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2018年09月28日

ベトナム戦争観


古森義久「池上彰氏のベトナム戦争論の欠陥」 Yahooニュース/Japan In-depth

 この記事にある池上彰氏に対する批判は至極真っ当かつ、日本ではなかなか取り上げられなかった貴重な意見だと思います。私自身は一応リベラル派なつもりなので、この記事の掲載元である保守系ニュースサイトや著者 古森氏の出身である産経新聞は大嫌いなのですが、それでもこの記事の内容には同意します。また、この記事がYahooニュースという大手メディアに取り上げられた事は私にとっても嬉しい事です。日本人でも、実際に当時ベトナムで取材した人は、本当の事を分かっているんですね。この人も、私と同じ気持ちを40年以上持っていたのだと思います。ジャーナリストの意見にしては、批判の仕方がやけに感情的ですし。
 なお、この記事は池上氏個人の記事に対する批判という形ですが、この池上氏の見解は世の中にはびこるベトナム戦争への誤った認識の典型例に過ぎず、これは池上氏一人がおかしいのではなく、彼が育った日本の言論界全体が長年に渡って空想の世界に浸っていた結果だと私は思います。
 日本を含む先進国の人々の多く(右派・左派ともに)が持つベトナム戦争への歪んだ色眼鏡、つまりアメリカへの劣等感と、「アメリカに立ち向かう解放勢力」への空想じみた憧れを捨てて事実だけを見つめれば、この記事に書いてある事は、あの戦争に対するごく当たり前の認識だと分かるはずです。
 しかし情けない事に、「坑仏」や「坑米」という意図的に単純化された分かりやすくヒロイックなストーリーは、実に多くの人々の思考を停止させる事に成功しています。アメリカへの劣等感(ある意味でアメリカ中心主義)の中に生きる人々は50年以上、ベトナムという国を己の対米感情を肯定するための道具として利用し、歪んだ色眼鏡越しに見る気持ちの良い空想にしがみつき、事実をないがしろにしてきました。
 彼らは幸運にも手にする事の出来た言論と良心の自由をアメリカへの批判に傾ける一方で、ベトナム国民からその自由を奪ったホー・チ・ミンを初めとするベトナム共産党に対しては英雄視を続けてきました。彼らは、自分たちさえ自由なら、ベトナムや他の国の国民の自由などどうでも良かったのです。
 世の中には多くの知識人がいる事になっていますが、その多くはアカデミックなふりをしていても、結局は感情論を優先していると私は感じています。最初から感情的な結論は決まっていて、それに合わせて都合のいい情報を集め、研究したつもりになってしまう。これは大なり小なり全ての人間に当てはまる事ですが、しかしあれほど世間で評価されている池上氏のような人でもこのレベルなのは悲しいです。
 また、それだけに留まらず、なぜあれほど多くのベトナム人がフランス連合やサイゴン政府側についたのかについては、そもそもその存在を無視したり、または彼らを単に拝金主義で大国の帝国主義に迎合した日和見主義者と卑下する事により、「解放」という気持ちの良いストーリーの整合性を保とうとしている事が、私には我慢なりません。


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この記事へのコメント
森泉さま
こんにちは!
この古森記事は、ニュースアプリで見かけていたのですがどうせ「たわごと」じゃね?とスルーしていました。今回こちらの記事に誘発され改めて読んでみましたところ、なんと!こちらのブログで紹介されている通りきわめてまっとうな記事でびっくりしました。たいてい古森義久氏の記事は納得できない分析が多いのですが、この記事の認識はシャープでした。ジャパンインデプスも玉石混淆ですが、この記事は玉でしたね。「ベトナム戦争の本質は民族独立闘争をまとった共産主義革命の戦争」と実に明快です。そして北の独裁政権が、南の独裁政権を軍事的に粉砕した。(もちろん冷戦構造の中で周辺の大国の軍事干渉がもあったわけでその意味では東西対立というファクターも無視しえないとは思いますが)
記事を紹介していただきありがとうございました。
Posted by poema15 at 2018年11月09日 00:14
poema15さん
私が付き合いのある日本在住ベトナム人協会メンバーの多くが、日本人があの戦争の正体を見誤り、現ベトナム政府のプロパガンダを信じ切っている事に長年嘆息していたので、彼らがSNSでこの記事の存在を知ると驚きと歓迎の声を上げてシェアしていました。
終戦から40年以上も経っているのに、日本の隣人、そして世界中の人々から誤解(あるいは利用)され続ける彼らの心境を思うと、この世はなんと身勝手で浅ましいのだろうと憤りを覚えます。
ちなみにそのベトナム人協会は元々は旧南ベトナム系難民らによる組織でしたが、現在では南北問わず若い世代が多く所属しており、中には元解放戦線やベトナム共産党員を親に持つ人もいます。そういった戦後政府の思想教育下で育った世代の間でも、1945-1975年にホーチミンが行った一連の戦争について、政府の宣伝に疑問の声を上げ、自国の歴史を見直す動きは水面下で広まり続けています。

蛇足ですが、「北の独裁政権が、南の独裁政権を」という表現には異論があります。南ベトナムが西側先進国が考えるレベルでの民主的な国だったとは言いませんが、北と南では政治の独裁度も国民の自由度がまるで違います。
たしかに南ベトナムでは1955年から1967年までジエム政権および軍部による独裁がありましたが、その間も反体制派によるデモやマスコミによる政府批判は続いており、さらに67年からは新憲法の下、曲がりなりにも国家レベルで民主主義の体裁が整えられ、国民は西側諸国に匹敵するレベルの言論の自由を得たと考えています。
つまり南ベトナムは、似た境遇にあったタイや韓国と同様に、国民が独裁政権に抗う事で徐々に民主化を進めている最中の国であり、しかもそれを20世紀後半最大の戦争の最中に進めていたのです。むしろタイや韓国と比べた場合、そのような戦時下にありながら民主化を進められた事は特筆すべき事であり、単に民主化が達成されていない状況を独裁と呼び北ベトナムの体制と同列に並び記す事には同意しかねます。

長くなりましたが、いつも読んで頂けて嬉しいです。またコメントお待ちしております。
Posted by 森泉大河森泉大河 at 2018年11月09日 18:14
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