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2014年11月23日
ベトナム軍の食事とPIRレーション
リエクトメントの楽しさは、単なるコスプレ戦争ゴッコに留まらず、当時の兵士の生活を再現し、一時のタイムスリップを体験できる事にあると思います。そして、その気分を盛り上げるにあたり、結構重要なのが食事。既に日本でも、趣味人口の多いアメリカ軍・日本軍・ドイツ軍などでは、いくつかのイベントで当時のフィールドキッチン、戦闘糧食の再現が行われていますね。あの完成度には感服です。
もちろん僕らベトナム共和国軍愛好家も、ある程度食事をベトナムっぽくしようという試みは行ってきました。しかし、その根拠となる資料・証言は、英語で書かれた洋書にはなかなか載っておらず、ほとんど想像でメニューを考えるしかありませんでした。
そこで今回、せっかくネットを通じて元ベトナム共和国軍将兵の方々とお知り合いになったので、(聞きたい事は山ほどあるけどあまり質問責めしたくないので、程々に雑談しながら)当人たちに直接「当時何を食べていましたか?」と尋ねてみました。以下、その回答です。(画像はイメージです)
・典型的なメニューは、調理済みのお米(乾燥米?)に、魚や肉の干物、あるいは単にお米にニョクマムをかけるだけだったよ。

・作戦時の戦闘糧食は、ハムの缶詰、ビニールパックされたポークとレバーペースト、乾燥米だった。

・米軍のCレーション(MCI)食べてた。

・基地の食堂では、ほとんどが魚や豚肉の煮物と野菜、それにスープとご飯というメニューだった。

いやいや大変貴重な証言を頂けました。
もちろん年代や部隊・職種によって食事内容は様々だったでしょうが、初めて具体的なメニューを知ることが出来て感激です!
と言うか、"ハムの缶詰、ビニールパックされたポークとレバーペースト、乾燥米"ってそれ、最初からパッケージとして生産されたレーションっぽいですよね。
ベトナム軍にレーションが存在していた・・・。考えてみれば当たり前の事ですが、今までそういう話を聞いたことが無かったので、俄然テンション上がりました。
こりゃあ再現するしかないですね・・・!
ところで、上記のベトナム軍レーションのメニューを聞いて、何か気になりません?



それによく似たレーションに心当たりがあるのですが・・・

(写真は現代製リプロ)
そう、"PIR (Packet, Indigenous Ration)"です。 (日本では"PIRレーション"または"SOGレーション"という名前で通ってるので、以下PIRレーションと書きます。)
PIRレーションとは、米軍グリーンベレー/MACV-SOGがベトナムで行っていたCIDG計画等の特殊作戦を兵站面で支援するため、沖縄に設置されたSOGの装備調達・開発部門CISO(対反乱支援センター)が開発した、CIDG(現地の少数民族反共ゲリラ部隊)向けレーションです。
※CISOについてはKingbee氏のブログに分かりやすい解説がありますので、そちらをご覧下さい。
当初、米軍はCIDG隊員に対し自分達と同じMCIレーション(Meal, Combat, Individual)を配給していましたが、間もなくこのレーションはCIDG隊員に不向きであることが明らかになりました。
これは欧米人とアジア人の食文化の違いもありましたが、それ以上に体質によるところが大きかったようです。
つまり、米や野菜を中心とした質素な食生活をしてきたCIDG隊員たちにとって、大柄な欧米人の体力を維持するため開発されたMCIレーションはあまりに高タンパク・高脂質過ぎて、彼らの胃腸では消化することができず下痢になってしまったのだそうです。
例えるなら、病院食からいきなりラーメン二郎に変わった感じ。
そこで急遽、CISOはCIDG向けレーション開発計画"プロジェクトPIR"をスタートし、その結果生まれたのが、このPIRレーションでした。
PIRレーションには乾燥米(アルファ化米)と乾燥野菜を中心に、アジア人の味覚に合わせた以下の5つのレトルトパックメニュー(Packet, Subs, Indig)が用意されていました。
#1 牛肉 (FSN 8970-J55-0010)
#2 魚/イカ (FSN 8970-J55-0020)
#3 エビ/キノコ (FSN 8970-J55-0030)
#4 マトン (FSN 8970-J55-0040)
#5 ソーセージ (FSN 8970-J55-0050)
これらPIRレーションはCIAが所管するCIDG計画(※実行機関は陸軍SFだがイニチアチブはCIA)のための備品であるため、発注はCIAの予算で行われ、日本・沖縄の加工食品メーカーが独自の加工技術を生かしてこれらを生産していたそうです。
また、PIRレーションは軽量で耐久性が高く使いやすい事からCIDG兵士以外にもなかなか好評で、CIDGと行動を共にする米軍特殊部隊やオーストラリア軍SAS隊員も、好んでこのPIRレーションを作戦行動に携行したといいます。
A-221マイクフォースに配食されるPIRレーション (1969年2月23日プレイク)
動画内の段ボールに、思いっきり沖縄の会社名と住所が書かれてますね。


もしかしたらまだその会社あるかもと思って軽く調べてみましたが、該当するものは見つかりませんでした。
ストリートビューでこの住所も確認しましたが、会社ではないっぽいので押しかけるのはやめましょう。
このようにPIRレーションはCIDG計画、およびCIDG兵士によって行われた米軍MACV-SOG・ベトナム軍NKT合同の長距離偵察作戦に多大な貢献をしたわけですが、こんな良い物がCIDGでしか使われなかったというのは、むしろ不自然ではないでしょうか。
同じくアジア人であり、かつCIDGよりもはるかに規模の大きい(というかベトナム派遣アメリカ軍の数倍の兵力の)ベトナム共和国軍こそ、こうしたレーションの需要が大きかったはずです。
冒頭の証言にあったベトナム軍レーションとPIRレーションでは若干メニューが違うようですが、当時こうした保存性の高い加工食品はどこの国のメーカーでも作れるという訳ではないですから、おのずと製造メーカーは限られるはずです。
また当時、日本ではCISOからの発注品以外にもベトナム軍向け援助物資が大量に製造されており、さらに民間レベルでも多数の日本企業がベトナムに進出していました。
これらの事から、ベトナム軍がCISOを介さずに直接日本の食品メーカーにPIRレーションの亜種のようなものを発注していた可能性というのは、十分に有り得ると考えています。
ただし、まだ想像の域を出ない話なので、これからもっと調べていきたいと思います。
いや~ワクワクするテーマが増えたv(≧∀≦)v
Posted by 森泉大河 at 00:03│Comments(0)
│【ベトナム共和国軍】│被服・装備│DSCĐ/CIDG計画│【インドシナ少数民族】│【アメリカ】│SF/グリーンベレー│SOG/特殊作戦│CIA/中央情報局│1954-1975
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