2021年11月19日
似て非なる物
ベトナム軍で使われた数千種の部隊章・パッチの中には、デザインがよく似ている、というか明らかに使いまわしているものがいくつか見られます。
それらは恐らく、軍から部隊章のデザインを受注したベトナム国内のデザイナーや徽章業者が、デザインを起こす手間を省いたりシルクスクリーンの版をそのまま使いまわすために、すでに同一デザインの部隊章がある事を軍に隠して提案し、そのまま採用されたものと思われます。
以下、そういったデザイン・シルクスクリーン版使いまわしと見られるパッチの例です。

①陸軍第44レンジャー大隊
②地方軍ヴィンビン小区チャークー支区
③不明(文字がないため判別できず)

①陸軍第18歩兵師団第52歩兵連隊偵察中隊
②陸軍第23歩兵師団第44歩兵連隊偵察中隊
③地方軍ヴィンビン小区チャークー支区 ※
※44という数字はチャークー支区とは関係なく、単に業者が②の版を流用した、さらに4は漢語で「死」を暗示する数字であためカッコいいからそのまま採用されたのではと推測しています。

①陸軍第5歩兵師団第8歩兵連隊(1971年改訂版)
②地方軍ヴィンロン小区第747長距離偵察中隊(元ヴィンロンPRU)
ともに1970年代に用いられたパッチです。

①陸軍第1歩兵師団黒豹中隊
②陸軍特殊部隊第91空挺コマンド大隊
②陸軍特殊部隊第91空挺コマンド大隊
特殊部隊ベテランのフォー・コック・ユン氏の証言によると、両部隊章は似ていて紛らわしいと軍内部でも問題になったので、1968年に第91空挺コマンド大隊がデルタ偵察チームを吸収し「第81」空挺コマンド大隊に改称されると同時に②のパッチは廃止され、以後1970年まで第81空挺コマンド大隊に専用の部隊章は制定されなかったそうです。
過去記事『空挺コマンド』参照
なお、上記のように似たようなパッチは他にもあるのになぜこの二つだけ問題になったかというと、おそらく黒豹中隊と第91空挺コマンド大隊は共に軍団本部や総参謀部の指令で動くエリートコマンド部隊だったため、軍上層部がこの二部隊の部隊章がよく似たデザインであることに気付けたからだと思われます。逆に他の部隊は異なる地域に展開する末端組織なので、上層部はおろか、パッチを着用する当人たちも他に同じようなパッチが使われている事に気付いていなかったかも知れません。
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