2014年05月21日
ベトナム共和国軍伝統保存会
先日、元南ベトナム軍特殊部隊将校ファム・ホア少尉(NKTおじさん)の紹介で、カリフォルニア在住のベトナム系三世、Dさん(20代・仮名)と知り合いました。

Dさんは、南ベトナム陸軍第7師団で指揮を執った中佐のお孫さんで、現在はDさんとDさんの父上、叔父さんと一緒に『ベトナム共和国軍伝統保存会(Hội Bảo Tồn Truyền Thống Quân Lực Việt Nam Cộng Hòa / Republic Of Vietnam Armed Forces Preservation Association)』に所属し、ホア少尉と一緒にアメリカ各地のイベントに参加されているそうです。
彼はこれまでベトベトやアホカリで僕達がしてきた日本での南ベトナム軍リエナクトメントを大変喜んでくれて、日米のリエナクターとしてお友達になることが出来ました。とても嬉しいです(ノ≧∇≦)ノ
実はDさんが所属する伝統保存会とは単なるミリタリーマニアの集まりではなく、その名の通り39年前のベトナム戦争の敗北によって祖国と共に消滅してしまったベトナム共和国軍の名誉と伝統を後世に語り継ぐための真面目な協会なんです。
メンバーのほとんどはDさんのように在米二世・三世の南ベトナム軍人子息の有志で構成されており、難民としてアメリカに脱出した数万人の南ベトナム移民と、アメリカで生まれ育ったベトナミーズ・アメリカンが、祖国の歴史と民族の絆を共有し続けるよう、様々な活動に取り組んでおられます。
ベトナム共和国軍伝統保存会 公式ブログ(書いてるのはホア少尉)
伝統保存会の皆さん(この中でDさんもインタビューされています)
ベトナム戦争記念碑 月例追悼式典 in ウェストミンスター

画像引用:JP Art Foundry Inc.(このモニュメントをデザインした会社です)
ベトナム戦争の記念碑と言えば、ワシントンDCにあるベトナム従軍兵記念碑(Vietnam Veterans Memorial)が有名ですが、アメリカに渡った南ベトナム移民が数多く暮らすロサンゼルス郊外のウェストミンスター市にもベトナム戦争記念碑(Vietnam War Memorial)があります。
ワシントンDCの従軍兵記念碑はあくまでベトナムで戦死した『アメリカ兵』を追悼する慰霊碑ですが、ウェストミンスターの戦争記念碑はアメリカ軍の5倍以上の戦死者(推定22万~31万人)を出した南ベトナム軍将兵を共に追悼するもので、ウェストミンスター市議会議員フランク・G・フライ氏を発起人として1997年より計画がスタートしました。
モニュメントの中央にある兵士の彫像は南ベトナム移民の芸術家トゥアン・グエン氏によるもので、記念碑は2003年に市の中心部シド・ゴールドステイン・フリーダム公園内に完成しました。
伝統保存会メンバーのほとんどはこのウェストミンスターの住民で、記念碑の建設以来欠かさず毎月1回、軍装で集合しベトナム共和国国歌斉唱と国旗掲揚による追悼を行っています。
チャリティーコンサート『ありがとうコンサート』 in サンノゼ
伝統保存会の活動にはさらに、毎年夏にカリフォルニア州サンノゼで行われるチャリティーコンサート『ありがとうコンサート(Đại Nhạc Hội Cám Ơn Anh)』での儀仗・リエナクトメント公演があります。
このコンサートはベトナム戦争を戦った南ベトナム軍人への感謝と追悼を歌で表現する音楽祭であるのと同時に、その収益は今もベトナムで暮らしている元南ベトナム軍の傷痍軍人に義援金として送られます。
1975年のサイゴン陥落の際、病院にいた多くの傷病兵は国外脱出することが出来ず、ベトナム共産党の支配下に取り残されました。
そして戦後、彼らはベトナム共産党政府に徹底的に無視され、負傷による身体障害への補償・支援など何も無いまま仕事に就く事もできず、百万人以上の傷痍軍人とその家族が路頭に迷いました。
アメリカに渡った南ベトナム移民たちは、戦争の傷跡に苦しむかつての戦友たちの惨状に長年心を痛め続けていましたが、彼ら自身も言葉の通じない異国で一から人生をやり直すのに精一杯でした。
そして長年の努力の末、移民たちはようやく先進国の生活水準で暮らせるようになり、生活に余裕が出てきたことから、近年はこのようなチャリティーコンサートを盛んに開催するようになりました。
社会主義を謳う現在のベトナム政府が公然と無視する最底辺の人々を援助する唯一の手段は、資本主義国アメリカからの善意の募金のみというのは、あの戦争の意味を考える上でも重要な事実かも知れません。
以下、開会式の様子(若い人たちが保存会メンバー。年寄りは本物の元軍人)
第5回(2011年)
第6回(2012年)
第7回(2013年)
ベトナム歌謡祭『アジア』 in ラスベガス
伝統保存会のもう一つの大役が、ラスベガスで開催されている『アジア(ASIA)』へのエキストラ出演です。
『アジア』は、カリフォルニアのベトナム移民系レコード会社『アジア・エンターテイメント(Trung Tâm ASIA)』が主催する、ベトナム系アーティストによる歌謡エンターテイメントコンサートで、コンサート映像はDVDでも販売されています。
↓これが今月17日に発売された最新版『Asia DVD 75』の予告版
基本的にはベトナム系歌手による演歌やポップミュージックがメインですが、こちらも南ベトナム移民によるイベントなので、悲劇に見舞われた祖国の歴史を偲ぶという目的があります。
特に共産軍による侵略から祖国ベトナムを護るため散っていった英霊たちを顕彰・追悼する曲は、大規模なセットと伝統保存会のエキストラによる壮大なステージ芸術が展開されるので必見です!
このアジアに出演しているアーティストの中でも、特にクォック・カイン(Quốc Khanh)とダン・グエン(Đan Nguyên)の二名はベトナミーズ・アメリカンを代表する歌手として人気で、共同でCDも発表しています。
僕から見ても、実際カッコイイ!
それでは最後に、クォックとダンのイケメンコンビが歌うベトナム共和国軍顕彰歌『Trên Đầu Súng(最前線)』をどうぞ。
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