2014年05月12日
心理戦部隊
毎度お馴染み『CriticalPast』さんのYoutubeチャンネルから。

いや~、本当にここは良い映像が出てきますね。もちろん南ベトナム以外の映像も沢山ある、というかメインはアメリカ軍なので、アメリカ軍を研究されている方にも絶対にお勧めなチャンネルです。
(CriticalPastは古い記録フィルムをメディアなどに販売している会社なので、これらの動画は商品の試し見なのですが、それでも十分マニア的には美味しい映像が盛り沢山です。)
さて、今回は南ベトナム軍の心理戦(CTTL)部隊です。
心理戦などの政治戦(CTCT)部隊を統括する総参謀部付きの部局、政治戦総局(TCCTCT)の概要については過去記事『政治戦総局/TCCTCT』を参照。

心理戦訓練センター(1963年12月27日)
心理戦訓練センター(Trung tâm Huấn luyện Chiến tranh Tâm lý)は、政治戦総局内の教育局(Cục Chính Huấn)が運営しており、その名の通りプロパガンダや宣伝工作など国内外への心理作戦を教育する施設でした。
(政治戦士官の育成は、ダラット政治戦大学で行われた)
講習に使われている機械は、農業支援用の発電機だと思われます。
受講している生徒の部隊章を見ると、政治戦争局内の心理戦局に属する心理戦大隊の隊員が多いですね。
訓練センターの教官ミーティングに出席している米軍のアドバイザー。
防空砲兵少佐という事は、ほぼ確実にグリーンベレーですね。
※グリーンベレーはもともと『特別な戦闘部隊』ではなく、心理戦や同盟軍(敵対国内の反政府ゲリラも含む)への教育などの『特殊な作戦(工作活動)』を専門とする部隊です。
また防空砲兵科は特殊部隊将校の出世コースでした。

クリスマスカードを用いた心理作戦(1963年12月27日)
刷っている人は民間の業者でしょうが、こういう民心獲得は政治戦部隊の重要な任務だという事がよく分かります。
山地民心理戦部隊
CriticalPastは未編集のオリジナルフィルムがメインですが、それらの素材から作られたアメリカ陸軍・陸軍心理センター制作の"The Big Picture"も、貴重な映像が沢山あって大変勉強になります。
この中に映っていたのが、おそらく心理戦局所属の山地民心理戦部隊(ベトナム語の正式名は未確認)。
モンタニヤードとして知られる中部高原(つまりラオス・カンボジア国境地帯)に住む少数民族は、長くベトナム人に迫害されていた事から南ベトナム政府とも対立関係にあり、一部の少数民族が数千人単位でベトコン勢力に加わるなど、国境地帯防衛の問題になっていました。
1961年からアメリカによるCIDG計画が始まると少数民族は反共部隊として戦闘に投入されましたが、決してベトナム人との遺恨が消えたわけではなく、1964年に反政府自治運動組織FULROが結成されると、そのCIDG部隊が(味方であるはずの)南ベトナム軍を攻撃する事態に至りました。(FULROの反乱)
こうした経緯から、ついに南ベトナム政府は(政治的・軍事的な目的からですが)少数民族との和解に乗り出し、CIDG兵士の政府軍への正式登用や、山地民心理戦部隊による農業・医療・教育などの生活支援が行われるようになりました。


▲山地民心理戦部隊の徽章
こんな事ばかり書いてるからか、最近たてつづけに、ネットで知り合ったタイ人(現在タイ海軍に勤務)やベトナム系アメリカ人(南ベトナム陸軍中佐のお孫さん)から「君ベトナム人?」と訊かれました。
つい「イエス!」と答えそうになるけど、嘘はいけないのでその都度日本人ですと説明。
日本語で記事書いてても、在日ベトナム人だと思われていたみたい。
たしかに向こうにしてみれば、「なんで日本人が?」って感じでしょうねw
この記事へのコメント
防空砲兵科は出世コースなんて初めて知りましたよ。
画像検索してるとたまに見つけます。
画像検索してるとたまに見つけます。
Posted by Oscar
at 2014年05月13日 12:50

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