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2015年10月11日

写真で解説 軍装Q&A

※2019年11月24日訂正
※2024年6月26日訂正

僕のところには「ベトナム共和国軍の軍装に興味がある」という声を時々頂くのですが、まだまともな日本語の資料が存在しない分野なので、どうも敷居が高いと感じる方が多いそうです。
また、せっかく興味を持った方も間違った情報のせいで変なコスプレになってしまってはもったいないので、信頼性のある写真資料で認識を共有できたら良いなと思い、これまでに頂いた質問と僕の見解をまとめてみました。


『南ベトナム軍といえばM59タイガー?』

※各種迷彩については過去記事『ベトナム軍の迷彩』も参照

写真で解説 軍装Q&A
マニアの間で『M59タイガー』と呼ばれている作戦服が支給されたのはベトナム海兵隊のみです。
なので海兵隊の服を再現する目的なら良いですが、、他の部隊で使うのはむしろ不適切になります。
(写真: 海兵師団長ブイ・テー・ラン准将(当時) / 1972年クアンチの戦い クアンチ省クアンチ)



写真で解説 軍装Q&A
海兵隊以外で使われているタイガーストライプ迷彩の服は、海兵隊の迷彩に似せて作られたCIDG用または民間アパレルメーカーの市販品を兵士個人で購入したものになります。
この非公式な服は主に、米軍やCIDGと合同で作戦を行う特殊部隊(NKTやLLDB)において着用されました。
(写真: LLDB第81空挺コマンド大隊"プロジェクト・デルタ" / 1960年代末)







写真で解説 軍装Q&A
それ以外の空挺、レンジャー部隊等で支給される迷彩服はリーフ系(インビジブル・ERDL・ブラウン・レンジャーリーフ)のみなので、タイガーを着ている人の割合はかなり少ないです。
なのでそれらの部隊を再現するならば、タイガーではなくリーフ系を使うのが適切だと思います。
(写真: レンジャー大隊 / 1968年テト攻勢 サイゴン)



写真で解説 軍装Q&A
一方、海兵隊でも1967年頃からリーフ系迷彩の支給が始まり、作戦服は徐々にリーフ系に切り替わっていきました。
(写真: 海兵旅団第2大隊 / 1967年)




写真で解説 軍装Q&A
そして70年代には、海兵隊員の半数以上がパステルリーフ迷彩作戦服を着用するほどまでに普及します。
(写真: 海兵師団 / 1972年 トゥアティエン省フエ)








写真で解説 軍装Q&A
ただし将校は、海兵伝統の迷彩として引き続きタイガーを着る人が多かったようです。
(写真: 海兵師団第369旅団第9大隊本部 / 1975年3月7日 クアンチ省ジアダン)





写真で解説 軍装Q&Aなお、タイガーに限らず『M59』という名前は資料の乏しかった時代に日本のマニアが名付けたもので、現在ではこの裁断が1959年に登場したとする根拠は薄い事が判っているので、僕はM59という呼び方をお薦めしません。
強いて名付けるなら、この裁断は迷彩服にのみ用いられるので、僕は便宜的に『2ポケット迷彩服型』と呼んでいます。






『上着やズボンの裾は入れる?出す?』

写真で解説 軍装Q&A
軍の規定では作戦服(作業着)は上着・ズボン共にインする事になっています。
(画像: ダラット政治戦大学服装規定『QUÂN PHỤC SVSQ / SCTCT』より / 1960年代末以降)










写真で解説 軍装Q&A
正確には、ズボンの裾はブーツには入れず裾ゴムでたくしあげていました。
ブーツインしているのに靴下が見えるのはこの為です。
前線においても、このスタイルが一般的でした。
(写真: 部隊不明 / 1973-1975年 ザーディン省アンミ村)








写真で解説 軍装Q&A
同時に、場合によっては川や水溜まりに入った時に裾に水が溜まるのを防ぐため+暑さ対策で、裾を出している場合も多々あります。
なので、戦闘時のコスプレ的には入れてても出してても、どちらでもOKだと思います。
(写真: 部隊不明 / 1960年代末以降)









