2014年04月21日
士官候補生の礼装
南ベトナム軍に存在した各士官学校の士官候補生制服(礼服)をいくつかイラストにしてみました。
以下、イラスト化出来ていないものも含めて、南ベトナムに存在した全ての士官学校の礼服の変遷を分かる範囲でまとめてみました。
なお、年代に関してはまだ確かな資料を持っておらず、写真から判断した僕の私見なので正確ではないかもしれません。
ダラット国家軍事学校 (Trường Võ Bị Quốc Gia Việt Nam)
ダラットは1948年にフランス軍によって設立された『ダップダ・ベトナム士官学校(Trường Sĩ quan Việt Nam Ở Đập Đá)』を前身としており、1950年に移転し『ダラット統合士官学校(Trường Võ bị Liên quân Đà Lạt)』へと発展しました。
「統合士官学校」の名前の通り、ダラットは日本の防衛大学校のように陸海空軍の幹部候補生を育成するエリート校でした。その後1959年には校名を『ダラット・ベトナム国家軍事学校(Trường Võ Bị Quốc Gia Việt Nam)』へと改称し、終戦まで多くの南ベトナム軍将校を輩出しました。
50年代
この時期独自の礼服は制定されておらず、フランス軍/ベトナム国軍将校用の白い礼服が使用されています。
帽章もベトナム国軍と同じに見えます。
60年代前半
フランス軍の士官候補生のデザインを踏襲した礼服が制定されます。袖のデザインで学内での階級・役職を示しています。
ズボンの色は一般的に黒に赤線ですが、なぜか白いズボンもあるので現在調査中。
60年代後半以降
上着が肋骨服風の短ジャケットという派手なデザインに更新され、超カッコイイです。
フランス軍式の袖のマークは無くなりましたが、袖のデザインで階級を示すシステムは変わっていません。
ダラット政治戦大学 (Trường Đại học Chiến tranh Chính trị)
政治戦大学は1966年に設置された政治戦士官学校で、国内外へのプロパガンダや防諜を任務とする政治戦総局(TCCTCT)が運営する隠れたエリート校でした。
政治戦については過去記事『政治戦総局/TCCTCT』を参照。
イメージカラーはグレー。写真が少なく、現在確認できている礼服はこの一種類だけです。
軍医学校 (Trường Quân Y)
軍医学校は1951年にフランス軍によってハノイに設立された『中央軍医学校(Trường Quân Y Trung Ương)』を前身としています。
1956年に中央軍医学校は一旦解体されサイゴン市内の『衛生訓練センター(TTHL Quân Y)』に合併されますが、1961年には『軍医学校(Trường Quân Y)』へと改称されました。
こちらも三軍統合の軍医・衛生学校で、日本で言う防衛医科大学校みたいな感じです。
イメージカラーは赤。軍医学校も礼服はこの一種類しか確認していません。
トゥドゥック歩兵学校 (Trường Bộ Binh Thủ Đức)
トィドゥックはフランス軍によって1950年に設立されたベトナム国軍の予備士官学校(Trường Sĩ quan trừ bị)です。
その後1961年に『トゥドゥック武科学校群(Liên Trường Võ Khoa Thủ Ðức)』へと改称され、さらに1964年以降は『トゥドゥック歩兵学校 (Trường Bộ Binh Thủ Đức)』となりました。
1963年までは機甲学校や砲兵学校など各兵科の学校はトゥドゥックの一部でした(各学校の集合なので武科学校群と称された)が、1964年以降は歩兵科以外はトゥドゥックから分離され、士官教育ではなく兵科教育を行う教育隊となります。
詳細は過去記事『陸軍予備士官候補生(SVSQTB)』参照
60年代前半
白制服にイメージカラーの青をあしらったデザインです。エポレットは青地に黄色のフリンジが付きます。
60年代後半以降
大きくデザインが変更され、カーキの短ジャケットにグリーンの装飾がつきます。エポレットも黒地に緑色のフリンジに変更。
同じ予備士官候補生なので礼服はトゥドゥックと同一。ただし帽章と校章はドンデーのものを使用。
ニャチャン海軍士官学校 (Trường Sĩ quan Hải quân Nha Trang)
海軍訓練センター(TTHL Hải Quân)に併設された海軍の士官学校です。
60年代初頭以前
海軍将校と同型の白詰襟が礼服です。この頃のジャケットは腰の切り込みポケットのみで、胸ポケットはありません。
60年代以降
腰のポケットが無くなり、逆にフラップつきの胸ポケットが付きます。
ニャチャン空軍訓練センター (TTHL Không Quân)
空軍の士官教育はニャチャンの空軍訓練センター(TTHL Hải Quân)で行われました。
60年代前半
一般的なフランス式のデザインで、空軍のイメージカラー青をあしらっています。
60年代後半以降
ダラット国家軍事学校と酷似した肋骨服風短ジャケットに更新されます。
国家警察アカデミー (Học Viện Cảnh Sát Quốc Gia)
当時ベトナム国家警察は軍(総参謀部)の指揮下にありましたが、士官教育は国家警察アカデミーで独自に行われていました。
軍の士官学校とは異なり、白い開襟ジャケットが礼服となっています。
警察士官候補生の礼服は、これ一種類しか存在を確認していません。
士官候補生(Sinh Viên Sĩ Quan)を教育する士官学校は以上です。
紛らわしいですが、『軍事大学(Trường Đại học Quân sự)』は現役将校が通う指揮・幕僚大学なので士官学校ではありません。
同様に軍事語学学校・行政学校・軍事情報学校・総監学校なども士官学校ではなく、専門教育隊となっています。
士官候補生たちの礼服は、毎年サイゴンで行われていた国軍記念日(6月19日)パレードでまとめて拝めちゃいます!
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