の男です。僕もちょうどあなたくらいの年頃からのマニアです。30年ほど経ちますが、当時は、レプリカ品が多く、よく騙されました。
登山も少し嗜みますが、ほぼ山には着ていきません。
世界でもっとも潤沢な予算を投入して開発された米軍装備とは云え、やはり各所に問題を抱えているからです。
今のところ登山に使用できる被服はEPICを使用した一部テストトライアル品か、ワイルドシングスのSO1.0ジャケットくらいしかないと思います。
最新のGEN3のL5あたりでもADS取り扱いの量産型は素材がミリケンになり、とんでもなくダメな素材になりました。表面の撥水が5分ほどしか持ちません。
さて、GEN1ですが、ゴアメンブレンそのものはおそらく問題ないです。2レイヤーなので、貼り付けてある表面の生地が問題なのです。この生地は特に雪が張り付きやすいです。しかも、透湿性を阻害するようなダメな表面生地のため、結露が発生しやすく、被服の内と外からの危険が増します。しかも、日本に多い水分を多量に含んだ湿雪にはより厳しいですね。
それにメンテナンスも欠かせません。
毎回の洗濯とアイロンがけです。
これは登山専用品にも言えますが、海外製品のレインウェアはシビアな日本の環境では使い物にならない製品もいまだに多いですし、雨が少なく、乾いた雪の多い海外で設計されたレインウェアは日本で使用するのは適しません。
ちなみに2ndではこの表面生地は、だいぶ雪がつきにくく改善されているはずです。
3rdではより軽量なゴアパックライトになりましたが、このゴアパックライトそのものが厳しい環境では使い物になりません。
このファーストがバイク乗りに人気なのは、驚異的な防風性能です。歴代ECWACS中で最も高い耐風性能を発揮します。
と云うわけで、登山にミリタリーを持ち込むのは、命に関わらない場所と季節を考慮する必要があります。
僕は登山にはGEN3のL5ズボンを春から秋まで投入します。まぁ、低山専用の趣味ですね。
Posted by luna at 2014年06月23日 13:07
>lunaさん
はじめまして。沢山の情報ありがとうございます!
当時その事実を知っていたら、こんな危ない真似はとても出来ませんでした。自分の無知が恐ろしいです(汗
ライダーに人気なのは防風性能でしたか。確かに立ってられないような強風が吹いても、風に関しては完全に遮断してくれていました。なるほど~!
自分は高校卒業してから一度も山に登る事が無いまま過ごしてしまっていますが、いつかトレッキングくらいは再開したいです。その時はよく勉強して、慎重に装備を選ぼうと思います。
はじめまして。沢山の情報ありがとうございます!
当時その事実を知っていたら、こんな危ない真似はとても出来ませんでした。自分の無知が恐ろしいです(汗
ライダーに人気なのは防風性能でしたか。確かに立ってられないような強風が吹いても、風に関しては完全に遮断してくれていました。なるほど~!
自分は高校卒業してから一度も山に登る事が無いまま過ごしてしまっていますが、いつかトレッキングくらいは再開したいです。その時はよく勉強して、慎重に装備を選ぼうと思います。
Posted by タイガ
at 2014年06月23日 20:29

大変申し訳ありません。
非常に影響力のあるブログに間違いを書いてしまいましたので、訂正致します。
gen1が、バイク乗りに愛されているのは、歴代ecwacs中最も高い耐風性能と雨具としての機能です。ゴアテックスなのでメンブレンが破れるかシームシールが剥がれたり劣化していない限りは雨が漏れることはありません。普通バイクに乗るときは、ただ座っているだけなので行動中のように汗をかきません
なので、内側から結露する危険は少なく、基本的には体は濡れません。なので表面生地が撥水機能を失っても、大きな問題とはならないのです。
その為、バイク乗りには愛されています。
もちろん吹雪の中でバイクに乗ると云うこともあり得ないので、雪が付着しやすい生地でも、さほど問題にはなりません。
また、gen3のゴアパックライトは、ゴアメンブレンそのものは他のものと全く同じなのですが、軽量化のためにレイヤー処理に違いがあり、裏地がコーティング処理されています。その為、裏地の耐久性に多少の問題[剥がれやすい]を抱えていますが、対雨性能、透湿性ともに性能的にはトップクラスです。
ですので、もしシビアな環境に持ち込むのであれば、gen3一択となると思いますが、その前に必ずテストを行うことをオススメします。
前回の記述の時にパックライトとゴアアクティブシェルを混同してしまいました。ゴアアクティブシェルは、性能的にも劣るため、厳しい登山には向きません。
申し訳ありませんでした。
非常に影響力のあるブログに間違いを書いてしまいましたので、訂正致します。
gen1が、バイク乗りに愛されているのは、歴代ecwacs中最も高い耐風性能と雨具としての機能です。ゴアテックスなのでメンブレンが破れるかシームシールが剥がれたり劣化していない限りは雨が漏れることはありません。普通バイクに乗るときは、ただ座っているだけなので行動中のように汗をかきません
なので、内側から結露する危険は少なく、基本的には体は濡れません。なので表面生地が撥水機能を失っても、大きな問題とはならないのです。
その為、バイク乗りには愛されています。
もちろん吹雪の中でバイクに乗ると云うこともあり得ないので、雪が付着しやすい生地でも、さほど問題にはなりません。
また、gen3のゴアパックライトは、ゴアメンブレンそのものは他のものと全く同じなのですが、軽量化のためにレイヤー処理に違いがあり、裏地がコーティング処理されています。その為、裏地の耐久性に多少の問題[剥がれやすい]を抱えていますが、対雨性能、透湿性ともに性能的にはトップクラスです。
ですので、もしシビアな環境に持ち込むのであれば、gen3一択となると思いますが、その前に必ずテストを行うことをオススメします。
前回の記述の時にパックライトとゴアアクティブシェルを混同してしまいました。ゴアアクティブシェルは、性能的にも劣るため、厳しい登山には向きません。
申し訳ありませんでした。
Posted by luna at 2014年06月29日 02:43
>lunaさん
なるほど、防水性はちゃんと有ったんですね。
山で雨に降られるたびに中がビショビショになっていたので、てっきり雨が染み込んできているのだと思ってましたが、あれは湿気が放出されないせいで自分自身の汗や湿気が中で結露していた物なんですね。
確かに運動しなければ汗かかないので、その部分では問題にならないんですね。納得です!
Gen3はそこまで(と言うかようやく)改善されているんですね。
一口にゴアテックスと言っても世代により性能はピンキリとは、大変勉強になりました。
ありがとうございます!
なるほど、防水性はちゃんと有ったんですね。
山で雨に降られるたびに中がビショビショになっていたので、てっきり雨が染み込んできているのだと思ってましたが、あれは湿気が放出されないせいで自分自身の汗や湿気が中で結露していた物なんですね。
確かに運動しなければ汗かかないので、その部分では問題にならないんですね。納得です!
Gen3はそこまで(と言うかようやく)改善されているんですね。
一口にゴアテックスと言っても世代により性能はピンキリとは、大変勉強になりました。
ありがとうございます!
Posted by タイガ
at 2014年07月01日 14:35

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