『帽子は何を被ればいいの?』

図解にまとめました。

写真で解説 軍装Q&A 写真で解説 軍装Q&A

写真で解説 軍装Q&A
1960年代後半以降、軍の規定書では通常勤務装は八角帽に統一されています。
(画像: ダラット政治戦大学服装規定『QUÂN PHỤC SVSQ / SCTCT』より / 1960年代末以降)










写真で解説 軍装Q&A
また八角帽と共に、ベースボールキャップも準制服的に広く使用されていました。
さらに前線においては個人購入のブッシュハットも数多く見受けられます。
この状況は国家警察を含む全軍で、(使われる迷彩生地が違うだけで)同じような状態でした。
(写真: 第23歩兵師団第44連隊第2大隊 / 1960年代末以降)



『ヘルメットに擬装網や迷彩カバーを付けた方がいい?』

写真で解説 軍装Q&A
第一次インドシナ戦争中、フランス植民地軍はフランス連合を構成するベトナム国軍に対し各種フランス軍装備(アメリカ・イギリスからの供与品含む)を大量に供与し、戦力の強化を図りました。
これらの装備は1955年に南ベトナムがフランス連合からの独立、ベトナム共和国成立を宣言した後もベトナム共和国軍に引き継がれ、1960年代にアメリカ式の装備に更新されるまで使用されました。
(写真: ベトナム国軍第5空挺大隊 / 1953年11月キャスター作戦 ディエン・ビエン・フー)




写真で解説 軍装Q&A
中でもヘルメットの擬装網は長きに渡って使用され、徐々に着用率は下がっていくものの、1960年代末まで使用が確認できます。
(写真: 部隊不明 / 1968年以降)




写真で解説 軍装Q&A
またアメリカによる軍事援助が本格化した1960年以降、ベトナム海兵隊(陸戦隊)には米軍のリバーシブル(ミッチェル)ヘルメットカバーが大々的に支給され、以後終戦まで使われていきます。
なので、海兵隊をやるなら必ず着けるべきだと思います。
(写真: 海軍海兵群 / 1962年)


写真で解説 軍装Q&A陸軍部隊でも1960年代末にはカバー装着が規定化され、実際かなりの数の米軍ヘルメットカバーが支給されました。
(写真: レンジャー大隊 / 1968年1月31日テト攻勢 サイゴン ※動画あり)




写真で解説 軍装Q&A
国家警察野戦警察隊(CSDC)でも1960年代末以降、米軍ヘルメットカバーおよび警察迷彩作戦服と同じ国産のクラウド迷彩のカバーも多用されました。
(写真: 野戦警察隊 / 1968年11月2日 サイゴン)



写真で解説 軍装Q&A
また野戦警察隊では独自にタイガーストライプ迷彩のカバーも支給されています。
このように戦警察隊隊におけるカバー使用率は陸軍と比べてとても高いです。
(写真: 野戦警察隊 / 1967年2月シーダーフォールズ作戦 サイゴン)



写真で解説 軍装Q&A
1970年代に入ると、陸軍・海兵隊では米軍ブラウンリーフや国産のレンジャーリーフ迷彩のカバーも支給されるようになります。
(写真: 空挺師団 / 1975年4月 サイゴン)




写真で解説 軍装Q&A
しかし新型の火器やボディアーマー等、直接戦闘能力を向上させる装備は急ピッチで全軍に配備された一方で、迷彩カバーは優先度が低かったのか、結局陸軍では海兵隊ほどカバーが行き渡る事はありませんでした。
なのでその部隊の装備の更新状況にもよりますが、1960年代以降の陸軍における擬装網・迷彩カバーの使用率は大体1~3割くらいなイメージです。したがってコスプレ的には有っても無くても大丈夫です
(写真: 第81空挺コマンド群第4強襲中隊 / 1972年アンロクの戦い?)




写真で解説 軍装Q&A
ただし兵を統率する立場の士官・上級下士官たちは軍服の見栄えが求められるため、規定通りカバーと階級章を着けている事が多いです。
(写真: 部隊不明 / 1969年)









写真で解説 軍装Q&A
また一般兵も式典・パレード時には見栄えを良くするために部隊全員で擬装網・迷彩カバーを付けています。
(写真: 第1歩兵師団強襲中隊"黒豹" / 1966年 トゥアティエン省フエ)



写真で解説 軍装Q&A
(写真: 各歩兵師団合同 / 1971年6月19日国軍の日パレード サイゴン ※動画あり)







『個人装備はM56装備と、旧式(朝鮮戦争期のもの)どちらを使うべき?』

写真で解説 軍装Q&A第一次インドシナ戦争以来フランス軍式だったベトナム共和国軍歩兵の個人装備は、1960年より本格化したアメリカによる軍事援助によって急速に米軍式に切り替わっていきました。
この時アメリカは旧式と新型(M56)を同時に供与しており、ベトナム共和国軍側も特に新旧を区別することなく、届いた順に使っていったようです。
なので、例えばM56サスペンダーにM1ライフル用のM23カートリッジベルトを下げたり、逆にM45サスペンダーにM56ベルト・ポーチを付けたりと、米軍には無い独特な組み合わせも見られました。
なので1960年代前半から中盤にかけては、旧式でもM56でも、またそれらを混ぜてしまっても大丈夫です。
(写真: 第44レンジャー大隊 / 1965年?)




写真で解説 軍装Q&A
やがて60年代末になるとM56装備が主流となり、旧式は徐々に姿を消していきました。
ただし、M56装備を構成する部品の中で、フィールドパックおよびトレンチングツールカバーだけは何故かほとんど支給されていません。
なのでM56装備を使う場合は、この二つを装着しないよう注意が必要です。
(写真: 第18歩兵師団 / 1969年9月 フクトイ省ホースシューヒル)



写真で解説 軍装Q&A
さらに70年代に入るとM67装備の支給も始まり、M56装備と共に使用されていきます。
(写真: 空挺師団 / 1975年4月 サイゴン)












『M16は初期モデル(フォアードアシスト無し)を使った方がいい?』

※各モデルについては過去記事『Gen1~Gen3期のM16ライフル』参照

写真で解説 軍装Q&A
フォアードアシストの無いアメリカ空軍採用型のM16ライフルは、確かに軍事援助としてベトナム共和国軍へ供与されました。
その数は『コルトAR-15 (Colt Model 601)』が965丁、
(写真: 空挺旅団 / 1963年11月2日軍事クーデター サイゴン)



写真で解説 軍装Q&A
『M16 (Colt Model 604)』が6,145丁とされています。
(写真: LLDB / DSCD A-244 MGF / 1969年コントゥム省ベンヘット)








写真で解説 軍装Q&A
一方、アメリカ陸軍と同じフォアードアシスト付きのモデル(Colt Model 603)は、『XM16E1』と『M16A1』合わせて943,989丁が供与されたので、その差は歴然です。
非フォアードアシストモデルの割合は全体の1%未満であり、かなりレアケースでした。したがってフォアードアシストのあるXM16E1またはM16A1を選択するのが妥当だと思います。
(写真: 部隊不明 / 1968年テト攻勢 サイゴン)




『つまりどういう事?』

大体こんな感じ

写真で解説 軍装Q&A
1950年代前半~1960年代初頭

写真で解説 軍装Q&A
1960年代前半~中盤

写真で解説 軍装Q&A
1960年代末~1975年

空挺・レンジャー・海兵などのエリート部隊も服が迷彩になるだけで、個人装備は大して変わらないです。(特殊部隊を除く)


【あとがき】

パソコンのベトナム画像フォルダに保存してある15,000枚以上の画像の中から、説明するのにちょうど良い写りの写真を探すのは意外と大変でした(;´Д`)
さらに軍装を体系的に理解するには、その写真が撮られた年代を知ることが重要なので、一枚一枚調べるのにすごい時間かかりました。
こういう初歩的なネタは自作の軍装ガイドを書くときの為に取っておこうと思ってましたが、やっぱイラストより写真で見てもらった方が確実だよなと思い直し、今回まとめてみた次第です。
気が向いたら第二弾もあるかも?





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